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市議団の実績

大阪市会議員団は分譲マンション問題にどう取り組んできたか
稲森豊市会議員に聞く
 

日本共産党大阪市会議員団は分譲マンション問題にどう取り組んできたか

1、なぜマンション問題を重視するのか・・・・マンション問題を取り組むの視点について

 私達大阪市会議員団は他党に先駆け、いち早く分譲マンション問題を重視して議会の場でも取り組んできました。それは分譲マンションに生起する諸問題は一般の持ち家と違って構造的には共同住宅の形態を持ち、区分所有法に基づく特殊な所有形態であるため維持管理の面において個々の住宅所有者の対応では解決が困難な場合が多く、しかも数の上においても大阪市内総住宅戸数約100数十万戸のうち約20数万戸を占め、放置しておけば共同住宅の機能が損なわれ社会問題になるおそれがあるため行政的な援助が必要である。これが第1の考え方であります。
 また一般の住宅と比べて共同住宅と言う形態であるが故に行政サービスにおいて不利な扱いを受けている場合があり負担の軽減のための是正が必要であるということが第2点目の視点であります。
加えて、「広大な空白」と表現されるようにマンション居住者の政治傾向としていわゆる無党派層が多く、党として無党派層への接近と言う側面からのアプローチの必要性も動機の一つであることも周知のとおりであります。

2、大阪市内の分譲マンションの抱える課題

 大阪市内における分譲マンション建設の歴史は東京と比べ若干の時差はあるもののまだ築30数年と浅く、老朽化による維持管理の面で問題が顕在化するのはこれからと考えられますがすでに築30年経過したマンションが約七千戸、築20年以上が約7万4千戸ある事から、少なくないマンションにおいて既に日常的なメンテナンスと同時に屋上防水のやり替え、外壁塗装、排水管改修、など大規模な修繕が必要なケースが生まれており、修繕積立金の不足、管理組合としてノウハウが無いためどのように対応していったらよいのかなど困難にぶつかっているケースも増えています。
 また、高置水槽の定期的な清掃、水道各戸メーター取替えの自己負担、エレベーターのメンテナンス、団地内のバリアフリーや防犯対策、集会所・児童遊園の運営、など一般の住宅では必要でない共同住宅維持のための経費も多く、最近の経済情勢の悪化に加え、入居者の高齢化に伴い年金生活者が増加するなど、収入の減少により修繕積立金や共益費の負担が困難になるケースも増えています。しかし、大阪市においては、大都市の宿命として土地の高度利用が不可欠なことから高層マンション建設を住宅供給の一つの柱として、その公共的役割を認めておきながら、メンテナンスの面ではこれら分譲マンション固有の諸問題に対しては行政としての特別な支援制度はありませんでした。

3、わが党議員団どのような取り組みをしてきたか

 そのような状況のもと、党独自の問題意識とマンション居住者からの要求に基づき1994年3月の本会議質問を皮切りに日本共産党大阪市会議員団として議会において大阪市に対する制度要求を強めてきました。
 当初、議会において行政的な援助を求める陳情や、わが党がマンション居住者からの要求をもとにした支援策を提案しても大阪市は「マンションは個人の財産であり自由主義経済のもとでは個人の財産は個人が守るのが原則であります」というゼロ回答をよこすだけで他会派も「継続審査」の対応で取り聞き置くだけでしたが、他の自治体における進んだ取り組みや、成果を調査し、それを議員団として市政報告にまとめ全戸配布する、あるいは分譲マンションの管理組合に対して情報提供し、共に要求運動に参加するよう働きかけ、事あるたびに議会で議論する、あるいは党のマンションオルグの活動家との連携で分譲マンションに系統的に「快適なマンションライフのために」というマンションニュースや要求アンケートを入れる、ハンドマイクによるマンション向けの特別宣伝を行うなど、粘り強い積み重ねの活動の結果、「マンション問題は日本共産党が一番熱心」という認識が広がっていったのです。ビラの投入一切お断りというマンションでも「お宅のマンションニュースだけは配って頂いて結構です!!」と言う反応も返ってくるようになりました。
 そして2001年5月には日本共産党大阪市会議員団主催の府下的規模のマンション問題交流・懇談会を開くまでに至ったのです。この懇談会は管理組合、マンション居住者個人など約四千百の個人団体に市会議員団名による案内状を送付、あるいは居住支部のメンバーと管理組合を直接訪問し案内状を届けるなど広くよびかけを行い当日は160名の参加で、参加者からは実践的な活動経験やぶつかっている困難などが豊富に語られ内容的にも成功しました。

4、日本共産党市会議員団がマンション居住者と共に要求し実現した成果の主なもの。

 当初、まったく耳を貸さなかった大阪市もたびたびのわが党議員団の議会での追及と提案によりマンション問題を大阪市の都市問題の一つとして認めるようになり要求も徐々に実現するようになっていったのです。
 この間わが党が取り上げ大阪市に実施を迫った内容は次のとおりです。

◎ 分譲マンションの大規模修繕など共用部分についての公的援助を。
◎ 専門家による相談センターの設置、区役所に相談員の配置を求める。
◎ プレイロットや道路、集会所など共用部分の固定資産税・都市計画税の減免制度の創設を求める。
◎ 民間分譲マンションの集会所の建設、改修の補助を求める。
◎ 民間マンションの耐震補強工事の助成を求める
◎ 民間分譲マンションの実態把握のため大阪市として調査を行う。
◎ マンション給水設備の維持管理の公的支援を求める。
◎ 受水槽の清掃や点検の助成を求める。
◎ 共用部分の段差解消(エレベーターホール、集会所)への助成を。
◎ 階段手すりの設置などバリアフリー化への補助を。
◎ 各戸の水道メーター取替えを公的責任で。
◎ エレベーター内の防犯カメラ設置に対する助成を。
◎ 関西電力への電気室の無料提供の是正を。

 など、毎年予算要求を行い、委員会での質問、陳情請願の採択を求めるなど粘り強く活動を展開してきました。

この間実現したおもな要求

◎ プレイロットへの固定資産税・都市計画税2/3減免(H13年度より実施)
◎ 集会所全額減免(H13年度より実施)
◎ 住宅情報センターに分譲住宅の維持管理や建替えに関する相談室の設置、「大阪市マンション管理・建替支援事業」の実施(H12年度より実施)
◎ 1981年以前に着工した一定規模以上の共同住宅への耐震改修費補助の実現(工事費の約13%補助)
◎ エレベーター内の防犯カメラ設置への補助が実現(H14年度より実施)
◎ マンションアドバイザー派遣、建替え検討費助成の実現(H15年度より実施)
◎ 水道メーターの設置費用の公的負担についても実施する方向で検討中。

 などまだまだ成果としては初歩的でありますが、分譲マンションが社会的な問題であると大阪市が認識し必要な補助や支援を行うようになったのはまさに他党に先駆け粘り強く要求してきた議員団の努力の結果である事は間違いありません。

5 マンション問題の今後の課題と解明すべき問題

 以上大阪市会議員団として取り組んできた内容について概観してきましたが、その中で分譲マンションの諸問題を解決してゆく上で、考え方の問題として解明しなければならないと思われる二つのことを最後に問題提起として述べたいと思います。
 ひとつは「広大な空白」「マンション居住者へのアプローチの困難さ」と表現され、分譲マンションをめぐる課題がなかなか運動として広がらないという悩みの声を良く聞きますし、事実大阪市においても同様ですがその思想的背景はなんだろうか?と言う点です。
 マンション問題をはじめ住宅問題に関心を持ち続け、手がけてきた者としての印象ですが、一つには日本人の「家」に対する考え方に他の所有物に対するものとは違った思い入れがあるように思われます。「個人の財産は個人で守るのが常識です」と行政が答える。事実それを受け入れる素地がある。多くの日本人は「住宅」「家」を居住の道具と言う側面と同時に「財産」と考える傾向が特に強い。「持ち家を手に入れることは一生の大事業であり、それを実現するのは個人の甲斐性の問題」という思いが強く、住宅問題を社会問題として要求としてとらえる点において諸外国と比べ弱いのではないかということです。これが「人様に頼らず」財産は自分で築き守るもの」という観念を形成しているというのが私の考えであります。
 私はマルクスの言葉を借りて「日本では持ち家と言う商品は極めて物神的性格が強い」と常々考えています。耐用年数を考えれば35年ローンで入手した分譲マンションは35年のローン返済時にはほとんど売却物件としての財産価値もなくなり、分譲マンションと賃貸マンションとの差異は、いわば金を借りるか、家を借りるかの違いぐらいであると思われるのですが自己所有の住宅と言う事で財産を守ると言う観念が強く働き、それが邪魔をして、なかなか、住宅に生起する問題を行政に要求として突きつけると言う考えに至らないという雰囲気を強く感じるのです。分譲マンション問題を住民運動として発展させるためにはこの財産としての「住宅」という考え方を「住宅」は基本的人権の1つであるという風に変えて行く啓蒙活動が同時に必要であろうかと痛感してきたところです。
 もう一点は、マンション問題はこれから顕在化するだろうという事であります。また問題が拡大再生産されているという点であります。
 大阪における分譲マンションの歴史はさきに述べたように30数年、老朽化による大規模修繕の必要性などが顕在化するのはこれからである事、今までは予想しなかった出費が求められると同時に居住者の高年齢化、年金生活など可処分所得も減少し分譲マンションの維持管理に否が応でも無関心でおれない状況を迎えることは必至です。事実大阪市も住宅審議会に対し今年1月諮問を行い、近くなされるであろう住宅審議会答申でも分譲マンションを巡る問題について言及されるものと思われます。今まで積み重ねてきた日本共産党の先見性のあるマンションに対する取り組みがあらためて浮き彫りになり注目を集めることは間違いありません。
 あわせて現在、小泉内閣による「都市再生」の名による大型再開発、とりわけ未利用地や遊休地へ高級超高層マンション建設ラッシュがあちこちでおきています。
交通の利便性、眺望や日照の良さをキャッチフレーズにしての売り込みですが、これら超高層マンションは新しいうちは維持管理の問題は無いでしょうが、老朽化によるメンテナンスも超高層であるが故に従来のマンションよりもむつかしく、入居する階層もいわゆる一般の子育てファミリー層中心ではなく、高額なマンションを入手できるエリート層、あるいは利殖を目的とした階層と言うように雑多で区分所有法による合意もより難しくなることは明白です。ゼネコンや開発会社の高い収益性を目指した超高層マンション建設、政府による規制緩和による無秩序な乱立、売却すれば終わりで跡は野となれ山となれ式の発想でこれを放置すれば、間違いなく近い将来、大きな社会問題となる事は火を見るより明らかです。今ある分譲マンション居住者の要求実現の取り組みとあわせ、問題を拡大再生産する野放しの超高層マンション建設についても先見性を持って警鐘を乱打する必要があります。
 大阪市においてもマンション居住者の要求と同時に超高層マンションによる日照障害や環境破壊に対する周辺住民の皆さんの要求も最近急増し議会でも取り上げられていますが、この問題でもわが党の奮闘振りは、ゼネコンとのしがらみで住民の立場に立ちきれない他のオール与党の追随を許さないものとなっており、今年の10月から大阪市において新たに施行された大阪市日影規制条例も2年余にわたる住民のみなさんの粘り強い運動とわが党議員団の奮闘によって勝ち取られたものであります。