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市議団の実績

 

2024年度大阪市一般会計等決算および、

大阪市公営・準公営企業会計の決算への

井上議員の反対討論

井上ひろし市会議員

2025年11月14日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2024年度 大阪市一般会計等決算および、公営・準公営企業会計の決算認定に反対する討論を行います。

関西財界系のアジア太平洋研究所は、今年度の関西の実質域内総生産(GRP)の成長率は、万博工事最盛期である2024年の1.1%から、四分の一の0.3%へと急降下し、日本全体の予測値よりも、減少幅が大きくなると推計しています。このことから、「万博効果」は限定・短期間にとどまり、景気の落ち込みは全国よりひどくなると分析しています。

 もともと、万博工事最盛期でも、万博前の2022年の成長率2.8%に及ばず、限定的効果しかありません。物価高騰のなか賃金が大きく上がらないもとで、一過性のイベントでは、景気回復・経済成長につながらないことを示す分析結果と言えます。経済の低迷は、消費の落ち込みが大きな原因ですが、くらしと家計が押しつぶされそうな今こそ、地方自治体本来の役割を発揮し、市民生活と中小企業の支援で、市民のふところを豊かにすることに全力を挙げるべきです。

 ところが、物価高対策とくらしの応援、公共の役割は後景に追いやりながら、万博やIR・カジノ誘致など、大型開発は前のめりで推し進めてきた本決算は到底容認できません。

 以下、具体に申し上げます。

 

 第一に、社会保険料に関わる問題です。

まず、国民健康保険料についてです。

 国民健康保険は、昨年度から府内統一化となり、これによって市町村が独自に一般会計から任意繰り入れによって実施してきた、保険料の軽減や減免ができなくなるとしています。

しかしながら、本決算委員会において改めて確認しましたが、これはあくまで技術的助言に過ぎず、府内統一化されたとはいえ、法的には自治体独自の保険料の軽減、および独自減免は可能なのであり、各自治体の「主体的判断」は排除されないのであります。

国民健康保険法の本来の主旨にそって、本市独自の任意繰り入れと減免を継続するべきでありますが、福祉局は市民負担の軽減に対し、否定的な答弁に終始しました。

「国保料が高いという、住民の苦しみに耳をふさぐ訳にはいかない」と、国保料引き下げの決意を9月の議会で語った忠岡町長の答弁を、私は質疑の中で紹介しましたが、このように市民の窮状に寄り添う姿勢こそ、本市に求められているのではないでしょうか。

都道府県下で、国の思う通りに統一化が進まないのは、多くの自治体において急激な国保料の値上げにつながる仕組みだからです。

にもかかわらず、大阪府・市は市民負担の急増などおかまいなしに、率先して統一化を進めた上に、本市は国保料の軽減を拒否しているのであり到底認められません。

 続いて介護保険料についてです。

 本市の65歳以上の介護保険料、基準月額は、昨年4月の改定で9249円となり、全国一高額となりました。

 介護保険財政の国の負担割合は、2000年の制度導入時から25年経った今でも25%のままであり、責任の棚上げという他ありません。介護保険料が高すぎる根本原因は、低すぎる国の負担割合にあるのであり、本市として国庫負担を大幅に増やすよう、国に強く要望すると同時に、第10期の保険料改定に向け、本市としても独自の具体的な取り組みを行ない、「全国一高い保険料」の汚名を返上すべきであります。

 しかしながら市長は、高すぎる保険料への具体的な軽減策を求める私の質問に対し、「介護予防事業に重点的に取り組む」としか答弁されませんでした。

介護予防に積極的に取り組み、健康寿命を延ばしていくための様々な施策は当然必要であり、これに異論はありませんが、自助努力を促すだけでは限定的な効果しか期待できないのではないでしょうか。

 地方自治体の主体的判断による、一般財源から介護保険会計への繰り入れを禁じる法律、および法令上の規定や罰則は一切存在せず、一般財源の投入は技術的に可能なのであります。

 今こそ、一般財源の投入をはじめ、あらゆる知恵と力を尽くして、市民負担の軽減に努めるべきであります。

 

 第二に、民間委託事業についてです。

 私は、本決算委員会において、区役所住民情報窓口および、学校給食調理事業の民間委託について質疑しました。

 まず、区役所住民情報窓口の民間委託についてですが、2018年12月の市政改革特別委員会において、増え続ける委託料問題を取り上げた私は、「このままのペースで推移していけば、早晩、本市がこれまで民間委託の成果としてきた経費削減効果額を上回る水準まで、委託料が増加するリスクを負っている」と指摘しました。

 今回、改めてこの問題について質疑したところ、市民局は、「単年度の財政効果は、ほぼ見込めなくなる」と答弁したのです。

 民間委託の大義名分を失った今、持続可能な行政運営のためにも、窓口業務は本市直営に戻し、現場での経験や知見を身に付けた専門家を行政内に育成するべきであります。 

 

また、学校給食調理事業の民間委託についてですが、民間委託を導入する前の2006年度と、2024年度の給食調理業務に係る決算額を比較すると、2024年度の決算額が2006年度を大きく上回っており、民間委託にかかる費用が増加の一途をたどっていることがその要因です。

 こちらもやはり、民間委託による財政効果は表出していません。

 そればかりかこの間、給食への異物混入などにより、学校現場ではトラブルの対応に追われる事態となったのであり、「なんでも民間で」という流れを推し進めてきた責任は重大です。到底認められません。

安全・安心の給食提供に全責任をもって対応すべく、給食調理員についても本市直営で担うべきであると申し上げます。

 

 第三に、特区民泊についてです。

 2016年1月の大阪市会本会議において、いわゆる特区民泊に関する条例案が可決されましたが、わが党は、5000件もの事業登録を見込みながら、適切に監督する体制が明確でないこと。市民の生活空間に入れかわり立ちかわり外国人観光客が出入りすることで、近隣住民の生活環境が脅かされるおそれがあること。トラブルが発生した際の本市の権限が弱く、治安の悪化を心配する市民の声に全く応えていないこと。の大きく3点の理由から反対を表明しました。

 わが党は、今日の混乱を予見する指摘を行なってきたところであり、本市は来年5月29日をもって、特区民泊の新規受付を終了するとの方針を示しました。

しかしながら、終了期間までが長すぎることに、市民から不安の声が上がっており、駆け込み申請による急増がさらなる混乱を招きかねません。

私は質疑の中で、中央区のある地域において、「新規民泊の申請の即時停止、及び悪質・違法民泊の業務停止を求める署名」が、わずか2週間あまりの間に約3千筆も集まっていることを紹介しました。

 この署名活動に取り組んでおられる方に、生活環境が脅かされている実態をお聞きした際、当該地域の「民泊マップ」を見せていただきました。それは、自ら地域をくまなく歩かれ、違法民泊を含む全ての民泊を地図落とししたものでありました。

 特区・新法・違法、それぞれの民泊が入り乱れて混在しており、その密集ぶりと数の多さに、私は唖然としました。

本市として、民泊の実態を詳細につかむとともに、違法民泊をはじめとする迷惑民泊の根絶に強力に臨むべきであり、特区民泊の継続は到底容認できないと申し上げます。

 

 最後に、万博とIR・カジノについてです。

 大阪・関西万博が10月13日、半年間の会期を終え閉幕しました。

 入場券収入などで賄う運営費は黒字だとされていますが、国際博覧会協会の小野副事務総長が、「警備費には国費をもらっているので、実際の運営費収支はぎりぎりだ」と語られたように、警備費約255億円や途上国出展支援費約240億円などを、国費負担へと切り離しての収支計算によるものです。

 一方、運営費だけではなく、上振れを続けた会場建設費2350億円や、会場へのアクセス向上・周辺インフラ整備費約8520億円をはじめ、巨額の事業費がかかっているのであり、万博の成否については、これらを考慮した上での総合的な検証が必要です。

 したがって、これからの市民負担を考えれば、「成功した」などと、楽観視できる状況にないことは言うまでもありません。

そもそも、万博とその後のIR・カジノのために、廃棄物の最終処分場である夢洲を、巨大開発の舞台に選んだことが、市民生活と本市財政を圧迫している要因なのであります。

IR・カジノをはじめ、無謀な夢洲開発はきっぱり中止すべきと、改めて申し上げ討論とします。