IOCの評価委員会報告

絶望的な大阪五輪開催

これ以上の招致活動はムダ

(大阪民主新報 2001年5月27日)

 IOC(国際オリンピツク委員会)評価委員会が15日公表した2008年オリンピック立候補都市5市についての調査報告書で、事実上大阪市が立候補都市からはずされたもとで、大阪市がこれ以上招致活動にエネルギーと予算を使うのはムダ以外のなにものでもありません。
 磯村隆文市長は「辞めたら物笑いになる」などとあくまで招致活動を続ける姿勢を崩していませんが、大阪市が「運営能力示して招致に結び付ける」としている東アジア競技大会(19日開会)でも「会場に詰めかけた市民の間では大阪五輪への失望や冷めた声も多く」(「日経」20日付)、インターネツト「MSNスポーツ」のアンケートでも、「そりゃ辞退せなあかん
」49.8%、「ど根性で逆転招致や」19.4%となっています。招致活動を続けることこそ「物笑い」であり、悪あがきにしか見えません。
 報告書の報道で各紙はいっせいに「絶望的」と書きました。磯村市長は記者会見で「大阪はダメだダメだと書かれたら、IOC委員は報告書を読むまでもなく、大阪はダメなのかという人が出てくる」などと報道に“注文”をつけましたが、報告書を読めば「大阪はダメ」なことははっきりします。
 確かに報告書では「すばらし会場・施設とすでに証明済みの日本国内での国際スポーツ大会開催能力のコンビネーションはオリンピック開催の素地となる」と書いていますが、立候補都市のうち事実上パリ、北京、トロントに絞られたことは次のような表現からも明らかです。
 「評価委員会は、三都市をすばらしいと評価する。これらの三都市においては、わずか不足した部分があるというだけで、2008年までには効率的な大会運営組織により解決しうるものである」「パリ、トロント、北京については、大きな課題はないと考えている」「評価委員会はこの三都市は2008年にすばらしい大会を開催するすることができると確信している」。
 大阪市について報告書は 「交通渋滞が課題」[インフラと大会討画の規模が市の財政と関連して問題があるため、大会計画の履行をさらに困難にしている」と指摘しています。
 これについて磯村市長は、計画書に盛り込んだ総額280億ドルは関西空港2期工事などさまざまな事業を並べたもので市の負担はそのうちの12%、35億ドルで「市の負担になるほどの金額ではない」「誤解がある」などとのべ、反論書を出すとしています。
 しかし、関空などを並べたところに、招致を最大の口実に大阪湾ベイエリアでの巨大開発をすすめようとする大阪市の“本音”が出ており、「誤解」どころか評価委員会の判断はむしろ妥当なものです。
  実際、帝国データーバンクの「全国の第3セクターの借入金ランキング」で大阪市関係がベストテンのうち4つも入っており、その穴埋めや巨大開発などで2001年度見込みの市の借金は5兆2715億円、市民一人当たり202万円にもふくらんでいます。
 さらに、選手村予定の夢洲、80,000人収容のメインスタジアムなどを予定している舞洲を結ぶ地下鉄北港テクノポート線の建設工事をこの3月から始めていますが、事業費は1,870億円にものぼります。仮に招致できたとしてもわずか2週間、あとは無人の人工島に地下鉄を通すなどは無謀としかいいようがありません。
 招致活動が本格化した96年度から昨年度まで、合計41億5800万円のオリンピック予算を組み、今年度も6億3000万円を計上しています。
 日本共産党は招致について、「ベイエリアでの巨大開発をめざすものでおり、深刻な不況と市財政の悪化のもとでは、招致・立候補する条件はない」との態度を表明。今回の報告書を受けて、「ムダな支出をきっぱりとりやめるとともに、北港テクノポート線をはじめ、招致を最大の口実に推進してきた巨大開発も抜本的に見直すべきだ」と主張しています。
 他の党は市の態度を後押ししており、その責任はまぬがれません。
 東アジア競技会開会式直後の選手の記者会見で英語以外の通訳をつけず、外国人選手に質問が伝わらなかったなど「同大会を2008年夏季五輪招致の逆転材料にしたい大阪市だが、初日から運営能力を問われるトラブルが続出した」(「産経」20日付)といいます。
 「物笑い」とはこういうことをいうのではないでしょうか。