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 職員「厚遇」/大阪市の今

2005年05月13日「しんぶん赤旗」掲載

 大阪市民の強い批判を浴びたカラ残業、ヤミ年金・退職金などに象徴される市職員「厚遇」問題。大阪市は、四月に入って市福利厚生制度等改革委員会が報告書を出し、関市長を本部長とする大阪市政改革本部を発足させました。四月二十七日には第一回の会合を開きました。「厚遇」問題はどこまできたか、市政「改革」は何をめざしているかをみました。

 (嶋田昇、生島貞治)

責任不問/自民・民主・公明特権に固執

 大阪市は今年度予算でヤミ退職金・年金など「厚遇」にかかわる支出分百六十六億円を削減しました。この問題で市当局とヤミ協定を結んでいた大阪市労働組合連合会(連合に属する大阪市職員労働組合などで構成、略称・市労連)もこの削減案のほとんどを受け入れました。

 大阪市は、ヤミ年金・退職金やカラ残業を調査する調査委員会の責任者に市民グループ「見張り番」代表世話人の辻公雄弁護士を起用。同委員会は調査報告を秋ごろまでにまとめる予定です。

市議へ「厚遇」

 しかし、「厚遇」問題にだれが責任を負うのかはまだあいまいなままです。日本共産党市議団は「厚遇」問題の背景に、市労連と歴代市長、自民、民主、公明の「オール与党」という三者の癒着があると指摘し、「責任の所在の明確化を求める決議」案を三月議会に提出しました。しかし、自民、民主、公明はこれを否決しました。

 税金の無駄遣いである「厚遇」は市職員にとどまりません。市議への特権的な「厚遇」や、同和問題には、手がついていません。日本共産党市議団は、議会に出席するとき市議に支払われる一日一万四千円(四月から一万円)の交通費(費用弁償)を廃止する条例案を提案しました。二〇〇二年以来四回目の提案です。

 これも「オール与党」が否決しました。

 大阪市議・元市議に支給される地下鉄・市バスの無料パスも議員「厚遇」として市民の批判を浴びています。日本共産党はすでに十年前から無料パスを返上。与党も「返上する」と言わざるをえなくなっています。

 

福祉攻撃/破たん事業なお税金

 四月にスタートした市政改革本部(本部長・関淳一市長)は四月二十七日の第一回会合で、十月までに改革の「基本戦略」を定めることを決めました。しかし、すでに同改革本部の発足にあたって、関市長は、大阪市都市経営諮問会議(市長の私的諮問機関、座長・本間正明大阪大学大学院教授)を解散させ、同会議の出した「関市長への提言」に沿った改革の推進などを本間座長と確認しました。

 同都市経営諮問会議は「厚遇」問題が発覚する前の昨年六月に設置されました。大型開発や市が出資する第三セクターへの巨額資金の投入などで、大阪市の借金は年間予算(四・四兆円)の一・三倍にあたる約五兆六千億円にまでふくれていました。諮問会議の設置はそうした危機から抜け出す「処方せん」を得るのが目的でした。

 座長に就任した本間氏は、小泉構造改革をすすめる政府の経済財政諮問会議(議長・小泉首相)の十一人の委員の一人。

大企業を優遇

 設置から半年後の昨年十二月二十日に出された「関市長への提言」は「産業政策が大阪市全体における最優先課題」と言いきっています。その内容は「重点産業分野への研究・開発支援の充実」、「企業誘致の支援制度の拡充」、「官から民へサービスの提供主体の転換」など。経済財政諮問会議の提言とよく似た大企業優遇が目立ちます。

 行政の福祉施策にたいしては「市民の自律意識を低下させ、さらなる都市・人の活力の喪失につながる悪循環をもたらした」と攻撃しています。

 「提言」を支持する自民、民主、公明が賛成して成立した今年度予算は、この「提言」に沿って編成されました。

 無駄遣いの大型公共事業の典型・関西空港二期工事への支出、破たんした第三セクター三社への税金投入など今日の財政危機をもたらした施策の継続はあいかわらず。他方で小児ぜんそく医療費助成を縮小し、生活保護世帯への見舞金は廃止しました。今年度継続が決まった敬老パスの廃止や、新婚家賃補助削減、ゴミ有料化を次の「ターゲット」にしています。

今年度予算で削減される職員「厚遇」

 4互助組合への公費支出廃止……………………47億6800万円

 ヤミ退職金・年金の廃止…………………………24億5700万円

 健保組合への公費負担割合縮減…………………30億 100万円

 団体生命共済事業への負担廃止……………………6億8100万円

 スーツの支給廃止……………………………………4億6900万円

 厚生会への助成金制度の廃止………………………4億8200万円

 教職員・学校職員厚生会への特別交付金廃止……5億1900万円

 交通・水道局の業務手当廃止………………………9億7000万円

 施設維持作業手当の廃止…………………………………5000万円

 主任手当の廃止………………………………………5億1000万円

 変則勤務者手当の廃止……………………………29億9500万円

 係長級の管理職手当の廃止………………………43億5100万円

 

無駄遣いを一掃しなければ

              日本共産党市議団幹事長下田敏人さん

 大阪市がすすめようとしている「市政改革」の方向を示した大阪市都市経営諮問会議の「提言」について日本共産党市議団の下田敏人幹事長に聞きました。

 職員「厚遇」への市民の大きな怒りの背景には、無駄を放置したままで、福祉施策など市民サービスの切り捨てをすすめる市民の不満があります。ところが、「提言」は、「福祉施策が市民の自律意識を低下させた」と福祉施策を攻撃する一方で、経営の失敗である第三セクターや大型開発の無駄にはいっさいメスを入れないという大企業優遇ぶりです。

 財政が厳しいなかで市民のための施策を削る。しかも、福祉に対して露骨にメスを入れることを宣言する。「官から民へ」とか「民間活力の活用」などといって行政がやらなくてはならないことを民間にさせる。保育所は、その最大のターゲットになっています。

 「厚遇」問題にかかわって大阪市の福利厚生制度改革委員会が四月に出した報告書では、外郭団体や関連企業の調査・見直しが必要とのべていますが、市民の批判の反映です。日本共産党は、引き続き天下りや同和問題、議員の特権にもメスを入れ、税金の無駄遣いを一掃していかなければならないと考えます。