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「大阪都」構想の住民説明会

運営も中身も納得されず


 「大阪都」構想で大阪市を廃止し、五つの特別区に分割するための協定書についての市民向けの住民説明会が26日、全39回の日程を終えます。13日間で参加者はのべ3万人に及ぶとみられます。橋下徹市長は「僕の説明会だ」と税金を使って持論を展開しましたが、運営も中身も納得できるものではありませんでした。

 (藤原直)


 「まず市長の話が長い。肝心の市民の質疑応答は2時間のうちの10何分でしょ。短すぎますよ」(41歳女性)。説明会のあと、参加者からよく聞かれたのがこんな声です。最初の会場では「事務局説明30分、市長40分、質疑応答45分」という日程が説明されていましたが、いつの間にか、橋下氏が「僕の説明時間」を70分超に延ばしていたのです。

 しかも質疑でも、橋下氏は「反対派は今のまんまでもいいっていうような考え方」などと決めつけ、批判的な質問をする市民に対して「(無駄遣いの)失敗が将来絶対ないと確信している人」などとレッテルを貼ってきました。自分は延々と政治的な持論を語って聴衆を賛成に誘導したかと思えば、自らの回答に納得しない市民の再質問を「ここは反対の方が説得する場ではない」と打ち切らせたこともありました。要はご都合主義です。

 市長が説明会で発言する際には協定書の内容についての「分かりやすい説明」(大都市法)に徹し、公正・中立に行うよう求めた、市議会の付帯決議も踏みにじるものです。

 具体的な説明の中身についてはどうか。22日、住吉区民センターでの説明会終了後、市への質問用紙3枚を埋めた会社員の男性(54)=阿倍野区=は首をかしげます。

 「わからんことだらけ。大阪は府と市で二重行政が問題だと言うが、同じ政令市の横浜出身の人や名古屋の友人に聞いてもそんな話はない。新潟やら熊本が何のために政令市になってきたのか。なぜ大阪市だけは逆に権限や財源を府に渡さなければいけないのか」

 橋下氏は会場で「(府と市で)二重になることは無駄」と府立・市立の病院や大学、無駄なビルなどが一緒くたに挙げられたスライドを提示。

 一方では大学などについて「これは何も一つをなくしてしまうという意味ではない」「誤解がある」などと釈明しました。

 「どうなんですかね。なくさないと言うが住吉市民病院はなくすんですよね?」。前出の男性は語ります。

 「二重と言うが病院は多いほうがええんちゃうかなと思うし、無駄遣いの例で出しているのは、だいぶ前の箱物行政であって、何がアカンかったか原因を検証しないと、それこそまた同じ失敗を繰り返しますよ」

 橋下氏は、かつてのような市の税金の無駄遣いを「やめさせるために都構想を提案した」と説明します。しかし、廃止する市から府が奪う権限と財源を使って、自分たちこそ府知事主導で地下鉄道「なにわ筋線」や高速道路・淀川左岸線延伸部などの無駄な開発を繰り返そうとしていることは隠そうともしていません。

(2015年4月26日付しんぶん赤旗)