地方公営企業の目的は、公共の福祉増進に寄与すること

2000年10月18日 

辻ひで子議員が公営決算の反対討論

  私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、1999年度大阪市交通水道両事業会計決算の認定に、反対の討論を行います。
 交通・水道など地方公営企業の目的は、公共の福祉の増進に寄与することにあります。ところが、両事業は、経済性、効率性を追求するあまりこの本来の目的、役割があまりにも軽く扱われています。到底、本決算は認めることはできません。以下、具体的に指摘を致します。

 1476億円もの剰余金があるのに、安全性・市民サービスを怠る交通局

  まず交通事業ですが、第1に、高速鉄道事業は99年度、営業利益は136億円もあります。99年度末で累積赤字が2552億円に達したと言われますが、資本剰余金は4029億円も積み立てられているのです。差引いたしますと、1476億円もの剰余金があるということになります。それにもかかわらず、交通局は、市民が聞くと、今にもつぶれるのではないかと思われるような宣伝をして、肝心の運行の安全性をおろそかにし、かつ、必要なサービスの改善を怠っているのです。
 あの大きな人身事故を起こしたニュートラムについては、市民の反対をおしきって、とうとう無人化を強行しました。

         バリアフリーも、改善すべき問題は山積

  バリアフリーについても、改善すべき問題は山ほど残っています。5月の国会で交通バリアフリー法が制定されました。市営交通のバリアフリーの現状は、「ええまち計画」で、エレベーター、エスカレーターの設置状況など他都市とくらべて、進んでいるものはあるとは言うものの、地上からホームまでの間には、依然としてさまざまなバリアが残っています。
 我が党の委員は、障害者のみなさんとともに歩いて点検し作成した「障害者、高齢者が一人で出歩け、子どもを育てやすい、街づくりのための市営交通チェックポイント」を示して、「エレベーターやトイレの位置を知らせる音声案内がないこと」、「視覚障害者のホームからの、転落事故防止のための、車両間ホロや、ホームドアの設置」、「聴覚障害者への緊急時の車内電光案内板」などきめ細かく改善を求めました。
 今後、完全なバリアフリーを実現するためには、計画の策定に当たって、高齢者や障害者など、移動制約者自身が加わった、協議会の設置が必要ですが、交通局はこの点での見解表明をさけたのです。

   朝汐橋駅7号出入口エレベ−タ−設置の願いも先送り、冷たい態度

  私がとりあげた下鉄朝汐橋駅7号出入り口エレベ−タ−設置の問題は、朝潮橋の近くにある重度障害児施設「あさしお園・ゆうなぎ園」の保護者をはじめとする地域住民が、施設の側にエレベーターを設置してほしいと、13年間も交渉してきた問題です。 地下鉄が主たる移動手段となっている肢体障害児の通園施設は、市内に4ケ所ありますが、現在エレベーター建設中の、谷町4丁目を含めると、朝潮橋だけが、福祉施設側にエレベ−タ−もエスカレ−タ−もないことになります。朝潮橋駅の階段は70段です。子供を抱きバギーと着替えの荷物を持って、毎日通園しなければならない保護者の苦労に報いるべきではないかと、設置を求めたのに対し、交通局は「反対側にワンルートがある。全駅ワンルート確保が先だ」と、またまた先送りし、冷たい態度をとったのです。

        市民の足・公営交通を守る基本姿勢の確立を

  第2は、バス事業規制緩和の下で、市民の足として貴重な役割を果たしている市バスを、公営交通として守り抜く問題です。
 今年の通常国会で、道路運送事業法の改正が行われ、大阪市域でも来年度からは、民営バスが黒字路線などに、営利を求めて自由に参入して来ることが、危惧されています。こんなときに、第一に求められるのは、法改正の下でも民間参入に反対し、公営交通を守るという基本姿勢を確立することです。
 公営交通事業改革調査委員会は昨年6月、規制緩和の下で市バスの再編方向を提案する「中間とりまとめ」を発表しました。
 我が党の委員は、この「中間とりまとめ」の中心をなしている市バス路線の再編問題について、「今の108の路線を、幹線系・地下鉄駅からのエダ線系・コミュニティ系の3つのタイプに分けて再編しようとしているが、これは現行バス車両922台を基本にしている。922台にしたままでコミュニティ系の新しいサービスを市民に提供しつつ、現行の幹線系統・エダ線系統の路線サービスも守り抜くというような、2つのことを同時にやることはできないのではないか、結局、市バス黒字路線を民営バスにとられ、市民にはますます不便な市バスになる危険性がある」と指摘いたしました。
 そしてバス車輌を増やし、市営交通を今より充実してこそ、市バスと市民の足を守り抜くことができると、市長見解をもとめましたが、市長はこの点では明確な答弁を避けました。

     土地信託の無駄遣いやめて、小型巡回バスなど路線の充実へ

  また、「中間とりまとめ」は市バスの「管理委託」や「分社化」などの検討も求めていますが、これは交通局人員の大幅縮小や労働条件の切り下げ、何よりも安全運転を危うくするものです。これには我が党は反対です。
 また、「中間とりまとめ」の提案で、新たに、コミュニティ系のモデルとして市内5ヶ所で小型ノンステップバスの試行運転が実施されていますが、これは市民に歓迎されています。
 我が党の委員は、お年寄りや子育て世代など、小型バスを利用した市民の、「このバスサービスを1年限りと言わずぜひ続けてほしい」という声を紹介しました。
 そして、これを全ての区で実施するためには、車両購入にあと14億円、運行補助に新たに年間6億7200万円しかかからないことを明らかにし、市内全域での実施を求めました。
 磯村市長は「必要な助成は全般的な見直しとともに、ぜひ検討して参りたい」と答弁しましたが、土地信託での無駄遣いを直ちにやめて、小型巡回バスなどの市バス路線を充実させ、市民の足をしっかり守るべきです。

  地下鉄駅「市民にはゴミ分別収集を」見えないところではごちゃまぜに

  第3は、私が取り上げた、地下鉄駅のゴミ分別収集の問題で、交通局は、地下鉄119駅のうち、21駅に224台の分別ゴミ箱を2240万円かけて設置しました。これは市民にゴミを分別して出すことを求めたものです。ところが、決算質疑の中で、交通局から委託を受けた、交通局振興公社は、業者にゴミ処理業務を「丸投げ発注」したうえ、分別処理の条件もつけていないことが明らかになりました。   
 わが党議員団の調査では、新聞、雑誌は業者の都合で分別されているものの、空き缶、ビン、ポリは全く分別されず、環境事業局の工場で一括焼却されているとこが明らかになりました。
 これは、市民にはゴミ分別収集を呼びかけながら、市民の見えないところでは面倒だからと言わんばかりに再びごちゃまぜにして、ゴミ処理をする、市民をあざむく、あまりにも恥ずかしい交通局の姿勢と言わなければなりません。
 磯村市長は「システムとして完成するよう検討する」と答弁されましたが、一日も早い、分別処理ルートの確立を厳しく求めておきます。

   土地信託(フェスティバルゲート・オスカードリーム)事業は交通局財政に重大な損害

  第4は、交通局における霞町フェスティバゲート、住之江オスカードリーム、2つの土地信託の問題で、両信託事業は、交通局用地を信託銀行に提供してその「民間活力」と称して、交通事業経営の安定を期すことを目標にしたものです。
 しかし、住之江は開業丸5年が経った今でも毎年7億円近い借金を増やし続けています。その長期借入金は250億円に膨れ上がっています。

 さらにひどいのが霞町です。
 フェスティバルゲート全体の賃料収入は98年度の13億5600万円から99年度には6億4900万円と半分以下となり、肝心のアミュズメント施設、いわゆる、集客娯楽施設の賃料収入は、7億7500万円から2億4600万円に98年度の三分の一以下に落ち込んでいるのです。
 その結果、開業2年目に25億円、3年目の今回の決算では32億円の収支欠損を出しました。借金は、2年目は26億円、3年目は40億円と増えつづけ、99年度末借金残高は278億円にも膨らんでいるのです。
 この2つの土地信託をこのまま続けるならば、更に大きな負債を抱え込み、交通局財政に重大な損害を与えることになるのは、今や明らかです。
 我が党の委員が、2つの土地信託契約は、「交通事業経営の安定に資する」という事業目標の達成が不可能になった場合には、協議のうえ「契約の解除」「信託の終了」ができることになっていること、さらに土地信託終了の際には、大阪市が一方的に負債を抱え込まなくてもよい、「借入金債務は、協議のうえ処理する」という契約になっていることを、信託契約の条文にもとづいて明らかにし、直ちに信託終了に踏み切り、交通局財政への損害を、最小限に食い止めるべきだと提案したのに、磯村市長はこれを拒否したのです。

       巨大開発失敗のつけを、水道局に押し付るWTC移転

  次は水道事業です。
 第1は、水道局のWTCへの移転問題です。これは、大阪市のWTCでの、巨大開発の失敗のつけを、公営企業である水道事業にも押し付けようとするものです。 
 今回の決算委員会では、それを糊塗するために、数字をごまかそうとする大阪市の体質が明らかになりました。
 WTCビルは、国際交易拠点としてはもうとっくに破綻したテナントビルで、しかも、321億円の公費を投入する計画の下でさえ、今や累積赤字は270億円に達しています。
 99年度に100%にする予定のオフィス入居率は59%にまで下落しました。再建計画は完全に行き詰まっています。
 今回の水道局、下水道局、建設局、3局のWTCへの移転計画は、この経営の失敗を大阪市と関連団体の賃料、すなわち公金で補おうとするものです。
 この失敗の責任の所在を市民の前に明らかにすべきであり、ビル経営の失敗を水道局に押し付けるなどということは言語道断です。
 水道局は言うまでもなく利用者市民の負担で、経営されている公営企業です。地方公営企業法によって「公共の福祉を増進する」とともに「企業として、経済性の発揮」も厳しく求められています。
 この公営企業会計で大阪市の失政の赤字穴埋めをすることは、断じて許せるものではありません。
 また移転計画発表後10ヶ月もかけてやっと出した「現地建替えとWTC移転との経費比較」では、現、扇町庁舎の跡地活用での収益見込みが計上されていますが、実現の保証はまったくありません。
 職員の通勤費が年間7千万円も増えるのに、これが計上されていない。移転した場合の家賃についても毎月約3800万円というベラボウなものですが、家賃値上げが一切考慮されていないのです。
 WTCの経営改善計画では2001年度から2年毎に6%の家賃値上げの計画になっており、この値上げが行われたら50年間の家賃総額は670億円にものぼります。
まったくの無駄遣いというほかありません。

       マンションの水道個別メーターは公費で取替えを

  第2は、マンションなど共同集合住宅の個別メーターの取り替問題です。
 現在、市内に16万戸ある分譲マンションや約8万戸の賃貸共同住宅では、水道親メーターが設置されていても、各、戸にも適格な水道メーターが設置されている場合には、各、戸別に、計量と水道料金の収納が、1987年4月から実施されています。
 ところが、同じように、各、戸別に取り付けられている電気やガスのメーターはそれぞれの事業者が負担して取り替えがおこなわれ、本市水道局にあっても木造一戸建てや長屋住宅で、各、戸にあるメーターの取替えは水道局が公費で行っています。
 それなのに、分譲・賃貸のマンション居住者にだけは、個人に負担させているのです。我が党の委員がマンションについても公費でもつべきだと求めたのに、水道局はこれを拒否しました。
 これは、さしたる根拠もなく差別的に取り扱っているものと言わなければなりません。大阪市と名古屋市をのぞく全ての政令指定都市では、水道メーターの取替えを公的責任で行っているのです。

      同和浴場への水道料金2分の1減免はただちに廃止を

 第3には、ただちに同和事業を終結して、一般地域との垣根をとりはらうべき時期にきているにもかかわらず、いつまでも、同和浴場の水道料金は、2分の1減免を続けている問題です。
 水道局は、地区住民の福祉の向上のために、浴場料金が一般の7割になっているので、水道料金も減免しているといっていますが、とんでもありません。
 地区住民には、60歳以上の人や身体障害者を対象に、無料入浴券が月15日分配布されています。
 浴場料金を下げる必要はまったくないのです。
 にもかかわらず、今なお低くしているのは、ただ、ただ、地区外からの利用者を引き込む算段に他なりません。そうして、近隣の公衆浴場の経営を圧迫し、そのあつれきが一向に解消されないのです。市民の理解が得られないのは当然ではありませんか。  

交通・水道局長らの天野元議長就任祝賀パーティ出席は「提言」に反する行為

  最後は、今回の決算委員会で、我が党の委員がとりあげた、交通局長や水道局長の天野元議長就任祝賀パーティ出席問題です。
 これは、入札妨害事件とともに、議員と建設業界、そして行政との癒着構造の現れとして、重大問題です。
 競争入札妨害事件と斡旋収賄容疑で起訴・再逮捕された天野議員の後援会が、7月27日に、市内のホテルで開催した議長就任祝賀パ−ティに100名にもおよぶ多数の局長・部長ら幹部が出席しました。
 我が党の委員が、これは11年前、公金詐取事件の際の「市政運営の刷新、適正化についての提言」の趣旨さえ踏みにじるものであり、市民に謝罪すべき、不適切な行為ではなかったのかと、質したのにたいして、比嘉交通局長は、「自宅に案内状が来たから、個人的に参加した」とか、「資金集めパ−ティは、法令で認められた集会であり、自費で参加した」などと、最後まで、まったく反省の色のない答弁に終始いたしました。
 これでは、公金詐取、飲み食い、宴会政治の反省はどうなったのかと言わなければなりません。公金詐取事件では、交通局も「地下鉄料金値上げ案審議中、市議2人、職員から接待を受ける」「クラブで一人3万円〜4万円の豪遊」。
 また水道局も「水道局幹部、北の高級クラブから白紙の請求書をとりよせ、それに勝手に人数と飲食代を記入して、架空の接待」などとマスコミ報道されました。
 こうした乱脈・不正に対して、「市政運営刷新委員会」の緊急提言では「議員が主催する祝賀会等各種会合に際して、理事者、外部団体から会費などの金品を授受しないこと」と明記されています。
 この提言に照らすなら、交通局長の行為と答弁は、自ら決めたことさえ時間が経てば反故にしようというものではありませんか。
 磯村市長は、「理事者の出席は非常に不自然であり、問題ある」との答弁をしましたが、「問題あり」だけですまされるものではありません。市長としての責任が問われる問題です。
 同様の事態が2度と起きることの無いよう、厳しく求めて、反対討論といたします。