日本共産党石井郁子議員の

  学童保育関係の国会質問会議録より

第145回国会衆議院予算委員会第4分科会(厚生省及び労働省所管)1999年2月17日

(前文省略)

○石井(郁)分科員 (前文省略)
 さて、そこで、大阪市の学童保育についてきょうはお尋ねするのですが、私は大阪市に住んでおりまして、近くでいろいろな実態を見たり要望を聞いたりしているものですから、これはぜひ伺っておきたいと思うわけであります。
 まず、厚生省が、保育を中心にした児童福祉関連事業に対して全国市町村の実態調査というものを行っているというふうに思うのです。昼間保護者のいない家庭の小学校低学年児童などの育成指導を行う組織としての児童クラブ、この児童クラブというのは大阪市には何カ所あるというふうに把握されているのでしょうか。その場合、公設、民営という詳細がわかっているかどうか、お尋ねしたいと思います。
○横田政府委員 平成九年十月一日で統計情報部による全国的な調査がございますが、これによりますと、大阪市における児童クラブの数は四百七十三カ所、登録児童数はおよそ三万八千人ということになっております。このうち、補助金の基準に合致しているということで補助をしているクラブの数が百十六クラブということで、全国レベルで見ると割合が少ないような印象を受けております。
 これは、大阪市の実態を伺ってみますと、市独自に放課後事業ということで行っている部分がかなりございます。これは大阪市の教育委員会が主体だと思いますけれども、小学校の余裕教室を使いまして、事業実施区域内の小学生すべてを対象として、二百六十二校で行われているものがございます。
 それから、子どもの家事業ということで、社会福祉法人等で行っているような事業がございまして、これは地域のすべての児童ということで、私どもの基準と違うわけでありますが、六十三カ所。
 それから、いわゆる留守家庭児童対策事業ということで、これは父母会等の任意団体が行うものということで民間の借家等で行われておりますが、これは対象が小学校一年から三年に在籍する児童ということで、百四十九カ所。
 ちょっと一カ所ほど、実態の違いがございまして、合わないのですけれども、そういった状況でございまして、このうちの国庫補助の対象になっている部分は、いわゆる私どもが主眼としております小学校一年から三年生程度の児童を対象にした留守家庭児童対策事業と子どもの家事業ということで、こういった対象が大部分を占めているような事業が対象になっているというような状況でございます。
○石井(郁)分科員 厚生省が発表されております資料では、この児童クラブの状況というのがございますね。それですと、御答弁のように、大阪市は四百七十三カ所、三万八千三百四十三人。だから、この公になっている資料を見る限りでは、これは断トツに大阪市の登録児童数というのは多いわけでしょう。だけれども、今お話しのように、実態がどうもいろいろあるようだということなんですよね。
 私は、やはり表向き出す数字も、本当に実態を反映した数字でないとおかしいと思うのですよ。だから、どうしてそういうことになるかという問題が一つ残るわけであります。
 今、大阪市のそういう実態について御答弁いただいたのですけれども、大阪市には公立の学童保育所というのはないわけですよ。父母の皆さんが自主的につくっていらっしゃるということで、行政に学童保育の制度化を求める運動をしながらやってきた、それが共同保育所ということで、もう三十二年たっているわけですね。そういう共同保育所という学童保育所が大阪市には百三十八ある。共同保育を含めて民間の学童クラブが百四十九カ所ですよね。その児童数というのは三千人近くいるわけであります。
 先ほど来のお話のように、こういう共同保育所の運営というのは大変な御苦労があるのは、いろいろ国会でも議論されてきたことだと思うのですが、例えば民家を探さなければいけません。それから、大阪市は高い家賃があります。六畳、四畳半など狭い部屋で三十数人なんというところがあるのです。とても考えられない実態。しかも、父母負担は大きいですね。大体月一万五千円から一万八千円ぐらいだというふうにも伺っているし、古くなった民家の雨漏りなどの改修という点でも、父母が負担をしなければいけないということがあります。だから、同じ法のもとでも、こういう運営と実態と、随分差があるわけでしょう。
 それから、子供たち自身も、こういう民家を借りての共同保育ですと、やはり隣に遠慮しなければいけない、大きな声も出せないとかいうことがあります。それから、遊びに行くのも遠い公園まで出かけていかなければいけないとか、子供たち自身が本当に活動を制約されるわけですね。
 そういうことで、父母の間からは、もっと公営公設の学童保育にしてほしい、そうしたら、いろいろな公営施設も使えるだとか、いろいろあるわけでしょう。そういうのは当然の要求だというふうに思うのですね。それで、大阪市のそういう点での条例を求める署名というのは、この春にも三十四万人を超えました。
 しかし、これからが問題なんですが、こういう立法化後も大阪市に変化が見られないということなんです。その際に、公立の学童保育を実施しない口実としているのが、今おっしゃったように、教育委員会がそういう事業をやっているということがあるわけです。その事業は、市単独で進めている、留守家庭児童も含めている、全児童を対象にした児童いきいき放課後事業をやっているということなんですよ。そういうことを理由にして、学童保育には極めて冷たい態度をとっているわけです。
 そこで、先ほどの数字というのは、ですから、こういう全児童を対象としてやっているいきいき事業、この数が含まれているわけですね。そうですね。これは実態はどうなのかというと、いろいろ、よくつかまなければいけないと思うのですよ。例えば、登録の人数ですから、来ない子もたくさんいる。その中に留守家庭の児童がどのくらいいるかということ自身もどうもつかまれていないようだという点でも、問題だと思うのですね。
 そこで、それに入る前にぜひはっきりさせていただきたいのは、放課後児童健全育成事業、この六条の二の六項の規定と、在校生とかあるいは地域の全児童を対象とした、その中には留守家庭の子供も入ると思いますけれども、そういう放課後対策が、厚生省、ございますね、児童福祉法で述べられているその放課後対策というのは、どういうふうに区別されるのか、ちょっと明らかにしてください。
○横田政府委員 現在、児童福祉法六条の二の第六項におきまして、放課後児童健全育成事業につきましては、昼間保護者が労働等により家庭にいない小学校に就学しているおおむね十歳未満の児童に対して、適切な遊び場及び生活の場を与えて、その健全育成を図るというふうにされております。
 私ども、これに従いまして予算補助も行っているわけでありますけれども、大阪府の教委が行っているものにつきましては、これは市の単独の事業で全小学生を対象にして行っておりまして、補助金の対象にもなっていないわけでありますけれども、これは、児童福祉法のどの条文に基づく事業ということではなしに、児童福祉法の児童の健全育成という精神にのっとって、市が単独事業として行っているものというふうに理解いたしております。
○石井(郁)分科員 私は、だから、児童福祉法四十条の児童館事業、全児童を対象とした事業、それから自治体単独で行われる全児童対象の事業に反対しているわけじゃありません。問題は、せっかく六条の二の六項ができました。その六条の二の事業の拡充ということに今挙げて取り組まなければいけない、必要もあるというときに、大阪市のようなことにとどまっていたのでは非常に消極的ではないのかということです。そういう点では、やはりその六条の二の事業をもっと積極的に市町村が進めていく必要があるのではないかというふうに思うわけであります。
 それから、もう一点重大なのは、これは大阪市の場合なんですが、余裕教室の転用というか、余裕教室の利用ということを認めないという点があるわけですよ。そこで、ちょっとお伺いしたいのは、やはり厚生省としても、学校の余裕教室の転用については、民間の学童クラブも利用の対象に含めているというふうに私ども理解しているのですが、いかがですか。ちょっと簡単に。
○横田政府委員 この放課後児童健全育成事業の場所といたしましては、児童館のほか、学校の余裕教室、それから敷地内の施設、保育所等あらゆる場所を含んでいるということでございまして、私ども、空き教室の利用等につきましても、手続の簡素化なりそれから積極活用につきまして、文部省とも連携して指導通知等を出しているところでございます。
○石井(郁)分科員 先ほども申し上げましたように、民間の施設を使っている場合にはいろいろなことが都市では起きているわけですよ。例えば、建物を立ち退かなければいけないという問題だとか、公団住宅の間借りの契約切れの問題だとか、周辺の事情だとか、いろいろなことが本当に起きているわけです。だから、緊急あるいはどうしても困難をきわめているところについては直ちに空き教室の利用なんか当然していいはずなわけでしょう。しかし、いきいき事業と重なるからできないというのが、設置者の答弁というか、考えなんですね。
 私は、到底それは理解できないわけで、国としてはリーフレットも出して学童クラブにもそういう転用を進めているという時期に、どうしてこういうことが残るのか。いかがでしょうか。
○横田政府委員 私ども、放課後に児童が、親御さんが戻られるまで安全に生活できる場ということでこの事業を考えておりまして、いろいろ基準は設けておりますけれども、これを、人数にいたしましても、それから中の対象年齢にいたしましても、かなり弾力的に運用させていただいております。
 そういう意味で、これはいきいき事業だから補助金対象の事業とは一緒にできないとかなんとかいう話は、ちょっと私の方で理解しにくいわけですけれども、地域レベルでよくお話をいただきまして、円滑な運用が行われるよう私どもも注意をしてまいりたいと考えております。
○石井(郁)分科員 ぜひ、これは本当に実態がどうなっているのかということをつかんでいただきたいなと思うのですよ。
 私も、幾つか見に参りました。御答弁のように、留守家庭の子供たちには特別に生活の場としての放課後の事業が必要だというのが立法の趣旨でしょう。ところが、行ってみたら、全児童が対象になっているから、小学一年生が、昼で学校が終わって夕方六時、七時までいることもあるでしょう、おやつ一つ出ないのですよ。全児童対象だからですよ。本当にこれが子供たちの生活の保障かなということがあるでしょう。だから、全児童対象の中に留守家庭児童も含めているからというのが言い分なんだけれども、そういう設置者の言い分で済ますわけにいかないわけですよ。これでは私は立法の趣旨が生かされないというふうに思うからです。
 そういう意味で、もう時間がありませんので最後に改めてお尋ねしますけれども、これは、私は今大阪市を挙げましたけれども、そこだけじゃないと思うのですね。やはり、この立法の趣旨が十分理解されていないという点でいろいろなことが起こっているのじゃないかというふうに考えられますので、この六条の二の六項の法制化の趣旨、それをもっと厚生省としてやはり徹底をする、あるいは全国の実態も把握する必要があるというふうに考えるのですけれども、ぜひその辺では前向きに御答弁いただければというふうに思うのですが。
○横田政府委員 放課後児童健全育成事業の利用の促進ということで、これは児童福祉法二十一条の十一、今回の改正におきまして、市町村においてのその促進努力の義務というのを一条設けております。
 市町村は、地域の実情に応じた放課後児童健全育成事業を行うとともに、当該市町村以外の放課後児童健全育成事業を行う者との連携も図ることによりまして、この事業の利用の促進に努めなければならないというふうなことでございますので、私ども、この趣旨の徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
○石井(郁)分科員 時間が参りました。
 どうもありがとうございました。ぜひよろしくお願いをいたします。
○萩野主査代理 これにて石井郁子君の質疑は終了いたしました。