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「思想調査」違法認定に橋下市長

反省なく誤り繰り返す

 大阪市職員に対する「思想調査」を「不当労働行為」と認定した大阪府労働委員会の命令に対して、橋下徹市長は不服申し立てを行う方針を示しています。違法が断罪されたのになんら反省もなく、誤りを繰り返すものといわざるをえません。

 命令交付直後の25日午前、橋下氏は「労働組合に対する不当介入ということであれば大変申し訳ない」「これからはルールをしっかりと守っていく」と発言。命令には「従う」と表明していました。

不服申し立てへ

 ところが夜になって前言を覆しました。橋下氏は自らに「ルール違反があった」ことを認めながら、府労委に申し立てを行った市労連(連合加盟)側の会見をとりあげ「僕の組合介入の問題をどんどん追及していくとか(言っている)。鬼の首をとったようにいうのは違う」とまくしたて、「あそこまで(組合側に)言われたら他の訴訟にも影響するから手続きは取っていきたい」と不服申し立てを行う方針を示したのです。

 市労連の会見は、橋下氏による命令(再発防止の誓約文書の手交)の履行や経過の解明、具体的な再発防止策を要求した上で、労働組合法を順守し、他の問題でも不当労働行為をやめるよう求めていたものです。

 橋下氏はかつての市職員厚遇問題などを取り上げ、「組合のこれまでの態度振る舞いはどうなんだ」と声を荒らげましたが、それによって市長が「思想調査」という違法行為を行った事実はなんら免罪されるものではありません。

 そのことは、命令書自体が、たとえ組合員である市職員の不適切な行動が問題で解明が必要であったとしても、「それぞれの事象に即して、調査が行われるべきであり」、今回のような不当な調査が「正当化されるものでもない」と断じている通りです。

 橋下氏はさらに26日、かつて市交通局が手を出して破たんした無駄な事業に言及。市バスの廃止・民営化などを念頭に「原理原則論でいくんだったら(市役所内の)組織がなくなればぜんぶ分限免職(解雇)できる」「組合が対立構図でいくなら、『雇用を守ってください』とか言ったって、僕は知りませんよ」などと述べました。

 これはまさに“職員の首を守りたければ、組合は市長の違法行為への批判は控えろ”といっているのと同じです。公職にありながら、不当労働行為を行ったことを断罪された張本人が、誤りを重ねるものといわざるをえません。

きべんは通らず

 今回の「思想調査」は、組合・市職員に対する不当労働行為にとどまらず、憲法19条に保障された思想・良心の自由、21条に保障された政治活動の自由などを踏みにじるものであって、選挙で市職員に投票要請をした人の氏名の記載を求めるなど、その矛先は市民・国民にも向けられたものです。

 市職員55人が提訴した「思想調査」裁判の原告団は、そのすべてを問題にしています。同裁判を支援する市労組(全労連加盟)が「市役所を市民に役立つところに」とかねてから市政の問題をただし、市民要求実現のために活動してきたことも、橋下氏が一貫してふれようとしない点です。

 市側は同訴訟で「調査の実施主体は橋下市長から依頼を受けた第三者調査チームで大阪市ではない」と主張していましたが、そのきべんも府労委によって退けられました。命令書では、調査が「処分」で威嚇しながら「市長の業務命令」によって「市の設備を利用して」行われたことなどを指摘。むしろ「市が主体となって行ったものだ」と断定しています。

 橋下声長は「思想調査」の誤りについて、市民の前で自らの非を認め、不服申し立てを断念するとともに、同訴訟についてもただちに解決すべきです。  (藤原直)

(2013年3月28日付しんぶん赤旗)