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山中智子議員の国保条例改正提案

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表いたしまして、ただいま上程されました議員提出議案第20号、「大阪市国民健康保険条例の一部を改正する条例(案)」について、その内容と提案理由の説明をいたします。

 内容は、今年度、急激な国民健康保険料の負担増となった人たちの負担を軽減するために、満65歳以上、障害者・特別障害者、寡婦(夫)・特別寡婦の被保険者がおられる世帯の所得割額の算定に特例をもうけるというものです。

 次に提案理由です。私が今回、特に申し上げたいのは、これらの方々の負担増と苦しみを、手をこまねいているような真似は絶対にできないということです。たとえば、高齢者の皆さんです。その負担増のひどさを計算してみると、本市に暮らす、年金月額20万円の一人ぐらしのお年寄りの場合、所得税・住民税・国保料・介護保険料、この4つの合計が、2004年度は約93,000円だったものが、今年度は223,000 円と急激に膨れ上がっています。年金の1カ月分以上が、税金と社会保険料で消えてしまう。さらに負担増は雪だるま式に増え、再来年度はなんと352,000 円。これを“耐えがたい負担増”と言わないで、いったいなんと言うのでしょうか。連続する医療費負担の引き上げとも相まって、怒り・困惑・絶望が広がり、先々への不安が、いよいよ深刻になっていることはご承知の通りです。

 クーラーなどの電気代を節約するために、一日じゅう、スーパーの休憩所で過ごす方が増えました。「知り合いがたてつづけに3人も自殺した。年寄りをこんなにいじめて、ほんとにひどい時代だ」と肩を落とされた方がおられます。8倍に跳ね上がった住民税に驚いて区役所に行き、「議会で決まったことだ」と追い返された男性は、「医者代がかさんで、唯一の趣味だったカメラをやめた。もう何も切り詰められない」と文字通り怒りで震えておられました。難病と認知症の妻をずっといたわって暮らしてこられた男性が、この頃、ひどい虐待を加えるようになった。心配したご近所の人が、介護保険の利用をすすめても、利用料を心配して躊躇しておられる。「年金からの天引きで保険料だけとっておいて、いざとなったら使えないなんて、何のための介護保険だ。老々介護の果ての心中や殺人が、よそ事とは思えない」と近所の方は怒りながら泣いておられました。“受益者負担”“負担の公平”こんな言葉でおしすすめられたこの間のさまざまな制度の改悪が、この方たちの、穏やかで豊かであるべき晩年を奪い壊しているのです。

 重い糖尿病をわずらい、低血糖で頻繁に救急車で運ばれる体で、65歳まで勤めあげた女性は、月10万円の年金生活に入られました。国保料も介護保険料も重たい、月1回の通院の度、2万円かかる、暮らしのしんどさ、不安を切々と訴えられた後、「まさか年金ぐらしになって医療費が3割だなんて」と嘆かれ、それでも「こんな体でこの年まで生きられただけでも、感謝しないといけないのかもしれないですね」と自らに言い聞かせるように何度も何度もつぶやいておられました。こうした話は枚挙にいとまがありません。

この方たちは、戦後、まともな食べ物もない時代に育ち、遮二無二働き、子を育て、自分の楽しみを追うこと少なく、今は廃止されてしまった「老人医療費無料制度」など、先輩世代の社会保障を支えてこられた世代です。まじめに、一生懸命に頑張ってきたその先に待っていたものが、税金や社会保険料が重たくて、ほんの少しの余裕もない、切り詰めても切り詰めても、お金の心配に追われる日々だなんて、あまりにも切なすぎるではありませんか。行政の手によって、社会保障の名のもとに、こんなひどいことがやられていいはずはありません。

 同時に、高齢者の耐えがたい負担増は、一人高齢者を苦しめるだけではないと思うのです。こうした高齢者の姿を目の当たりにした50代の女性たちが、井戸端会議で、「病気になったり、介護がいるようになっても放っておいてほしい、と息子に言っている」「いま、うば捨て山が必要だ」と、医療制度・介護制度への不信を話し合っておられる場面に出くわしました。高齢者の苦悩やあきらめが、次の世代、そして、その次の世代にも伝わって、「明日は我が身」と悲観して、先々への希望や安心がもてない社会に、発展や、少子化の解決を望むことができるでしょうか。高齢者や障害者を、これでもかこれでもかと痛めつける政治をみて育つ子どもたちの心に、「弱い人を大切にしなさい」という教えが、

まっすぐに届くでしょうか。日本と大阪市の未来のためにも、こんな負担増、こんな弱い者いじめ、手をこまねいていてはいけない、重ねて申し上げたいのです。

 不必要な巨大開発の破綻と乱脈不公正な同和行政。このデタラメぶりが明らかになるにつけ、そんなムダ使いをしながら、市民に負担を押しつけてきたのか、という怒りは深まるばかりです。「反省するべきは反省し、市民の目線で市政を運営する」市長がこの間繰り返し口にしておられることです。市民の目線というのなら、あらゆる努力をつくして、高齢者など急激な負担増となった方たちの、せめて、国民健康保険料を緊急に軽減することは当然ではありませんか。議会として、その意志を示していただきたい。ぜひ、この条例を可決、成立させていただきますよう申し上げまして、説明といたします。