title


市議団の実績

「大阪市ギャンブル等依存症対策条例案」
に対する山中議員の反対討論

山中智子市会議員

2025年5月27日

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、ただいま上程されました議員提出議案第11号「大阪市ギャンブル等依存症対策条例案」に反対する討論を行います。

 先日、ご家族のギャンブル依存症に苦しむ方々とお話ししました。自分の命より大事と思って育てたわが子が、いつの間にかギャンブルにのめり込み、嘘を吐き、家族や会社の金品を盗み、まるで別人のようになって手がつけられなくなる。行方知れずになってしまった息子さんや、闇バイトに手を出して受刑中の息子さんをお持ちの方々が、異口同音に、地獄のような日々の中でただただ泣き続け、自殺も考えたと語って下さいました。そして何かしなければ、と子どもの身を案じながらもギャンブル依存症をなくす活動に力を注いでおられます。ギャンブル依存に陥っている人が400万人とも500万人とも言われ、本人はもちろん、その数倍の人が、かけがえのない家族のギャンブル依存症に苦しんでおられる深刻な現状に照らして、国も、自治体も本気でギャンブル依存症対策を急ぐべきであることは論をまちません。

 大阪市として条例を制定し、独自に対策を強めようという考えには賛同いたしますが、この条例案が、果たして、いまこの瞬間にも苦しみ悲しみながら依存症対策の前進を願っておられる方の思いに応えられるかという点で疑問があります。

第一に、本来なら当事者の方々や専門家の意見をいただきながら、委員会付託やパブリックコメントなどを経て、真摯で深い議論がなされるべき条例なのに、なぜこんなに急ぐのか、不可解だということです。

第二に、そうやって拙速に提出されたからでしょうか、定義も基本理念も不明確だという点です。

 たとえば、第2条で、事業者の定義として、「カジノをはじめとした合法的なギャンブル等を提供する事業者」とされていますが、遊戯の名のもとに行われているパチンコの三店方式を、合法だと堂々と言い切ることには、違和感があります。市内での「違法オンラインギャンブル」の宣伝活動の禁止はうたっていますが、現在も地下鉄駅にはパチンコ店の大きな広告があり、それを目にすることが依存症を生んだり、依存症からの回復を挫折させたりしている実態をどうするのか見えてきません。14条で、射幸心をあおる広告宣伝の規制への協力はでてきますが、あくまで協力であり、こんな弱腰で依存症対策が進むとはとても思えません。このままいけば、カジノも合法だから市内での広告活動を禁止できない、などということにならないかと危惧します。

 また、大事な基本理念をうたった第3条に、肝心かなめの「予防」がありません。予防教育はありますが、予防がない。まるで、予防を「教育」のみに限定し、本気で賭博行為や賭博施設を禁止することを避けている、とさえ読み取れるものとなっています。

 第三に、「違法オンラインギャンブル」という言葉が盛んに出てくることで合法な「オンラインギャンブル」があるということが印象づけられます。たしかに「オンラインギャンブル」のすべてが違法ではないとしても、「オンラインギャンブル」の中には、いま大問題になっている「オンラインカジノ」が含まれます。警視庁などが強調している「オンラインカジノは違法です」というメッセージを徹底するべき時に、合法なオンラインカジノがあると受け取られないでしょうか。そんなことになったらほんとうに大変です。

 以上、危惧や疑問を指摘させていただきましたが、一番大きな疑問は、カジノという賭博場の誘致と、ギャンブル依存症対策の推進がいったいどうすれば両立するのか、このことです。ギャンブル依存症は誰が陥ってもおかしくない病気だからこそ、最大の予防は、バクチ場をつくらないこと。はっきりしています。人の人生をめちゃくちゃにするカジノ誘致にキッパリ反対することこそ、いま、最も求められるギャンブル依存症対策ではないしょうか。そのうえで、当事者・関係者の英知を集めた条例案にすべきだと申し上げ、反対討論といたします。