就学前まで医療無料に
辻議員が条例案提案
自・公・民などが否決
(2001年12月18日)
 18日、大阪市議会本会議が開かれ、日本共産党の辻ひで子議員が、乳幼児医療費助成制度について、通院5歳まで無料となっている対象者を小学校就学前までに引き上げるとともに、所得制限を撤廃するとした「大阪市乳幼児医療費助成条例(案)」を提案しました。
 辻議員は、働く女性の割合がすべての年齢で6割以上になっているのが大阪市の特徴で、仕事も子育ても頑張るお母さんの願いが所得制限の撤廃だと主張。日本共産党に寄せられた「6歳になって、無料化がなくなり、医療費控除の対象なるのではと計算したら70,000円以上かかっていた」「子どもが3人で、ひとりが風邪をひくと、必ずみんなひく。6歳になったとたん切られるので同じ症状なら、薬を分け合って飲ませている」などの声を紹介し、しっかりと基礎体力をつけなければならない幼児期に、治療に二の足を踏むことでは、子どもたちの命と建港は守れないと強調しました。
 試算では、今回提案の実現に必要な金額は約9億5,000万円で、夢洲開発に使うとしている5,000億円から6,000億円の事業費から見れば微々たる経費で、実現は可能であると主張しました。
 辻議員は、就学前までの医療費無料化実現は全国で296自治体にのぼっており、いまこそ巨大開発をやめ、市民の健康、福祉の増進こそが自治体本来の仕事だと主張。自民、公明、民主などオール与党は、市民の切実な願いが詰まった条例案を否決しました。



 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表いたしまして、ただ今上程されました議員提出議案第31号、「大阪市乳幼児医療費助成条例」案について、提案理由とその内を説明いたします。
 2000年12月1日の市議会で日本共産党議員団は、乳幼児医療費助成制度の対象を、当時の通院4歳児までを小学校就学前までに年齢をひきあげるとともに、所得制限を撤廃する等の改善を行う条例提案を行いました。
 残念ながら、議会各派のご賛同を得ることはできませんでしたが、市民のみなさんの強い御要望のなかで、大阪市は今年度から通院医療費にかかる自己負担の助成を5歳児にまで引き上げ、所得制限も緩和いたしました。
 今回の内容は、現行の乳幼児医療費助成制度の内、通院5歳児までをさらに小学校就学前までにひきあげるとともに、所得制限を撤廃する等の改善を行うというものです。
 
小学校就学前までに引き上げ、所得制限を撤廃する

 提案理由の第一は、この乳幼児医療費無料制度の拡充は、深刻さを増す大阪市の子供たちの命と健康を守るうえで、不可欠だからであります。また、男女共同参画社会の実現に向う大阪市の基本姿勢が問われている問題でもあると思うからです。
 私は、大阪市の乳幼児医療助成制度が一歩、一歩と改善する度に、お母さん達と話をしてきました。中央区のお母さん達は就学前まで無料化は当然、それ以上に拡大して欲しい。それと同時に、所得制限は外すべきとの意見がどなたからも出てきました。
 4つの小学校を1つに統合しなければならなかった地域にも、年々マンションが増え、子育て真っ最中のファミリー層が転入してこられ、小学校のクラスが、2クラスから3クラスとなり、あちこちの公園にも乳幼児の遊ぶ姿が戻ってきました。
 しかし、賃貸マンションの家賃が14万円、15万円は当たり前、当然共働きも多く、所得制限は越えてしまいます。分譲マンションに移り住んでも、将来払いつづけることが出来るのかどうかと、不安をかかえ、頭を痛めているというのが現実の姿です。
 「所得制限を外して欲しい。何とかなりませんか」と言う声の中で、あるお母さんは、「母子家庭です。以前は母子寮にいたこともあるが、今は頑張って収入も安定したが、今度は収入オーバーで児童扶養手当は打ち切られる。保育料は上がる。.医療無料制度は対象外と毎月10万以上負担が増えた。頑張って働けば働くほど苦しくなる。家賃は18万円。サービス残業は当たり前で、居住を移すことは出来ない。.仕事も、育児もと頑張ってきたが、所得制限以内で生活せよと言われているようで腹立たしい思いでいっぱいです.」と話されていました。またあるお母さんは「富田林の友人に、大阪市は所得制限がある」と言うと信じてもらえなかったと言っておられました。
 「大阪市における女性の就労に関する調査報告書」でも明らかなように、働く女性の割合が、30歳から34歳でわずかに低下するものの、年齢層が上がるにつれ就労の割合も上昇し、いまや全ての年齢で6割以上の女性が働いているのが本市の際だった特徴となっています。
 仕事も子育てもと頑張るお母さんの切なる願いが、所得制限の撤廃と言っても過言ではありません。母子家庭の場合は、なおさらその思いは切実なものがあるのは当然です。
 年齢の拡大では「6歳になって無料化がなくなり、医療費控除の対象になるのではないかと思い計算をしたら7何円以上かかっていた」、また3人の子どももつお母さんは、「一人が風邪を引くと必ずみんな引く。6歳になったとたん切られるので、同じ症状なら薬を分け合って飲ませている。少々の風邪ならポカリスエットを飲ませて寝かせている」と話しておられました。
 本来、しっかりと基礎体力をつけなければならない幼児期に、二の足を踏む。これでは、大阪の子どもの健康状態が全国平均を遥かに下回るのは当然ではないでしょうか。大阪市の年齢別死亡率指数は、全国平均を100として、5歳から9歳まで、女の子で106、男の子では127となっています。見過ごすことの出来ない問題です。
 この提案の実現に必要な金額は、私どもの試算では約9億5千万円です。当面必要性がないと市長自身も認めざるをえなかった夢洲開発に、これから使おうとする金額は5000億円から6000億円です。わが党は断じて認めることは出来ませんが、この額から見れば、本当に微々たる経費ではありませんか。
 
府下30自治体は所得制限なしで実施

 提案理由の第二は、全国的な状況は非常に前進しているからです。2000年4月の厚生労働省の調査では、通院について就学前まで実施している市区町村は296自治体、それ以上に拡大しているところも25にのぼります。また、所得制限については大阪府下ですでに44市町村中30の自治体は所得制限なしで実施しています。
 巨大開発より、住民の健康と福祉の増進こそが自治体本来の仕事ではないでしょうか。
 大都市大阪が所得制限なしに就学前まで乳幼児医療費無料化に踏み切ることは、全国的にも大きな影響を与えることは言うまでもありません。
 
制度の拡充は、各党間に一致点

 提案理由の第三は、乳幼児医療費助成制度の拡充は、各党間に一致点があり、自らの公約に忠実ならば、必ずやご賛同いただけると確信するからです。
 公明党は、2001年5月に「小児医療・母子医療・生殖医療に関する14の提案」を発表し、そのなかで、「乳幼児医療に対する保険給付を拡大し、地方自治体の取り組みとあわせ、6歳までの乳幼児医療費の無料化を進める」と公約しておられます。
 民主党も、乳幼児医療費無料制度を国に求める全国ネットワークがおこなっている「小学校就学前までの子どもを対象とした国の医療費無料制度創設を求める」運動に、衆議院21人、参院13人の議員が賛同しておられます。
 ぜひ、この条例案にご賛同いただき、ともに市民の願いに答えようではありませんか。以上、条例提案とさせていただきます。