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市議団の実績

2019年度大阪市一般会計等決算の認定に対する
長岡議員の反対討論

長岡ゆりこ市会議員

2020年11月27日

  私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2019年度大阪市一般会計等決算の認定に反対の討論を行います。

 反対の理由は、コロナ対策と市民の命が最優先にされるべき今、大阪市の廃止分割を市政運営の前提とするとともに、斜陽産業のカジノ・IRにしがみつくなど、大型開発優先の姿が、本決算に現れているからです。

 カジノの斜陽産業ぶりは、コロナ禍が訪れる前から始まっていました。

 経済評論家の大前研一氏が、2018年のIR推進法策定の時点で、「カジノを売り物にした日本のIRは、今や世界では時代遅れなのだ。それも1周ではなく2周以上遅れている。」と指摘しておられ、今年の新型コロナ感染症の影響で、業界最大手のラスベガスサンズは、今年度の3四半期の決算報告で前年比73.%の減。

 大阪に唯一名乗りを上げているMGMリゾーツ・インターナショナルは、同じく今年度第3四半期は、純収益が前年比66%減となるなかで、5億ドルの純損失を計上しています。266億ドル(約3兆円)の負債もあると聞いています。

 このようなあやうい経営状況の事業者を誘致するにもかかわらず、大阪府市が事業の中止を行おうにも、35年の長期にわたって、賠償責任が負わされる。そのような不公平な契約を結ぶのは、自治体の自己決定権をないがしろにしていると言わなければなりません。

 10月中旬の世論調査では、カジノ・IRについては、賛成37%に対し反対が52%でした。6月の前回調査と比べて反対が3ポイント増え、賛成が3ポイント減っています。

 市民の声も、カジノ・IRはいらないということです。

 そんな賭博場のインフラ整備に、巨額の税金をつぎこむ一方で、地元の小中学校に目をやれば、床がささくれ立っていても、「どこもこんなもんだ」と改修してもらえず、雨漏り、汚いトイレ、転落防止のない窓などの不便や危険を我慢しながら、ソーシャルディスタンスの守れない教室で学ぶ学校環境は改善されていません。

 今こそ、ポストコロナの時代も見据え、文部科学省も進める少人数学級に、先駆的に取り組む時ではないでしょうか。

 また、万博開催に向けて工事を急がせている淀川左岸線では、700億円を超える追加工事費が明らかとなり、コロナ対策そっちのけで大型開発最優先の市政運営が見えています。2重行政の無駄の解消と言いいながら、2重じゃなければ大型開発に湯水のように税金をつぎ込んでいいのかという事に、大きな批判が出されているところです。

 淀川左岸線沿線の地元住民のみなさんから、汚染土壌が当初予定より広範囲だったという今回の工事規模を見誤った点について、「2003年以降4回にわたって実施されてきた土壌調査はなんだったのか、予測出来ることではなかったのか」という怒りとともに、作業員や住民への健康被害について懸念の声が出されています。

 そんな成長戦略の高速道路建設に多額の税金を使う一方で、生活道路・幹線道路は白線が消え、停止線やセンターライン、横断歩道まで消えている。SNSでも、「大阪白線カスカス」と話題になるほどです。「道路管理者としての大阪市の怠慢ではないか」と、かなり厳しいご意見もいただいているところです。

 また、大阪万博については、できるだけ簡素なものにと求めてまいりましたが、開催地を夢洲でということには、反対の意を申し上げます。

 夢洲は、廃棄物の最終処分場としての重要な役割があるとともに、集客には最も向かない場所であること。絶滅危惧種のコアジサシや、シロチドリの繁殖地にもなっている場所として、大阪府の「生物多様性ホットスポット」に指定されている夢洲は、SDGsの観点から、自然保護・地球環境の保全が重要課題となる場所でもあります。

 夢洲での万博開催を見直すべきです。

 カジノ・IRの推進や、万博アクセスのための無茶な開発に多額の税金をつぎこむ一方で、市民の命と健康を守るための施策が、ないがしろにされていることが問題です。

 特に保健所体制ですが、このコロナ禍を、今回限りのことと捉えるのではなく、いつでもこういった事態に備えられる保健所体制を整備しておく必要があります。とりわけ保健師の実質増員が必要だということは、コロナ禍を経験した私たちにとっては、当たり前の事実です。 

 新型コロナウイルスの第3波が猛威を振るっています。昨日の大阪府の感染者は326人。過去最多の12人の方がなくなっておられます。重症者も過去最多の108人です。国の基準で「感染急増」のステージ3から「感染爆発」のステージ4に「移りつつある」という状況です。

 重症患者病床の実質使用率が8割を超える中、府が新型コロナウイルス感染症対策協議会で示した1か月のシミュレーションによると、感染者が毎週1.5倍のペースで増え続けると、1219日時点で軽症中等症の病床が3578床、重症者用も405床、必要となります。

 「重症に分類されないまま亡くなるケースも少なくないため、手遅れの対応は許されない」と新聞報道もされています。

 大阪府の陽性者数のうち、約半数を占める大阪市にとっても、重大な問題です。

 また、看護師の確保も難航しています。新型コロナ患者では、患者2人に看護師1人が対応し、ECMO(エクモ)装着者などの重症者では、患者1人に医師4〜5人、看護師10人、臨床工学技士2〜3人など、合わせて20人程度の医療スタッフが必要になるとのことです。しかし現状での看護師の確保は非常に困難で、大阪コロナ重症センターでも必要な人数の半数も確保できていないと報道されています。

 医療体制の充実については、もちろん、病床の確保が急務であることは自明の事であり、遅いくらいだという感はありますが、ハード面の整備をいくら行っても、医師や看護師などの医療スタッフの確保がなければ、病床を稼働することはできません。

 コロナ禍をのりこえたその先に、安心して暮らせる大阪市をつくるためにも、医師・看護師・保健師などの育成についても、政令指定都市大阪市として責任をもって行っていくべきです。

 我が会派は、2009年の新型インフルエンザの経験以降、新型感染症などへの対策を強めるために、保健師・検査技師・衛生監視員などの増員を要望してまいりましたが、着手してこなかった大阪市の責任は重大です。

 2019年度の保健所の保健師は、前年度から1人増やしただけの27人。大阪市と比べ、人口比わずか14%弱の吹田市でも、保健所の保健師は17人おられ、吹田市と同程度であれば、大阪市保健所には124人の保健師が必要となります。

 新設したコロナ対策の専門グループで体制強化をし、この間16人の保健師を増やしたといいますが、そのほとんどが兼務職員か臨時任用職員という実態で、コロナが収束した後には保健所での職務から、はずれると聞いています。

 270万市民の命と健康に責任を持つ大阪市としては、あまりにも体制が脆弱であり、到底認められません。

 大阪市存続をかけた住民投票では、政令指定都市大阪市のまま、市民の声が届く市政を望む声が多数を占め、大阪市存続が決まりました。

 これは、大阪市の権限・財源は市民のためにしっかり使っていくことを、市民が選び取ったという結果です。

 制度いじりはもういらない。大阪市廃止よりコロナ対策に集中してほしいとの市民の声を真摯に受け止めて、今後の市政運営にあたらなければならないことを申し上げて、反対討論といたします。