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市議団の実績

2018年度大阪市一般会計予算案に対する

井上議員の反対討論

井上ひろし市会議員

2018年3月27日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2018年度大阪市一般会計予算案等に対する組み替え動議に賛成し、原案に反対する討論を行います。

 本市は、市民のくらしを守るべき地方自治体として、政令市の財源と権限を市民本位に活かし、住民福祉の増進に努めるとともに、まちの中から景気回復をはかるために中小企業支援を強めるなど、実効性ある施策を進めていかなければなりません。

ところが、市長が提案した予算案は、市民生活に寄り添う“あたたかさ”が全く感じられない一方で、都構想を蒸し返し、大型開発には前のめりで突き進み、何でも民営化や統廃合で公的責任を次つぎ投げ捨てていくという中身であり、地方自治の本旨から大きく逸脱しているのであります。

 こうした市民不在の予算案は、到底認められません。

 以下、具体に指摘致します。

 第一は、市民のくらし・福祉や教育についてであります。

 まず、国民健康保険についてです。

 本市の国保会計は、後期高齢者医療制度が実施された2008年度から、ほぼ毎年単年度黒字を計上しており、9年間の黒字額の合計は、311億6千万円にものぼります。

 ところが、2017年度は2%の国保料引き上げが行われ、前市長時代の4年間で4%、吉村市政初年度で1%の引き上げと合わせれば、この6年間で7%もの引き上げが行われているのであります。

 福祉局は、来年度一人あたり平均保険料は据え置くとしておりますが、今年度予算における任意繰り入れが135億円であったのに対し、来年度予算案における任意繰り入れは、68億円へと半減させてしまっているのであります。減額した67億円を活用すれば、一人当たり1万円の国保料引き下げが可能ですが、被保険者の負担軽減を一切行わないという姿勢は、市民のくらしぶりへの配慮のかけらもないと言わなければなりません。

 来年度から施行される都道府県単位化においても、あくまで国保料を決定する権限は市町村に委ねられているのであり、大幅に任意繰り入れを減らすことには全く道理がありません。

 市民のくらしを守る立場から、国保料の引き下げに踏み切るべきであります。

 次に、介護保険についてです。

 本市の第7期介護保険料は、17.3%アップの7927円と示されており、これは保険料自体も、また引き上げ額も全国一と言われています。市民生活を守るべき地方自治の本旨に照らせば、極めて不名誉な実態だと言わなければなりません。

 せめて、第6期の保険料水準に据え置くための財源を、一般会計から確保するべきところですが、福祉局は「一般会計を圧迫する」との主張を繰り返すだけで、本市独自の手立てを講じる姿勢は何ら示さず、ただただ市民に負担を求めるばかりなのであります。

 大阪市では、一人暮らしの高齢者の割合が42.4%で、全国平均27.3%より15ポイント高く、要介護認定率も24.1%と全国平均を8ポイント上回っています。

 さらに、低所得者の割合も44%と全国平均の32%を大きく上回っています。

一人暮らしの高齢者や低所得者が多いことは、市民の責任ではありません。一般財源の投入で、保険料の引き上げをやめるべきであります。

 また、住民福祉及びまちづくりにも関わる、コミュニティバスについてであります。

交通局はバスの充足状況について、「必要なバスサービスは確保できている」との一点張りですが、バスの利便性向上や、コミュニティバスの創設・運行を求める陳情書が、何度も議会に提出されていることからも、交通空白地域が市内のあちこちで生じていることは明らかであります。

 新設された都市交通局においては、区に丸投げというこれまでの姿勢を改め、「地域コミュニティ交通網」の確立に責任を果たすべきであります。

 教育についてはまず、生野区で問題になっている「生野区西部地域学校再編整備計画(案)」であります。5つの連合町会の会長の他、17名の学校関係者、地域代表の方々の連署で提出された、学校再編整備計画(案)を元に戻すことを求める陳情書が、教育こども委員会に付託されその後審議されました。

 これだけの地域・学校の代表の方々が、小中学校の統廃合に反対や懸念を示していること自体、関係者の合意が形成されていないことを表しています。

 また、小学校区ごとの基本合意が得られなかったことから、中学校区ごとの「学校設置協議会準備会」を立ち上げて進めていくと、教育委員会が一方的に変更したものの、「統廃合は拙速すぎる」「統廃合ありきの準備会には参加しない」と、多くのPTAや町会が「準備会」に参加しないことを表明しており、全く足並みが揃っていないというのが現在の到達点なのであります。

 文科省も、「学校規模の適正化や適正配置の具体的な検討については、行政が一方的に進めるものではない」と、その基本的な考え方を示していることは至極当然のことであり、今の段階で「実施設計予算」を計上することは、民主主義のルールに反する暴挙と断じざるをえないのであります。

 続いて、各会派からも「教育現場への配慮が欠けている」として厳しい批判が相次いだ主務教諭制についてです。

 「主務教諭」になっても給与が上がる訳ではなく、この制度は結局、昇給停止となる教員を生み出すためのものであることが、質疑を通じて明らかになりました。これでどうして、教員のモチベーションが上がるというのでしょうか。教育委員会は、学校現場を「チーム学校」などと例えますが、逆にチームワークを乱し、教員のモチベーションを低下させるだけであります。

 また、教員においては、「担当する教科の違いや、学校の中での校務分掌の違い、生徒の状況の違い、行政組織と比較しての学校組織の違い」があることの特殊性を踏まえ、「相対評価ではなく、絶対評価の厳正化」を図るべきという、府市統合本部会議での議論をふまえ、職員基本条例において「教員に相対評価は適用しない」とされた経過からも、来年度実施をねらう「上位区分の相対化」は、矛盾に満ちているのであり撤回するべきであります。

 第二は、本市財政を圧迫し続ける大型開発についてです。

 淀川左岸線2期事業に62億4200万円が計上され、いよいよ本体工事に入ろうとしています。

しかし、将来人口や交通量の減少が予測されている中、必要性自体、疑問視されているだけでなく、河川堤防を6kmにわたり開削するという事業は、リスクが高いことから前例がありません。淀川周辺の自然環境に与える負荷が大きく、災害対策にも逆行するものであり中止するべきです。

 超大型船の入港に備えるとしている国際コンテナ戦略港湾についても、44億6700万円が計上されています。

 しかし、肝心の北米航路船舶入港数と取り扱いコンテナ数は、増えるどころか逆に減少し続けていることからもその必要性は皆無であり、これ以上の浚渫はやめるべきであります。

 さらに、万博誘致推進事業に1億4700万円、IR誘致に4700万円が計上されています。当初、万博関連事業費として、鉄道建設も含まれており、文字通り“カジノ万博”として一体に進めようとしているのであります。

 ギャンブル依存症患者の増大につながるカジノへの国民の抵抗感は根強く、これに押されるかたちで国が打ち出した「世界最高水準のカジノ規制」に対し、知事・市長は規制の緩和を求める有様です。市民の健全な消費の足を引っ張るだけでなく、人の不幸を踏み台にして成り立つIRの誘致には、改めて強い反対を表明するものであります。

 かつても大型開発に明けくれ、「経済効果は絶大だ」とバラ色に描き、ひたすら事業を推進していった結果、“財政非常事態”に直面したのであり、結局、市民が莫大な負担を押し付けられることになったのです。

 “カジノ万博”に関しても、鉄道建設や基盤整備をはじめ、気の遠くなるような事業費が必要なのであり、またぞろ将来世代に新たな負担を転嫁するような事態は、絶対に避けなければならないのであります。

 第三は、様々な事業や施設の民営化や統廃合についてです。

 まず、住吉市民病院についてであります。

 “二重行政の象徴”として、急性期総合医療センターとの統合を、強引に推し進めたことが誤りだったことは今や誰の目にも明らかです。患者さんも地域も、そして病院で働く職員も混乱につぐ混乱の中ふり回され続け、ついには地域医療の空白と後退を招きかねない重大な事態に直面していることへの反省の弁は、市長をはじめ推進した方々からは、いまだに聞こえてきません。

 住吉市民病院跡地に、30床の入院・外来機能を有する公的病院を設置することが最も現実的で、市民の願いに応える道なのであり、その決断を早く行うべきであります。

 博物館施設についても経営形態を見直すとして、国内で例のない地方独立行政法人化へ移行することになりました。大阪市は、短期契約である指定管理者制度を導入し、人材の確保や育成などが困難に陥りました。今回の地方独立行政法人化においても、経費削減を迫られることは避けられないのであり、人材の確保や育成にとどまらず、運営等にも影響が及んでいくことは、他の独法化の事例を見れば想像に難くありません。

 市立科学館・市立美術館・東洋陶磁美術館・歴史博物館・自然史博物館を、一つの法人に集約してしまうなどということ自体、それぞれの専門性を無視した乱暴なやり方であり、文化・学術などの継承発展のためには、全くなじまない経営形態だと言わなければなりません。

 本市直営を継続し、貴重な知的・芸術的・歴史的財産を大阪市の責任で守るべきであります。

 最後に、3年前の住民投票で決着済みの都構想、すなわち大阪市を廃止し特別区を設置することを目指して、人もお金もつぎ込む予算案になっている点です。本予算案には、1社も応募がなかった「都市制度による経済効果調査のための予算」が再び計上されていますが、前回の住民投票で都構想の最大の大義としていた「二重行政を廃止する財政効果」を示すことが出来なくなった挙句、「制度の改変による経済効果」なるものへすり替えざるをえなくなったこと自体に、破綻ぶりが表れていると言わなければなりません。

 吉村市長の民主主義を踏みにじる政治姿勢も、この議会でいよいよ明らかになりました。市長は、選挙でうったえたからとして、2度目の住民投票を合理化する弁を繰り返しましたが、住民投票の結果に従わなければならないというのは民主政治の大原則であります。

 さらに市長は、もし特別区設置案が否決されたら、8区の総合区に移行することを予め議決するという基本議決の考え方を持ち出し、「今度の住民投票は事実上、特別区か8区(の)総合区かを選ぶ住民投票になる、今の行政区のままが良いという選択肢はない」とまで公言しました。こんなことは断じてやってはならないと申し上げておきます。

 以上、予算組み替え動議に賛成し、原案に反対する討論と致します。