汚染された正連寺川(上)  PCB・ダイオキシン 

(しんぶん赤旗 2001年2月14日)

市街地にPCBヘドロ8万トン

住民の安全最優先で対策を

 大阪市此花区の正連寺川に大量のPCBが企業によって不法投棄されています。人家密集地の川にこれだけの大量のヘドロが投棄された例は全国になく、しかもそのなかからは、猛毒のダイオキシンが検出されています。この正蓮寺川に高速道路の工事計画がすすめられていますが、住民からは、「工事計画を撤回し、住民の安全を最優先にせよ」の声があがっています。(いのちと環境ネットワーク・代表世話人 長野 晃)

 阪神高速道路公団が高速道路淀川左岸線一期工事をすすめるなか、大阪市此花区正蓮寺川の左岸側を埋め立てる事前調査で、99年10月、PCBによる汚染ヘドロが判明しました。
 その後、正蓮寺川の管理責任者である大阪府土木部河川課が詳細調査を行い、昨年8月になってはじめて事実を発表しました。

基準の100倍近い濃度

 PCBの底質の暫定除去基準(底質の乾燥重量あたり10ppm=底質乾燥土1kgあたり10r以上)を超える汚染ヘドロは、恩貴島橋下流付近から北港大橋上流付近まで長さ750m、幅50m、厚さ数mの層をつくり、その上に汚染されていないヘドロ層数mがあります。その量は7〜8万立方メートル、重さ約8万トンにも達する膨大な量です。一番濃度の高い地点のPCBは960r/kgで、基準の100倍近い汚染です。
 こんな危険なものがこれほど大量に、市街地の人家密集地に近接した河川に投棄されていた例はわが国にはないと言われています。30年近く前、処分に困った企業(不明)が不法投棄したものとみられています。この汚染ヘドロを住民の安全と環境汚染防止をおこなうため、どうするのか、大問題です。
 ここで強調しなければならないのは、PCBは猛毒ですが、そのPCHの中には、かならずコプラナーPCBが一定量(政府発表で10〜15%)含まれていることです。ダイオキシン類対策特別措置法(昨年1月15日施行)は、コプラナーPCBをダイオキシン類として認めました。したがってPCB汚染は、実はダイオキシン汚染です。

道路建設が従来どおりに

 ところが、正蓮寺川の管理責任がある府も、道路建設中の阪神高速も、道路建設後、その上に公園計画がある大阪市も、ダイオキシン汚染対策という位置づけなしに従来方針どおり計画をすすめようとしています。
 99年10月の調査でPCB汚染370ppmが判明した個所のダイオキシン濃度は土1gにつき21,000ピコグラム(ピコグラムは、1兆分の1g)で、ダイオキシンの土壌基準1,000ピコグラムの21倍にもなる高汚染です。その後、府は三次にわたる調査を実施。PCBの最高濃度が960r/kg(暫定基準の約100倍)であると発表、PCB調査を一定おこなっています。ところが、ダイオキシン類の調査は、4度にわたる調査の最初の時だけです。その後、なぜダイオキシン類を調査していないのか、あるいは、調査したが問題になると困るので調査結果を公表しないのか。いずれにせよ、住民の安全第一に考えるなら、この問題を、ダイオキシン類汚染問題として位置づけ、今からでも徹底したダイオキシン調査をおこない、その上でもっとも安全な対策を慎重に検討すべきです。 

      (つづく)