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市議団の実績

大阪市都市再生プログラムについて

稲森豊議員に聞く

     大阪市は、3月に大阪市都市再生プログラムを発表し、市議会でも都市再生特別委員会が新たに設置されました。この点について、日本共産党大阪市会議員の稲森豊さんに伺いました。まず、このプランの一番の特徴はなんでしょうか。

     まず何よりも、「都市再生」の名で、大型開発をさらに促進しようとしていることです。日本共産党市会議員団は、都市再生特別委員会の設置にも反対しましたが、それはそういう立場からです。もちろん、設置された以上は委員会審議には積極的に参加し、大型開発のむだづかいにこれ以上市民の税金が使われないように奮闘したいと考えています。

     大阪経済の活性化を通じた都市再生を目標にかかげ、@知的ビジネス創造機能の強化Aにぎわい・文化集客機能の強化B魅力あふれるまちづくりの推進という三つの重点プログラムを打ち出していますが、一番目立つのは、大型開発を「都市再生」という新たな装いで復活・強化しようという企みです。都市開発を促進するとして、大阪駅北地区、中之島地区、難波・湊町地区、阿倍野地区、咲洲コスモスクエア地区の5地区を指定しています。

     難波・湊町地区、阿倍野地区、咲洲コスモスクエア地区と言えば、第三セクターによるビルの建設や土地区画整理事業が大失敗して、多額の赤字で行き詰まっているところですよねぇ。

     そうです。難波・湊町地区の開発は、大阪市が国鉄清算事業団からバブルの絶頂期に坪単価約140万円で115,500坪の土地を総額1,572億円で買い、現在湊町開発センター・OCAT(大阪シティエアターミナル)に年わずか3,000万円(39,600坪・坪単価757円)で賃貸しています。この巨大ビルは、166億円の赤字を出して、大阪市はこれまで総額160億円近くの財政支援をしてきました。大阪市は、「関西空港の玄関口」という名目で開発をすすめ、財政支援を進めてきましたが、国際線搭乗手続きは今春から休止され、100円ショップや家具店を誘致し、雑居ビルとなり、公共的な目的は何一つ残っていません。まさにムダと失敗の典型です。ところが、大阪市は、この地区の開発を土地区画整理事業への無利子貸し付けなど、公金投入をして、さらに進めようというのです。土地区画整理というのは、区画整理した土地が売れなければ多額の借金が残り破綻してしまいますが、いまの不況で右肩下がりの時期に成功するはずがありません。またまた、貸付金が焦げ付いて市民の負担になることは目に見えています。

     まったくひどい話ですね。ベイエリア開発はどうなるのですか。

     咲洲コスモスクエア地区というのは、ワールドトレードセンターやアジア・太平洋トレードセンターが建っている地区です。その開発は830億円ものお金をつぎ込んだにもかかわらず、コスモスクエア地区は29%も売れ残っています。特に第二期コスモスクエア地区は94%も売れ残り、ワールドトレードセンターやアジア・太平洋トレードセンターは多額の借金をかかえて、特定調停の申請をするなど破綻状態にあることはみなさんご存じのとおりです。つまり、大阪経済の現実は、このような地区の開発を必要とはしていないのです。ところが、大阪市はこれらの失敗を総括・反省することなく依然として、「貴重な空間である臨海部全体を…一層有効に活用していくことが喫緊の課題…事業の収支均衡を保ちながら開発を着実に進めていくことが求められている」(「テクノポート大阪計画の今後の進め方」と、開発の継続をねらっています。今回のプランでも「産学連携を可能とする研究開発拠点の形成」を目指すと、「今後の社会に不可欠な都市基盤である情報通信基盤について、整備を図る」「進出時の負担を軽減も可能とする土地購入者の分割払い期間の延長を図るとともに、進出時の負担の軽減につながる補助、融資制度等について検討する」「生活利便機能を本地区へ導入する」などと、根拠のない美辞麗句を列挙し、開発のために糸目をつけない公金支出をねらっています。

     そのうえ、今回は新たに「西日本最大の交通ターミナルである立地ポテンシャルを最大限活かし、国際競争力の強化とともに関西の再生をリードする随一の国際的な拠点としての開発を促進する」と、梅田北地区の開発にも乗り出そうとしているのです。

     まさに開発のオンパレードですね。都市再生という言葉を聞くと市民の住環境がよくなるのかと、期待する向きもありますが、この点はどうでしょうか。

     「都心の地域特性に応じた魅力ある住宅地の形成を図る」などと書いてありますが、やろうとしている政策はそれに全く逆行するものです。目玉にしている空きオフィスの住宅転用というのは、住宅建設の規制を緩和して、窓がなくても住宅に転用できるようにするなど、最低限の居住環境も保障しなくてもいいようにするものですし、「良質な都市型住宅供給の促進」というのは、「容積率の割増や公開空地の下限などの適用基準を緩和する制度拡充」をおこなって未利用地などにマンション建設をしやすくしようとするものです。これは、大企業の不良債権処理を目的としたもので、魅力ある住宅地どころか、日照権の侵害や風害など、あらたな住環境の悪化、地域コミニュティ‐の破壊につながることは明らかです。

     これでは、目的としている大阪経済の活性化は期待できそうにありませんね。

     そうです。大阪経済の活性化というのなら、何よりも市民の暮らしと市内事業所の98.8パーセントを占めている中小企業の活性化を一番に考えるべきです。大阪市は、大規模開発の結果、多額の借金をかかえ、ついに「財政非常事態宣言」を出しました。原因が大型開発の失敗であることは明々白々なのに、開発は相変わらず進め、市民の暮らしを直撃する国保料や介護保険料の値上げ、生活保護の切り下げなどを強行してきました。この間製造業の実態調査が行なわれ、今後2〜3年の間に廃業を考えている事業所が3割もあることがわかるなど、その実態はますます深刻ですが、こうした中小企業を直接支援する政策は全くありません。日本共産党市会議員団は、こうした大型開発最優先の「都市再生」ではなく市政の主人公である市民こそが元気になる本当の大阪再生・市民生活再生のために奮闘したいと思います。