雇用、福祉の施策を補正予算などで市に要望

(しんぶん赤旗 2000年10月13日)

 日本共産党大阪市会議員団は、10月12日、大阪市に対し「2000年度大阪市補正予算編成と当面の施策に関する要望書」を提出しました。これには、姫野浄団長はじめ14名の議員が参加し、大阪市側は磯村隆文市長、土崎敏夫助役らが応対しました。
 要望は、「地方自治体本来の役割を発揮し、市民の安全・健康・福祉を守る」「深刻な雇用問題など不況対策に全力をあげる」「巨大開発と『同和』優先を改める」「2008年五輪招致を断念する」「汚職や腐敗のない、公正な市政にするとともに、平和を守る施策を推進する」の5つの柱、73項目からなっています。
 あいさつした姫野議員は、きびしい経済情勢のもと市民のくらしに責任を負う大阪市の役割はいよいよ重大であり、国に対しては国民本位の施策への転換を求めるとともに、巨大開発を根本から見直し緊急・切実な市民の願いに応えることが重要だと強調しました。
 下田敏人政調会長が、「介護保険制度の改善で、大阪市独自の施策を推進することが重要で、保険料減免については申請書の改善をはかること、利用料の減免にも踏み切ること」など、要望の内容について説明しました。磯村市長は、「一致することもある」「具体的な話を聞かせていただけるのでありがたい」などとのべました。
           
                                     2000年10月12日
 大阪市長 磯村 隆文 殿

                                 日本共産党大阪市会議員団
                                      団長 姫野 浄

        緊急・切実な市民の願いに応える市政に
             2000年度補正予算編成と当面の施策に関する要望


 日本の経済は、景気は「回復」しつつあるとの政府見通しが出されて以来、既に1年以上が経過しているにもかかわらず、最悪の水準で推移している失業者数や相次ぐ企業倒産にみられるように、今なお厳しい状況にある。とても、自律的な回復軌道に乗ったなどといえるものではない。
 この9月11日発表された、4月〜6月のGDPの数字をみても、肝心の個人消費や設備投資は低迷したままで、前期比大幅増となった公共投資が全体の数字を押しあげたにすぎないものである。
 政府は、景気対策と称して、92年8月の宮沢内閣の総合経済対策以来、11回71兆円もの公共事業積み増しを行なってきた。しかしながら、こうしたゼネコン奉仕型の公共事業が、国・地方を通じての借金の山を築いただけで、景気の回復に役立たなかったことは、この間の経緯が示している。
 そして、そればかりか、大企業のリストラをあおり、家計をあたためるどころか、冷水を浴びせるような社会保障の切り捨て、負担増の押しつけを強行したのである。これでは景気がよくなる道理はない。
 今こそ、身勝手なリストラを規制する社会的なルールを確立すると共に、国民のくらしよりも大型公共事業を優先させるという、逆立ちした財政のあり方を根本から改めることが必要である。
 ところが、森内閣は、相変わらず大型公共事業の上積みにきゅうきゅうとし、その一方で、医療保険の大改悪や消費税の大増税を策すなど一層国民に負担増を押しつけようとしているのである。
 かかる状況の中で、市民のくらしに直接責任を負う大阪市の役割は、いよいよ重大なものがある。国に対しては、国民本位の施策への転換を求めると共に、自らは、オリンピックを利用した臨海部などの巨大開発を根本から見直し、市民の緊急切実な願いに応えることである。
 なかでも、4月にスタートした介護保険は、利用料が高いなどの理由で、必要な介護サービスを受けられない人が続出するなど、制度の根本にかかわるような矛盾が露呈している。早急な改善が求められているのである。
 以下、このような立場から2000年度補正予算ならびに当面する施策について、重点的に要望するものである。

T、地方自治体本来の役割を発揮し、市民の安全・健康・福祉を守る。
1、高齢者対策の強化で健やかな老後を保障する。
@ 介護保険の導入によって起こっている、さまざまな矛盾を解決するために、制度の 改善を国にもとめるとともに、大阪市の独自施策の推進をはかる。
1) 保険料減額については、申請書の改善をはかるとともに、対象者を広げ、実態に見合ったものにする。また、利用料の減免に踏み切る。
2) 特別養護老人ホームなどの待機者を掌握するとともに、基盤整備の拡充に責任をもつ。また、入所については申請順など、公正なルールをつくらせる。
3) ヘルパー派遣事業を民間まかせにせず、大阪市社会福祉協議会の常勤ヘルパーを主体にすすめるなど、公的責任を果たす。
4) 施設での日常用品リース代など、自己負担の実情を調査するとともに、施設に対して適切な指導をおこなう。
A 高齢者保健福祉計画にもとづく大阪市独自の福祉施策を充実させる。
1) 介護認定で「自立」とされた高齢者への施策を充実させる。
2) 宅老所・グループホーム・デイハウス・給食サービスなど、地域での高齢者支援事業への助成制度を創設・拡充する。
B 老人医療費助成制度及び老人医療費一部負担金助成制度の復活を大阪府に求め るとともに、大阪市独自にも実施し、国に対しては医療制度改悪の中止を求める。
C 市営交通「敬老パス」の交付を、65歳からに拡充する。

2、健康・医療を守る対策を抜本的に強化する。
@ 「大阪市ダイオキシン削減条例」を制定し、ダイオキシン類を減らす抜本対策をとる。
A 国民健康保険料遡及賦課期間の延長は撤回する。また、短期保険証、資格証明書の発行はおこなわない。
B 市民の命と健康に責任をもつ立場から、食品衛生を企業まかせにしない。衛生監視員を抜本的に増員するとともに、専門性を高める。

3、子育て期支援の強化と子どもが健全に育つ環境をつくる。
@ 学童保育への助成金を大幅に増やすとともに、公設・公営の学童保育に踏み出す。当面、余裕教室など市の施設利用を認めるなど、安全で衛生的な、遊びと生 活の場を留守家庭児童に保障する。
A 保育所待機児をなくすためにあらゆる手だてをとる。公立保育所の低年齢児枠 を拡大するとともに、認可保育所の新設・増設をはかる。
B 公立保育所での完全給食の本格実施を早急におこなう。

4、障害者の緊急、切実な要望にただちにこたえる。
@ 障害者のショートスティ事業を拡充する。特に緊急時に対応出来るよう単価方式でなく、専任の職員を配置する。
A 障害者共同作業所への運営助成金は、大幅に増額する。また、家賃補助制度の 新設や市有地提供など場所確保への援助を強める。

5、生活保護行政の改善を図る。
  失業者の増大や就職困難のもと、法に基づき、必要な市民に保護が行なわれるようにする。また、福祉関係職員の増員をはかるなど、体制を強化する。

6、抜本的な野宿者対策をすすめる。
@ 病弱、高齢などで就労できない人には、生活保護を適用し、医療、住居の保障をおこなう。
A 簡易宿泊所の福祉アパート化を支援する。
B 自立支援センターを増設する。
C 雇用対策として、府・市が協力して特別就労計画を作る。国に対して特別立法の制定と実効性のある特別就労対策事業などの実施を求める。
D 長居公園の「仮設一時避難所」計画については、地元の意見をよく聞き、住民合意ができるまで建設の強行はしない。

7、子どもたちがすこやかに成長できる教育をすすめる。
@ 教育現場に混乱をもちこむ「日の丸」「君が代」の押しつけをやめる。
A どの子にもゆきとどいた教育をすすめるため、少人数学級実現を国、府に強く働きかけるとともに、大阪市でも独自に実施する。
B 危険校舎の改修やトイレの改善をはかる。また、学校維持運営費の増額をはかる。
C 米飯給食の回数を週2回以上に増やすなど、学校給食を拡充する。
D 希望する市立幼稚園に入園できるよう、必要な教員や教室を増やして、幼稚園の35人以下学級を実施させる。
E 大阪市立泉尾第二、生野第二工業高等学校の「募集停止」を中止する。

8、公共事業は「生活密着型」優先にし、安心して住み続けられる街にする。
@ 市営住宅の改善や民間住宅・マンションへの援助を強める。
1) 高齢者、障害者向けケア付住宅の増設をはかる。
2) 中層市営住宅へのエレベーター設置を促進する。
3) 市営住宅の単身者向け募集は、2DK住宅も対象にするなど募集戸数を増やす。
4) 新婚家賃補助制度は、「結婚後6年間いつでも申し込めるようにする」「公社・公団住宅の賃貸住宅に適用範囲を拡大する」などの改善をする。
5) 民間分譲マンションの実態調査に基づく支援計画を策定し、高齢者向け「階段てすり」設置や大規模修繕への助成制度、プレイロットなど共用部分の固定資産税減免などを実施する。

A 住宅の震災対策を拡充する。
1) 木造住宅耐震改修に対する補助制度を創設する。
2) 耐震診断費補助制度によって、倒壊または大破壊の危険があると判定された木造住宅を改修する場合、工事費の一部を補助する。

B 一刻も早く浸水を解消するために、「1時間60ミリの雨」に耐えうる幹線網の整備など、抜本対策の進捗を早めるとともに、マンホールポンプや雨水一時貯溜槽の設置など、個別局地対策を推進する。

C 地下鉄駅など公共交通機関の安全対策を抜本的に強化する。障害者福祉施設が ある朝潮橋駅の本町側エレベーター・エスカレーター設置はただちにおこなう。

D 生活道路の補修や公園整備の促進をはかる。

E 依然として深刻な公害対策を抜本的に強化する。
1) 二酸化窒素の環境基準は「0.02PPM」とし、事業所毎の自動車排ガス総量規制の実施など自動車の総量規制に着手する。
2) 増え続ける小児ゼンソク患者に鑑み、大阪市の小児ゼンソク等医療費助成制度の年齢制限を撤廃するとともに、公害指定地域の再指定を国に求める。
3) 阪神高速道路の淀川左岸線第2期計画は撤回し、泉北線計画は中止する。

U、深刻な雇用問題など不況対策に全力をあげる。

1、消費税増税を許さないために、他の地方自治体にも呼びかけ、共同して国に対し働きかけを行なう。

2、大企業の身勝手なリストラを規制するよう国に求めるとともに、大阪市としても在阪企業への申入れを行なう。特に、市立高校卒業者の採用についても強く要望する。

3、大阪市としても、福祉、教育、防災などの分野を中心に雇用を拡大する。

4、銀行の「貸し渋り」をなくす等、中小企業の資金需要に応える。
@ 無担保無保証人融資の限度額を1,500万円まで引き上げる。
A 銀行の貸し渋りは、公的資金投入後も、依然として改善されていない。市として、市内金融機関に対し、貸し渋り、資金回収、追加担保の要求などの中小企業いじめをやめるよう強く申し入れる。特別融資制度については、再延長するよう国に申し入れる。

5、官公需の中小企業発注比率を60%以上に拡大する。

6、中小製造業者への支援を抜本的に強化する。
@ 技術開発の支援のための制度や助成金の単価と総枠の拡充を計る。
A 市内の製造業者がテクノフェアーなどへ出展する際に特別助成金を出すなど、市場の拡大のための取組みを支援する。

V、巨大開発と「同和」優先を改める。

1、巨大開発の根本からの見直しを行う。
@ WTCへの水道局などの移転を中止するとともに、三つのビルへの公的資金投入をとりやめる。
A USJ事業への本市の関与を根本から改め、特に、区画整理事業の保留地を抱え込むようなことは一切行わない。
B 関西国際空港の二期事業の見直しを国に求めるとともに、市費の支出は取りやめる。
C 夢洲などの無駄な大水深埠頭建設は中止し、その浚渫土砂の受入のための新人工島計画は根本から改める。
D 夢洲の4万5千人の街づくり計画を中止し、北港テクノポート線の着工は見合わせる。
E フェスティバルゲートやオスカードリームなどの土地信託事業は、契約変更を求めるなど問題解決をはかる。

2、「解同」言いなりの乱脈・不公正を一掃し同和行政の終結を行う。
@ 同和行政は終結し、一般行政にすみやかに移行するとともに、一般行政の中での同和の特別扱いはやめる。
A 市同促方式を廃止し、行政の主体性を確立する。
B 同和教育を終結する。「同和教育推進校」「同和教育研究指定校」の指定、副読  本「にんげん」の配布、市同教、市高同研への業務委託をやめる。
C 「同和保育所」は廃止し、一般保育所にする。
D 「部落解放同盟」など人権文化センター内にある特定団体の事務所は退去させる。地区内施設は市が責任をもって運営し、だれでも自由に使えるようにし、日曜、休日も開館する。

W、2008年大阪五輪開催計画は夢洲・舞洲の巨大開発計画のレールに乗せるものであり、その事業規模は、北港テクノポート線・トンネル道路など、関連基盤整備で5千数百億円、新たな競技施設建設で千数百億円、合わせて7千億円以上にのぼるものとなっている。戦後最悪の不況と財政危機のもとでこれらが強行されれば市民の福祉と暮らしが犠牲にされることは明白である。よって、2008年五輪招致を断念する。

X.汚職や腐敗のない、公正な市政にするとともに、平和を守る施策を推進する。
@ 政・官・業の癒着構造にメスを入れる。
1) 企業・団体献金の完全禁止や実効性のあるあっせん利得処罰法の制定を国に 求める。
2) 予定価格の事前公表を行うとともに、指名競争入札中心から制限付き一般競争入札に切り替えるなど、透明性・公平性・競争性を高める。 
3) 「市職員倫理遵法委員会」をつくり、不当なことが持ち込まれた場合の調査、公表などの機能を持たせるようにする。
4) 幹部職員の企業への天下りを規制する。

A 食料費・会議費・公債費などの公文書は全面公開する。なお、公文書公開条例は市民の知る権利の明記や議会情報の公開などを盛り込んだものに改正する。

B 「平和都市宣言」を実効あるものにするため、「非核証明書」の提出を義務づけ、大阪港の平和利用を促進する。

C 核兵器廃絶の市民運動を励まし、市自身も非核平和のためのキャンペーンを行う。被爆の実相の普及、反核・平和問題についての市民の取り組みを援助する。核実験全面禁止と核兵器廃絶の国際条約の締結に向けた取り組みを展開する。