巨大開発・同和事業優先の逆立ち市政を

   市民の願い実現する予算へ

2000年3月30日 瀬戸一正議員が予算原案反対の討論

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、介護保険修正提案と予算組み替え提案に賛成、予算原案に反対の討論を行います。
 申し上げるまでもなく、今なお、大変厳しい経済状況が続いている中で、市民の健康・安全・福祉を保持するという地方自治体本来の仕事をしっかりと果たすことが強く求められております。
 ところが、2000年度大阪市予算原案に表れているのは、相変わらず、巨大開発や同和事業には、巨費が投じられている一方で、市民の願いには冷たく背を向けるなど、全く逆立ちした姿なのであります。とうてい認めることはできません。
 以下、私は、3点にわたって具体的に指摘したいと思います。

     ベイエリアなどの大型開発には大盤ぶるまいの予算

 反対理由の第一は、ベイエリアなどの大型開発には大盤ぶるまいの予算になっている点であります。
 なかでも夢洲開発には湯水の如く予算が投じられようとしておりますが、事業としても、又、財政的にも、成算のもてないものであることがはっきりしてきました。1万5千戸もの住宅にしても、そんな投資がはたしてなされるかどうか、全く雲をつかむような話なのであります。オフィスビルにしても、今市内の一等地ですら1割以上の空室があるではありませんか。いったいどれだけの需要が見込めるのか、見通しを持つことはできません。
 同時に、肝心の財政が、どうにもならないではありませんか。5000億円とも6000億円とも言われる基盤整備の中心的役割を果たすべき埋立事業会計は、火の車である上に、学校、保育所、病院、各種文化施設など、上物の事まで考えれば、一般会計の現状からみても、無謀としか言いようがないものであります。委員会で佐々木助役は、「なんとしてもやらねばならない事業だ」と答弁いたしましたが、成算のもてないものを、しゃにむに推進する、まさに、開発至上主義そのものではありませんか。

    オリンピックのためと北港テクノポート線の着工予算が33億円

  又、この夢洲の開発が成功する見込がないのに、来るかどうかわからないオリンピックのためと称して、今回、北港テクノポート線の着工予算が33億円余りも計上されております。とうてい認めることはできません。当局は、夢洲の街づくりが成熟すると、1日、13万人の乗降客が見込めるとか、開業後30年で累積赤字を全部解消して、黒字になるなどとしていますが、そんな保証は全くありません。夢洲と同じ4万5千人の常住人口を想定した南港ポートタウンに引かれた、中量のニュートラムでさえ開業後20年を経過した現在でも、単年度すら黒字にならないのであります。ましてや、北港テクポート線は、地下鉄形式ではありませんか。とても、採算がとれるとは考えられないのであります。

     必要性もない新人工島の事業費1240億円は全額市の負担

  さらに、新人工島の護岸着工予算、16億円余りが予算原案に計上されております。これは1期工事で、ゴミの処分地以外に、110ヘクタールもの島をつくるのでありますが、この事業費1240億円は全額大阪市の単費でまかなわなくてはなりません。ところが、委員会審議を通じて事業そのものの必要性のないことが明らかになったのであります。
 現在、夢洲に向けての航路を水深13メートルから14メートルにする浚渫工事がやられ、この土砂は夢洲土地造成につかわれております。ところが、今後更に水深15メートルにするために、その処分地として新人工島の110ヘクタールが必要だというのであります。
 当局は、元々、夢洲に水深15メートルのコンテナ埠頭が3つ必要だとしてきました。ところが1つは、専用船主(ふなぬし)がなくて、工事のメドは全くありません。Cー10の公共コンテナ埠頭と、Cー11のエバーグリーン専用埠頭は、完成まであとわずかとなっております。しかし公共コンテナ埠頭の方は使われる見込みが全くなく、エバーグリーンによって必要な時だけ併用されることになるのであります。このため公共埠頭建設の250億円がほとんど無駄になるのであり、当局の見込みが全く過大であったことが明らかになったのであります。全くひどい話であります。
 さらに、エバーグリーンは今でも、13メートルバースに、6万9千トンもの大型船を楽に接岸している上に、今後は、14メートルの水深が確保される訳で、今後更に1メートル掘り下げる必要は全くないのであります。したがって、110ヘクタールの新人工島も、その必要性がなくなるのであります。

      震災対策プランを無視した水道局のWTCへの移転計画

  次に、WTCやATCへの支援がいかにひどいか、委員会審議を通じて、新たな事実も明らかになりました。
 その一つは、破綻したWTC支援のために、震災対策までねじ曲げようとしていることであります。水道局では、阪神淡路大震災の経験をもとに、「震災対策プラン21」をつくってきました。それは、扇町庁舎を震災対策本部とし、柴島浄水場を第2本部として、高度な通信設備を持ち、ひとたび大地震がおこれば、水道施設の破損状況や住民の被害を把握し、指令を発するとともに、他の自治体からの支援を受け入れるスペースを持って、有効な人的救援活動を即座におこなえるようにするというものでありました。 ところが、市長が突然押しつけた水道局移転計画では、対策本部は中心部から西にはなれた不便な地におかれ、しかも、人材を集めるスペースを持たないものにされるなど、「プラン21」の一番大切な部分が骨抜きにされるのであります。水道局職員が移転に反対するのは当然です。
 又、ATC支援についても、我が党委員の調査で、ITM棟では民間企業がフロアを借りている賃料が坪あたり1万2千円程度であり、本市の借り上げ賃料はその倍近いものであることが、判明したのであります。この本市の不当に高い賃料を見直すよう求めたにもかかわらず、理事者はこれを拒否したのであります。

        市民の願いには背を向けた予算原案

 反対理由の第2は、予算原案が市民の願いには背を向けているからであります。

      医療費一部負担金助成で11万人の高齢者を排除

  最初に、老人医療費助成の問題です。大阪市はこの4月から、新たに65歳になる方で、住民税非課税者以外の医療費助成をうち切ります。これに加えて、大阪府が財政再建プログラムの一環として、高齢者の医療費の一部負担金制度を大枠廃止しようとしております。これは高齢者にとって重大な影響を与えます。この廃止によって、一部負担金助成制度では、11万人のお年寄りが排除されるのであります。
 77歳の非課税世帯のある主婦は「夫は介護を必要としていますが、利用料が払えません。私がいつまでも元気でいなければなりませんが、私自身、脳の血管が詰まっていて、点滴を受けています。現在は医療費は無料ですから助かっていますが、お金がかかるようになれば、医者にいけなくなります」と語っています。年金受給者の半分以上が、月額4万円前後の国民年金で、高齢者の70%以上が住民税非課税です。このような方にも容赦なく高額の医療費の負担がかかってくるのであります。大阪市がやろうとしているのは、「自立支援」どころか、切り捨て、つきはなしと言わなければなりません。約100億円あれば大阪市独自にでも老人医療費助成と一部負担金制度は続けられるのに、市長はこれを拒否しているのであります。

    今受けている介護サービスさえ受けられなくなる高齢者も続出

  次はいよいよ実施される介護保険制度であります。提案されている介護保険条例と関連予算では、新たな介護保険料の負担に耐えられない市民や、利用料が負担できないために今受けている介護サービスさえ受けられなくなる高齢者が続出するなど、市民は多くの不安と不満をもっています。我が党は「介護保険制度」の必要性は認めつつも、これをさらに充実させる立場から、条例修正案を提出しています。この実現こそ市民の願いに沿うものであります。
 また、介護保険の導入を機に、ホームヘルパー350人の首切り、400人の配転、デイサービス事業からの撤退を市社会福祉協議会に強要している問題も許すことができません。市社協への補助金の中に21億円のヘルパー退職勧奨金が計上されており、これは市社協の人事権まで侵害して首切りをおしつけようとするものであります。市社協のヘルプ事業は、先駆的で市民の期待が高く、公けがやるからこそ高齢者から信頼されており、介護保険が始まればますます必要なのであり、首切りや事業の縮小など、到底市民の理解をえられるものではなく、撤回するべきであります。
 さらに、ケアマネージャー不足のために、ケアプランの作成が大幅に遅れていることも重大です。3月17日現在で、要介護の判定が、居宅2万2119人に対しケアプラン作成は1万7541人であります。ケアプランの作成が間に合わない場合、サービス費用をいったん全額支払う償還払いになってしまうのであり、わが党は、市の立替払い、あるいは無利子の貸付など、緊急の対策を求めるものであります。

      障害者福祉作業センターの運営助成は4年連続据置き

 障害者施策の問題では、関係者が大変苦労して運営している福祉作業センターは、この10年間で、身体障害者20カ所から86カ所に、知的障害者33カ所から84カ所に、精神障害者8カ所から37カ所に増加し、その役割はますます大きくなっています。ところが、運営助成額は2000年度予算案でも据置かれ、これで4年連続の据置になるのであります。また、関係者が強く求めている家賃補助についても、すでに9つの政令市が実施しているにもかかわらず、行なおうとしておりません。わが党委員の要求に、理事者は「運営助成の中に含まれている」と従来通りの答弁を繰り返したのであります。

 小中学校の老朽鉄筋校舎改築も、2年つづけて40億円前後も減小

  教育予算では、小中学校の老朽鉄筋校舎改築が、2年つづけて40億円前後も減らされて、以前の3分の2になり、この結果毎年の改築学校数が平均19校から12校に、教室数では217から125に改築ペースが大幅に落ちていて、これでは今の昭和20年代校舎改築にまだ4、5年もかかり、「天井の一部が落ちてくる」という苦情もでている30年代建築の校舎、154校はずいぶん先ということになるのであります。
 中学校給食の問題でも、市教委はいまだに「中学生ともなると嗜好が多様化する。家庭との絆を深めることが大事」などと、弁当持参の指導を基本としていますが、学校給食法では、地方公共団体に給食実施の努力義務を課しているのであり、「給食より弁当の方が良い」という市教委の見解は、学校給食法を頭から否定する、とんでもないものであります。わが党委員が「給食施設は国の補助金を考慮すれば、市費としては毎年25億円の5カ年計画で全中学校に整備できる。給食調理員の人件費は年間40億円程度」という試算を示して実施を求めたのに、市教委は実施しないとの従来通りの答弁を繰り返したのであります。

      予算審議の最中に市立定時制高校2校の募集停止を発表

  さらに、今回の予算審議の最中に、たった4校しかない工業系の市立定時制高校のうち、泉尾第二と生野第二高校は、来年の新入生募集を停止するという教育長の決定が発表されました。これは、昼働きながら、夜学ぶしかない生徒の教育権を奪うという点からも、また、最近の定時制高校が、不登校の克服や中途退学者の再入学の場としてかけがえのない役割を果たしている点からも、断じて許すことのできないものであります。

 中小企業経営情報システムのデーターベースは対象事業所のたった5%

 中小企業支援では、来年1月オープンの産業創造館で始めようとしている中小企業経営情報システムは、市内の製造・卸売り・サービスの分野、5千社分のデータベースをつくって受発注に利用してもらおうというものでありますが、その分野の事業所のわずか5%にすぎません。東京都大田区では6千あまりの全事業所訪問をして、従業員5人以上規模の中小製造企業の7割以上にあたる2100社のデータベースを作って、受発注に大いに役立っていることと比べればきわめて小さなものであります。
 わが党委員が、大阪市の工業研究所での精密測定機などの利用実態を示し、大田区の中小企業振興センターでは、中小企業ではとても持てない精密測定機などが気軽に利用できるようになっていることを明らかにして、「産業集積地など身近なところに大田区の振興センターのようなものを作り、大阪市の製造業の支援に力を入れるべきだ」と提案しましたが、これに何ら答えようとはしなかったのであります。

      大型店出店には「共存共栄を」と商店街を見殺しの態度

  次に、大店法や大規模小売店舗立地法にかかわる問題であります。
 今、大正区では、区内小売店舗面積の3分の1にも相当する大型店が出店しようとしており、これに区内全商店街があげて出店反対の声をあげ、市長にこれに対する意見書の提出を求めたのに対して、磯村市長は「最初から大型店舗が出てくることにただひたすら反対」するのでなく「共存共栄という方式を選びたい」「成り行きをじっと見守っていきたい」などと答弁しましたが、これは事実上商店街を見殺しにするものと言わなければなりません。この7月にも大店法は廃止され、大店立地法が施行されるのでありますが、大店立地法では大型店出店は原則自由となり、「地域の生活環境の保持」という事はうたわれているものの罰則がなく、大型店出店を押さえることはますます難しくなるのであり、だからこそ大型店出店にたいする大阪市の厳しい姿勢が求められるのであります。市長の姿勢転換こそが今最もっとも求められている、このことを厳しく指摘しておくものであります。

     日の丸・君が代の押し付けを異常に強める市教育委員会

  次に、国旗国歌の問題で大阪市が学校教育に「日の丸」掲揚、「君が代」斉唱の押しつけを一段と強めている点であります。今年の小中学校や市立高校での卒業式では国旗国歌の掲揚・斉唱の実施率が大きく引きあげられましたが、これは教職員の中で合意が広がったためではなく、教職員が80%、90%も反対したのに学校長が強行せざるをえないほど、市教委が執拗に実施を迫り、押し付けを異常に強めたからであります。こうして、学校では学校長の苦悩も強まり、教職員の思想信条も大きく踏みにじられているのであります。意見が分かれているものを押し付けること自身が教育にふさわしくないことは言うまでもありません。今日学校教育でもっとも求められているのは、いじめや学級崩壊といった深刻な教育困難に立ち向かうことであり、学校長もふくめて教職員が自由に意見を出しあって合意形成をはかることなのに、国旗国歌の押し付けはこの自由を奪っているのであります。小渕首相の「今回の法制化にあたり、義務づけを行うことは考えておらず、国民生活になんら影響や変化が生ずることにはならない」との言明を思い起こすべきであり、学校教育への押し付けを直ちにやめるべきであります。

        同和行政を人権の名で永続化の策動

  反対理由の第3は、同和行政を人権の名を冠してまでも永続化させようとしているからであります。
 今日、1969年の同和対策特別措置法制定以来、30年におよぶ同和対策事業によって、部落の生活環境や生活実態に見られた「同和と一般」の格差は基本的に解消するとともに、部落への誤った認識や偏見も大きく薄らいでおります。その結果として、同和事業を特別に行う根拠となってきた法律もすでに失効しているのであります。たとえ人権の名を冠しようとも、いかなる名目にせよ同和行政を継続させることは、特定地区を「同和地区」として永続させることになり、地域社会から分離・固定化させ、21世紀に差別を温存するものとなるのであります。
 今回の予算案にある実質300億円を超える同和関係予算は大幅に削除されなければなりません。

 解放会館は「解同」に私物化されたままで「人権」へ名称変更のみ

  さらに、市内に12館ある解放会館を「人権文化センター」へ名称を変更するとして条例改定案が出されておりますが、これにもわが党は反対です。
 解放会館を同和対策から人権施策の一般対策施設にして、利用形態をかえるとの説明でありますが、会館内の一部施設を貸室とするのみで、部落解放同盟に私物化されている実態は、なんら変わらないからであります。例えば、10館の施設内にある部落解放同盟の支部事務所が、無料での専用使用、光熱水費はもちろん電話代まで無償など、そっくりそのまま残るのであります。
 また、過大な職員体制もなんら見直しが行われません。職員数は12館で253名にものぼります。たとえば、西成解放会館では本館33名・津守分館11名の合計44名が配属されています。ちなみに大阪市内全域を対象とした女性いきいきセンターと比較してみますと、4館で62名、1館あたり13名しかおりません。
 結局、会館の名称は変えるが、運営実態はそのままなのに終結の方向に向かっているかのように装い、新たな策動を許すことになるのであります。

       同和行政の永続化と利権あさりを許す「人権条例」

  更に、「大阪市人権尊重の社会づくり条例案」でありますが、これは一般市民のなかから要望があってつくられることになったものではありません。経過は、去年7月「解同」大阪府連が、磯村市長、三助役、各局長を一同にそろえた交渉の場で要求し、市長が「年度内に提案する」と約束していたもので、「解同」の要求によるものであることは明白であります。この人権条例を要求している「解同」こそ、これまで市政のなかで数々の人権を侵害する事件を起こしてきた団体であり、人権を語る資格はありません。このことは1969年におきた矢田事件の高裁判決を見ても明らかであります。
 条例案に新たな付則がもりこまれて、修正されるとしても、条例本則に残された「市の責務」と「市民の責務」は、同和行政の永続化の根拠とされ、彼らの利権あさりのテコに利用されるだけでなく、市民の内心の自由を侵すことになる大きな危険があるのであり、我が党はこの条例制定そのものに反対ですし、条例修正案も到底認められません。 以上を申し上げまして、予算原案反対の討論といたします。