意見書の経過と結果

 日本共産党大阪市会議員団は、改選後の初議会に、「介護保険制度の充実と円滑な実施を求める意見書案」、「ユーゴスラビアへの空爆の即時停止を求める意見書案」、「国家公務員の調整手当の見直しに反対する意見書案」、「新ガイドラインの立法化に関する意見書案」を提出しましたが、「新ガイドライン」は、与党との調整に入る前に国会で強行成立されたため、内容上などから取り下げました。
 3つの意見書に対して、与党4派から対案が出され、調整の結果「介護保険制度に関する意見書案」、「コソボ紛争の早期解決を求める意見書案」については、共同提案として全会一致採択され、「国家公務員の調整手当の見直しに反対する意見書案」は調整がつかず取り下げました。

                      
                 
(日本共産党の原案)

介護保険制度の充実と円滑な実施を求める意見書(案)

  誰もが安心して公的介護を受けられる制度を確立し、深刻な家族介護の現状を解決することは、緊急の国民的課題となっている。
 ところが、来年4月から実施されようとしている介護保険制度は、その欠陥や不十分さが各方面から指摘されるなど、国民の切実な願いに応えるものとは程遠いものとなっている。
 よって、政府におかれては、介護保険制度の充実に向け、以下の事項の実現をはかられるよう強く要望する。
1、介護基盤整備に当たって、介護保険制度の導入により増加が見込まれることに見合った整備が図れるよう十分な財政措置を講ずること。
2、すべての被保険者が介護サービスから排除されることがないよう、低所得者に係わる保険料や利用料について、実態に応じて減免等の必要な措置を講ずること。また、その際の減免等に要する費用については国において措置すること。
3、要介護認定については、高齢者の生活実態を反映した認定基準となるように改善すること。
4、介護保険の実施によって、逆に現行の福祉水準が後退することがないように、支給限度額や介護報酬の設定に格段の配慮を行うとともに、自治体独自の保険外サービスに対しても国が財政援助を行うこと。
 以上、地方自治法第99条2項の規定により意見書を提出する。

                                                        

        
(共同提案で採択)

    介護保険制度に関する意見書    

我が国の人口の高齢化は急速に進行しており、介護や介助を必要とする高齢者がふえ続けているなかで、高齢者の介護や介助問題に対する国民の関心も非常に高まっている。 
 平成12年4月から導入される介護保険制度は、国民生活や地方行財政に極めて重大な影響を及ぼすことになり、現時点においても、多くの課題や問題点が指摘されている状況である。
 よって政府におかれては、広く国民の理解と協力を得られるよう、制度の導入については、国民健康保険制度の運営が困難な実態にあることを踏まえ、地方自治体や要介護者及び家族に過重な負担を生じさせることなく、国の責任において長期的に安定した運営が可能な制度として実施されるとともに、施設整備や人材確保などサービス基盤の早急な充実を図るための国庫捕助制度の拡充と事務システムの構築や事務に要する人員の確保に必要な財政措置を講じられるよう強く要望する。
 以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出する。

  

                        
                
 (日本共産党の原案)

ユーゴスラビアへの空爆の即時停止を求める意見書(案)

 北大西洋条約機構(NATO)がおこなっているユーゴスラビアへの空爆は、いっそう激しさをましている。
 空爆は、難民を急増させるとともに、民間の住宅や学校、病院、市場、通信施設、交通網、さらに古い歴史をもつ多くの貴重な文化財までが目標にされ、非戦闘員の一般民衆を犠牲にしている。また、中国大使館が爆撃され、20人以上の死傷者をだしている。 NATOは、コソボにおける人道上の惨禍をくいとめることを空爆の最大の理由にしてきたが、国連憲章にうたわれているように、このことをもって他国を攻撃することのできないことは言うまでもない。むしろ、一方的な軍事介入によっては、非人道的な事態をくいとめることができないばかりか、内戦を国際化させ、人道上の惨禍を拡大するだけであることがこの間の経過によって明らかになっている。
 いま緊急に求められているのは、軍事介入の即時停止と外交的手段による紛争の平和解決である。
 よって政府におかれては、NATOによる空爆を「理解する」という従来の立場を改め、空爆の即時停止と交渉による平和的な解決の実現に積極的な役割を果たされるよう、強く要望する。
 以上、地方自治法第99条2項の規定により意見書を提出する。

                            

        
                         (共同提案で採択)

コソボ紛争の早期解決を求める意見書
   

 世界の恒久平和は、人類共通の願いである。
 本市においては、平成7年に「国際社会の平和と発展に貢献することを誓う」旨の「平和都市宣言」を行い、市会においてもこれまで幾度となく同様の宣言や決議を行ってきたところである。
 しかしながら、現在、コソボ紛争はますます泥沼化しており、北大西洋条約機構(NATO)の空爆開始以降、ユーゴスラビア軍及びセルビア治安部隊による大規模かつ組織的な攻撃により、大量の難民が発生しており、一方では、NATO軍によってユーゴ各地で誤爆が相次ぎ空爆の続行に対して論議が生じており、紛争の早期解決が強く求められている。
 世界中で多発する紛争や対立を解決し、世界平和を実現していくためには、外交・政治・文化・経済領域の普段の活動を通じて実現していかなければならず、我が国は唯一の被爆国たる立場からも、世界平和に貢献する役割が着たいされているところである。
 よって政府におかれては、コソボ紛争の早期の政治的解決及び深刻な事態となっている難民問題の解決に向けて、国連な関係諸国に強力に働きかけるなど平和努力を積極的に行われるよう強く要望する。
 以上、地方自治法第99条第2項の規定により意見書を提出する。

 

                
        (合意に至らなかった日本共産党案) 

国家公務員の調整手当の見直しに反対する意見書(案)

 国家公務員の調整手当は、国家公務員の「一般職の職員の給与に関する法律」により「民間における賃金、物価及び生計費が特に高い地域」に勤務する職員に支給(同法11条の3)されているもので、本市においても、これに準じて10%が支給され、生活給として欠くことのできない手当てとなっている。
 しかるに人事院は、1998年の勧告で、支給地域及び支給区分等の見直しを打ち出している。
 現在の深刻な不況のもとで、国民の消費購買力を高めることが緊急に求められているにもかかわらず、国家公務員の調整手当の見直しをおこなうなら、公務労働者の生活を悪化させるだけでなく、不況の克服にもさまたげとなる。
 また、地方自治体の「基準財政需要額」の算定にあたっては、調整手当の支給率を基準に一定の加算補正がおこなわれており、調整手当が見直されれば、消防費・警察費・道路費・小学校費など多くの支給費目が減額され、地方交付税の削減となって、地方財政にも悪影響を及ぼしかねない。
 よって政府におかれては、国家公務員の調整手当の見直しをおこなわないよう、強く要望する。
 以上、地方自治法第99条2項の規定により意見書を提出する。

 

            
(国会で強行成立したため取り下げた日本共産党案)

 新ガイドラインの立法化に関する意見書(案)

 政府においては、「周辺事態措置法案」など、新たな日米防衛協力のためのガイドライン法案の制定にむけて、取り組んでいるところであるが、この法案では、地方公共団体の管理する空港、港湾等施設の利用及び人員、物資の輸送、給水、公立病院への患者受け入れなどの協力を求めることができると規定されている。
 こうした規定は、関係する地方公共団体の住民生活や地域経済活動に大きな影響を及ぼすとともに、地域住民の生命と安全に重大なかかわりをもつものである。
 従って、一方的に地方公共団体の役割が定められることには、地方自治の観点からも深い危惧の念を抱き、容認することはできない。
 よって政府におかれては、こうした地方公共団体の立場を十分理解され、拙速に制定することのないよう、強く要望する。
 以上、地方自治法第99条2項の規定により意見書を提出する。