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市議団の実績

2004年度決算議会を終えて

大阪市会議員団 下田敏人団長(幹事長)に聞く

2006年2月4日

 2004年度の大阪市一般会計決算を審議する議会が、昨年12月16日に開会し、この1月31日に閉会しました。例年なら、一般決算議会は11月に開かれますが、今回は、関淳一市長の突然の辞職にともなう市長選挙が11月27日投票でおこなわれたため、日程が大幅にずれこんだものです。1月13日には、関市長の所信表明に対する本会議一般質問もおこなわれました。

 今回は、決算の審議にとどまらず、市長のマニフェスト(市政改革基本方針)案が12月15日に、局長と区長のマニフェスト案、および、向こう5年間の「新行財政改革計画」案が1月12日に、それぞれ発表されたため、市民の目線でマニフェストをただす重要な議会になりました。

 大阪市では、大型開発や同和特別扱いによる深刻な財政危機や三セク破綻が相次ぎ表面化する中で、2004年6月に、小泉内閣のブレーンの一人・本間正明阪大教授を座長にすえた「都市経営諮問会議」を発足させて、同年12月に「関市長への提言」を出してもらって、2005年4月には上山慶大教授なども加えた「市政改革本部」を立ち上げて、「提言」の具体化をすすめ、9月に、最初のマニフェスト(市政改革本部案)を発表しました。

 その中身は、規制緩和や「官から民へ」という小泉内閣の「構造改革」路線を全面的に受け入れ、「大阪市政に民間経営の仕組みを導入する」と共に、財政危機などを克服するため、「人口と税収に応じた“身の丈”サイズに、事業・組織・予算・人員をスリム化」するというものです。具体的には、事業の「選択と集中」をおこなって、スーパー中枢港湾づくりなどの大型開発は引き続き推進する一方、敬老パス見直しなどの市民サービス全面カットや公立保育所などの民営化・民間委託を一気に進めると同時に、「職員厚遇」に対する市民の批判を逆手にとって、5年間で7000人もの職員削減をおこなおうとしているのです。

まさに、住民の福祉の増進につとめるという自治体本来の役割と公的責任をなげすて、大企業へのさらなる奉仕を、「改革」の名で市長のトップダウンにより強権的にすすめようというものに他なりません。

 関市長は、市長選挙での得票が有権者比わずか13.5%だったにもかかわらず、「改革」が市民に信任されたと強弁し、従来よりもさらに具体的にふみこんだ市長・局長・区長マニフェストを出してきました。

 その中身は、新婚世帯向け家賃補助は「2006年度以降に引き下げ」などと市民サービスカットの実施時期を明記、児童館(10館)や勤労青少年ホーム(25館)などの廃止、小中学校と高校の統廃合、粗大ゴミの有料化・普通ゴミの有料化の検討、地下鉄・バス事業などの民営化に加え市立病院などの独立行政法人化など、市民生活に密着した部分に大ナタをふるうものです。また、今後は、マニフェストの実行を「監視してもらうために」、財界幹部などによる「市政改革推進会議」を立ち上げるとしています。

敬老パス2006年度も継続へ

 わが党議員団は、決算委員会や本会議討論などで、マニフェストの撤回と市民のくらし優先への転換を求めて、論戦を展開するとともに、市会議長と与党に対し、マニフェストの集中審議をおこなうことを提案しそれを実現させました。

 今度の審議を通じて最も大きな成果となったのは、敬老パスが2005年度に引き続き、2006年度も無料で継続されることになったことです。決算委員会で「現在と同様に交付する」という答弁を引き出しました。市民のねばり強い運動と、これと結んだわが党の繰り返しての論戦によるものです。ただ、2007年度以降の見直しの含みを残しているため、継続を求める引き続く運動が必要です。また、わが党議員団がこれまで4回も条例提案するなど、議員特権だとして廃止を求めていた費用弁償(議会に出席した議員に1日1万円を交通費などの名目で支給)を、この1月から廃止することも12月議会で議決されました。

 さて、今回のわが党の論戦のおもなものは、先ず、1月13日の本会議一般質問では、市長が、関西財界言いなりに、マニフェストを一気に強行しようとしている政治姿勢を批判し、市民の暮らし、福祉最優先の市政に転換することが本当の改革だと主張したのをはじめ、決算質疑のなかでは、大阪市ではゴミの減量が着実に進んでいるのにゴミの減量を理由に有料化を持ち出すとともに、老朽化した森之宮焼却工場の建替による10工場体制の維持に固執していること。土地開発公社が各局の依頼により代行取得した12haもの土地の大半は、事業目的がなくなり長期にわたる放置で利子が積み上がり、すべての土地を路線価で売却すれば、造成土地分も含めて、470億円もの赤字となることなど、わが党委員の質疑で明らかにしました。

 また、マニフェストの集中審議では、新婚家庭向け家賃補助の引き下げ・児童いきいき放課後事業の有料化・保育料の値上げなど少子化対策に逆行するメニューを並べていること。児童館廃止の問題では、「こまります。こわさないでください」など子どもの訴えも紹介し、市民不在であり、市民からの信頼回復をめざすというマニフェストの趣旨にもそむいていると強く批判しました。また、地下鉄・バス事業では、安全と利便性を守ることは公共交通の使命であり、公的な補助をおこなってでも進める必要があることなど、局長マニフェストに対してもつっこんだ質疑をおこないました。

 さらに、マニフェストが、大型開発とともに同和行政を聖域にしている事にも全面的な批判を加えました。同和未利用地問題では、住宅用地として15億円余りで取得しておきながら25年にわたって未事業のまま放置しているため、起債の利子が23億円も積みあがって帳簿価格は38億円余りに膨れ上がっている西成区北津守の例なども指摘。解同の言うままに、必要もないのに、住宅・工場アパート・福祉施設用地などとして買収し、放置している土地は当局の言う6haをはるかに超えるものだと批判した上、売却などの早期の処理と責任の明確化を求めました。

 また、今回、街路樹維持管理の入札をめぐって、「ゆとりとみどり振興局」の職員が3人逮捕された問題で、同和建設協会加入の業者と一体となって、「官制談合」を繰り返し、高値落札をさせて市財政に損害を与えていたこと、他の局でも同和建設協会加入の業者との懇談会が状態化していたことなどを明らかにして、一切の同和特別扱いをやめるよう求めました。 

 一方、自民・公明・民主の与党は、「市長と共に改革を担う立場だ」「マニフェストを推進する体制づくりを」「市民にとってわかりやすいマニフェストを」「職員削減はもっとおこなえ」など、マニフェストの推進を迫る主張をくりかえし、市民の批判が強いことから、苦しまぎれに、同和の見直しなどを求める附帯意見をつけて、決算の認定に賛成しました。

 今度の論戦を通じて、市民の立場に立つわが党の果たすべき役割が、ますます強く大きくならざるをえないということを痛感しました。 

 今月20日前後には、2006年度の予算案が発表され、22日から予算議会がスタートします。マニフェストの具体化を許さず、市民要求の前進へ、引き続き、全力をあげます。