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市議団の実績

福祉最優先の市政へ

大阪市議会 小原氏、転換求める

吉村市長との一問一答・一般質問要旨

こはら孝志市会議員

2017年11月30日

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一般質問に立つ小原議員=11月30日、大阪市議会本会議

 日本共産党の小原孝志大阪市議は11月30日、市議会本会議の一般質問で、吉村洋文市長に大型開発優先から市民の福祉・くらし最優先の市政への転換を求めました。

 小原議員は、本市財政は「巨額の不要不急の事業を続けながら、負の遺産の清算のために、福祉切り捨て、職員の給与カットなどを行っている」と指摘。夢洲開発にかかわるインフラ整備について、「1期の南ルート鉄道建設に540億円、2期の北ルートには1700億円、ルートを夢洲でドッキングさせると3500億円と巨額の事業費になる」と強調。「財政的にも無謀な夢洲開発、その核である統合型リゾート(IR)・カジノの誘致はやめるべきだ」とただしました。

 小原議員は、巨大開発の一方で、市民の安全・安心を守る南海トラフ震災対策の防潮堤耐震化は10年計画の3年が経過しても計画延長14.4キロに対して1キロしか進捗(しんちょく)していない。身近な公共投資を後回しにした、巨大開発・都心偏重の街づくりの弊害が今各所に現れている」と批判しました。

 小原議員は、保育所待機児童、保育士不足の解消、大学統合の中止、国民健康保険の府県化に伴う値上げの中止などを求めました。

(2017年12月3日付しんぶん赤旗)


20171130日一般質問 日本共産党 大阪市会議員団 こはら孝志

一般質問通告

1.本市財政運営について

@巨大開発回帰で再び財政危機に陥れるのではないか。

A今後10年間の財政収支の見通しについての所見を伺う。

 

2.夢洲まちづくり構想について

@南回りの鉄道建設の費用負担はどうなるのか。

A夢洲−咲洲間の鉄道料金が割高になる事への所見を伺う。

B北回りの鉄道建設の費用負担はどうなるのか。

C集客人口、11,500万人、22,700万人の見通しは立っているのか。

D無謀な夢洲開発の核―IR・カジノの誘致はやめるべきではないか。

 

3.南海トラフの震災対策について

@防潮堤の耐震化をどう進めるつもりか。

 

4.つり合いのとれた街づくりについて

@都心部の人口増と周辺部の人口減という状況についての所見を伺う。

A大正橋−鶴町間の地下鉄建設に、市としての責任があるのではないか。

 

5.府・市の団体統合について

@これまでの団体統合で、機能強化などプラス効果があったのか。

A大学統合でどのようなプラス効果があるのか。

B大学統合、つまるところリストラ計画そのものではないか。

 

6.国民健康保険について

@保険料が高すぎるとの認識はあるか。又、府県一本化により値上げはやむを得ないとの考えなのか。

A一般会計からの任意繰り入れを継続すべきではないか。

 

7.保育所の待機児童の解消について

@就学前まで預けられる「認可園」を増設するべきではないか。

A本務保育士を増やし、公立保育所の利用定員を元に戻すべきではないか。

  

 

●こはら孝志議員

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、当面する諸課題について吉村市長に質問いたします。

 

1.本市財政運営について

 @巨大開発回帰で再び財政危機に陥れるのではないか。

 

 まず本市財政運営についてであります。

 申し上げるまでも無く、1990年代、景気対策と称して、さまざまなムダな大型開発を繰り返して、それらがことごとく破綻し、その結果、巨額の負の遺産が生じて、今なおその解消に苦しんでいるところであります。

 ところが、このところの大阪市の打ち出している施策をみると、やれ夢洲IR・カジノだ、万博だ、なにわ筋線だ、淀川左岸線延伸部だと、巨大プロジェクトのオンパレードといった状況ではないですか。吉村市長あなたもですかと言わざるを得ません。

 ふたたび、大阪市の財政を危機に陥れるおつもりでしょうか。お聞きします。

 

 

◆吉村洋文市長

 大阪の未来を成長させていくためには、起債の管理、それから借金の管理、残高の管理、起債のコントロールというのをしっかり適正に行いながら、必要な投資を行う事が重要だと思っています。

 そうした投資によりまして大阪経済の活性化、それから将来の税収の増加、そしてそれが回って住民サービスの拡充につながるという好循環をめざしていくべきだというふうに思っています。

 そうした考え方の元で、なにわ筋線、淀川左岸線の延伸部といった広域的な大都市大阪の都市インフラを着実に整備させていきます。

 それから、MICE誘致による観光の基幹産業化など様々な成長産業の育成を図るといったことを、大阪府市一体になって取り組んで、大阪の成長の実現に向けた取り組みをすすめていきます。

  特に新たな国際観光拠点をめざします夢洲におきましては、世界最高水準の成長型IRの誘致をめざしますとともに、平成3011月に開催地が決定されます日本万国博覧会の誘致の実現をめざして、大阪の成長の起爆剤にしていきたいと思っています。

 なにわ筋線や夢洲において市が整備する必要があるものについては、財源の多くを起債に依存することになります。大事なことは起債のコントロールだと思っています。起債の残高、総額については絶対に増やさない、借金は減らし続けるという大前提にのもとで、将来世代に負担を先送りすることがないように財政の健全化への取り組みをすすめているところであります。

  前橋下市長就任時の平成23年度末には約5兆円だった市債残高について、現在毎年減らし続けておりまして、平成28年度末には約7千億円減らして、約43千円にまで着実に減らしてきたところであります。

 今後とも限られた財源のもとで、一層の選択と集中、無駄をなくしていく、僕自身の市長報酬4割削減もずっと続けていく。様々な行政の無駄もなくしながらですね、そして、集中的に投下すべきところには投下するという姿勢。起債をコントロールしながら大阪の成長をめざしていくということを図っていきたいと考えています。

 

 

●こはら孝志議員

 市債の残高をコントロールしていくと言われております。しかしながら、昔、大失敗した時、あの時もですね、ニーズを的確に判断しながら進めていく、またリスクもとっていく、そういいながら、結局は多大な負債を市民に残したものであります。

 

 A今後10年間の財政収支の見通しについての所見を伺う。

 

 ともかくこの間、国際コンテナ戦略港湾や淀川左岸線2期など巨額の不要不急の事業を続けながら、かつての負の遺産の清算のために、福祉を切り捨て、職員の給与をカットし、遊休地を売却、基金を取り崩して、何とかしのいできたのではないですか。

 今年2月に出された今後10年間の大阪市財政の粗い収支概算では、前半の5年間の収支不足の年平均は161億円で、それが後半の5年間では41億円になるなど、やっと好転のきざしがみえているところではありますが、そうはいっても、10年間の収支不足額累計は1,010億円、巨額であります。

 そして、この計算に見込んでいない地下鉄の民営化に伴う固定資産税などのプラス要因はありますが、これに倍するマイナス要因もあるのではないでしょうか。なにわ筋線の市民負担590億円、万博経費250億円から300億円等は、全く織り込まれておりません。これに夢洲開発にかかわるインフラ整備等の費用を加えると、1千億円をはるかに超える巨費となります。

 今後10年間の財政運営について、どのように考えているのでしょうか。お聞き致します。

 

 

◆吉村洋文市長

  先ほど、市の起債をコントロールしながら都市経営していくことが重要だと申しあげましたが、市の財政に対する認識としては私は非常に厳しい状況にあるというふうな認識を持っているということは間違いありません。大阪市の財政事情というのは、非常に厳しい中でも起債をコントロールし投資をしていくべきと、そして無駄な支出をなくしていくべきだという大きなところはそのとおりであります。

  財政収支の概算につきまして、将来世代に負担を先送りしないという考えのもとで、収支改善の目安を一定の前提により試算したものでありまして、これ自体が市の財政計画といったものではありません。この試算においては税収であったり、金利の動向のほか、今後行います新規事業や国保の累積赤字等の財務リスクが未織込みとなっているなど、多くの不確定要素が含まれている事から、相当の幅を持って見る必要があると認識しています。

 そういった前提でありますが、この試算の結果から、当面は通常収支不足の解消には至りませんが、期間の半ばには収支が改善するという傾向にあることがみて取れます。前橋下市長時代の本格予算を組んだ頃は、この粗い試算については10年間で3,232億円の通常収支不足の状況でしたが、292月の直近ではこれが1,010億円、10年間で1,010億円という数字になっているところでもあります。

 起債残高についても今後着実に減少させていく必要があるという、そういう方針のもとですすめています。

 また、一般会計の決算状況につきましてもこれまで28年連続の黒字になっています。そうした状況の中で、大阪の成長戦略に必要な事業については、これは一度に多額の負担が生じるのではなくて財源の多くを起債に依存することになりますけれども、先ほど申しあげた方針のもとで、借金全体の動向も注視しながら取り組んでまいります。

 また、通常収支の均衡に向けまして、今後とも全市的に優先順位付けをきっちりと行って、国、府、民間等、関係先との役割分担についても適切に取り組んでいきます。

 それから、民間でできることは民間にやってもらう。民間の活力をできるだけ使っていくというのも私の市政の方針であります。いずれにしましても大阪の成長を図って大阪が経済的に成長する。そして税収を増やして、最終的には住民サービスに。天からお金は降ってきませんので、それを住民サービスに回していくという活気ある大阪を目指して行きたいと思います。

 

 

●こはら孝志議員

 しかし相当厳しい、これは言えると思います。そして、大きなリスクをはらんでいるのではないでしょうか。特に夢洲開発にかかるインフラ整備等の費用はいったいどうなるのでしょうか。いまだ不透明なままであります。

 

2.夢洲まちづくり構想について

 @南回りの鉄道建設の費用負担はどうなるのか。

 

 府市、経済界で取りまとめた夢洲まちづくり構想では、早ければ2023年まで位の1期で、IR・カジノを誘致する事になっていますが、インフラ整備としては、咲洲コスモスクエアから夢洲までの、いわゆる南回りの鉄道建設が必須とされています。地下鉄4号線の延伸という事になりますが、鉄道事業者はこの間の免許を持っている港湾局の外郭団体・OTSという事になります。例え1駅であれ、設置から運営まで事業主体はOTSという事であります。

 建設費用は既に444億円が執行済みであり、残り540億円ですが、内、国費64億円、市の負担は一般会計64億円、埋立事業会計202億円という事になる訳であり、この埋立事業負担金、俗に開発者負担金202億円について、IR・カジノ事業者に肩代わりしてもらうかどうかといった事が、この間の市会の議論で色々言われて来たと思います。

 市長、現時点でこの問題はどうなるのでしょうか。お答えください。

 

 

◆吉村洋文市長

 地下鉄中央線の延伸については、公共として整備するものでありますが、鉄道の事業許可を受けています事業スキームを前提としますと、IRが立地した場合、当該民間事業者が鉄道整備の受益を大きく受けるものでありますことから、埋め立て開発事業者に、いわゆる港営会計の部分が負担する部分を基本に、受益者である民間事業者に負担を求めてまいります。

 今後、IR実施法等によって明らかになる納付金の率や入場料の金額といった諸条件を加味したIRの事業性を踏まえて、行政と民間との役割を整理し、具体的な事業スキームの検討をすすめていきます。

 

 

 A夢洲−咲洲間の鉄道料金が割高になる事への所見を伺う。

 

●こはら孝志議員

 まだまだ、はっきりしていない。これが本当のところではないでしょうか。少なくとも一般会計の64億円は負担する事が必要であります。そうして、残り210億円はOTSが大阪市などから資金借入を行い、料金収入から償還していく事になる訳ですが、現在、地下鉄4号線、本町からコスモスクエアまで3区料金の280円です。単に夢洲までの市営地下鉄の延長なら、本町からの料金は280円のままであります。

 これでは別会社のOTSとしては、借入金の返済はおろか、運転手などの給料や動力費すら出てきませんから、どうしても初乗り料金をオンする必要があると思います。これを仮に180円加算するとすれば、本町―夢洲間は460円になります。大阪駅−USJ駅間が、JRですが180円、これから見ると随分高いですね。JR大阪駅−三宮、神戸でも同じ410円です。大阪から神戸へ行くよりまだ高いわけです。

 こんな事で、果たしていいのかどうか。市長の所見を伺います。

 

 

◆吉村洋文市長

 コスモスクエア駅から夢洲までの間の北港テクノポート線のうち、レールや駅舎、車両、設備などインフラ外施設の事業費については、鉄道事業許可取得時の事業スキームを前提としますと、埋め立て開発事業者が負担する部分、鉄道事業者が運賃収入により負担する部分があります。

  地下鉄中央線の延伸である北港テクノポート線は、いわゆるOTSが鉄道許可を取得しております。地下鉄中央線とは鉄道事業者が異なりますため、地下鉄とは別料金により事業の採算をとる必要があります。

 現在夢洲の土地利用計画など、計画当初の想定から事業を取り巻く状況が大きく変化している中、鉄道料金については関係者間での事業スキームや負担についての調整、鉄道の需要予測なども踏まえた上で、鉄道事業者の事業収支に基づき、今後検討することになると考えています。

 

 

●こはら孝志議員

 家族連れでリゾート施設に来てもらう事を考えるなら、こういう事ではいかがなものかと思いますよ。それに初乗り料金を取ったとしても、採算ベースに乗るのかどうかもわかりません。

 元々、北港テクノポート線は夢洲に常住人口45千人、就業人口3万人の街をつくるという事で起案されたものでありまして、リゾート施設のために、フル規格の地下鉄を通すというのは本来考えられない事ではないでしょうか。

 

 B北回りの鉄道建設の費用負担はどうなるのか。

 

 それで、財政運営上で一番の問題は、おおむね2026年以降の2期で、北ルートの鉄道建設が前提とされている事であります。「夢洲への鉄道アクセスの技術的検討について」で示されたのは2つの案で、その1つはJR桜島線を延伸して夢洲に至るルートで、事業費は1,700億円。

 もう一つは中之島新線を延伸して、新桜島駅で乗り換えになりますが、夢洲からの北港テクノポート線とドッキングさせる案で事業費は3,500億円と巨費であります。

 市の負担は、仮になにわ筋線並の負担率とすれば、それぞれ303億円、623億円となります。ぼう大な金額であります。これは夢洲のカジノ民間事業者に出させる訳にはいかないと思うのですが、その辺りはどのように考えているのでしょうか。答弁を求めます。

 

 

◆吉村洋文市長

 鉄道につきましては、本年8月の夢洲まちづくり構想において、夢洲駅を中心として北ルートと南ルートの2方向によるルートを想定しております。

 その内、南ルートについては先ほども答弁しましたとおり、埋立開発事業者が負担する部分を基本に、受益者である民間事業者に求めていく事とし、具体的な事業スキームを検討してまいります。

 一方で北ルートの実現に向けては、今後そもそもの事業性の検討に加え、鉄道の事業主体や運営主体を含め、国との関係者との協議、調整を行い、その具体化について検討していくものになると考えています。

 いずれにしましても、北ルートの鉄道については、IRを核としました1期開発に続きます、いわゆる2期開発以降における、段階的な土地利用の状況に応じて整備を検討していきます。

 

 

●こはら孝志議員

 まだまだこれからという事でありますが、夢洲まちづくり構想では、2期は最短で2026年からで、それまでに鉄道は通っていなければならない訳ですから、工事期間を考えるとそう遠くない話なのでお聞きさせていただきました。

 

 C集客人口、11500万人、22700万人の見通しは立っているのか。

 

 それで夢洲を国際観光拠点にすると称して、1期で集客人口1,500万人、2期は2,700万人を見込むという、およそ大風呂敷としか言いようのない事がうたわれている訳ですが、1期はカジノを核とするIRを誘致すると言われていますが、どのようなリゾート施設なのか、全く五里霧中といった状況であります。

 それが2期に至っては、その延長でというだけで、何にも示されていないといっていい状況ではないですか。にもかかわらず不思議と集客人口は1,500万人、2,700万人と具体的であります。私には絵空事のようにしか思えないのですが、市長はこういう集客について、どういう見通しをもっているのでしょうか。

 

 

◆吉村洋文市長

 夢洲まちづくり構想におきましては、昨年度に行いました夢洲における国際観光拠点形成に向けた事業アイデア募集に対する民間事業者からの提案内容を参考に集客人口を見込んでおります。これは、内容は10社以上から応募されている、その民間事業者からの提案内容を参考に集客人口を見込んでいる訳であります。

 第1期の開発についてはIRを核としてMICE施設やエンターテイメント施設、商業・飲食施設、宿泊施設など。第2期開発については、第1期に導入されたエンターテイメント機能の拡充やレクリエーション施設の導入等、産業、ビジネス機能やその関連機能の導入を想定し、そうした施設に応じた集客人口を試算したものであります。

 外国人観光客だけでなく、ビジネス客やファミリー層などを含め、内外の幅広い層をターゲットとしております。

 夢洲は、航空からのアクセスも良く、広大な土地を有し、大きな投資を呼び込む事が出来るなど、ポテンシャル、優位性とも高レベルにあり、魅力のある立地だと考えてます。

 こうした立地特性を活かして民間事業者の知恵と工夫を最大限活かし、国際競争力の高い、世界最高水準のIRを実現させることで、多くの来訪者を大阪に呼び込む事が出来るものと考えています。

 

 

 D無謀な夢洲開発の核―IR・カジノの誘致はやめるべきではないか。

 

●こはら孝志議員

 よくわかりませんが、大阪IR基本構想というのが発表されておりますね。ここでは、夢洲を世界で類を見ないエンターテイメントを体感できる空間にするなんて言っている訳ですが、いったいどういうものなのか、当局に聞いても誰も具体的には思いつかないという事ですから、つまるところ集客の要はカジノという事にならざるをえないのではないかと思います。そして、カジノの収益で、他のリゾート施設の費用を賄うという事になるでしょう。これでは多くの外国人観光客を呼び込む事は出来ないと思います。

 大阪IR推進委員の一人である大阪商業大学の学長、谷岡一郎氏が言われるように、外国人観光客はせいぜい1割、圧倒的に日本人観光客や大阪周辺の一般市民がカジノのターゲットという事にならざるをえないという事ではないでしょうか、大阪経済にとってプラスになるどころか、カジノで負けた分、消費が減って、むしろマイナスとなる上に、一層ギャンブル依存症問題が深刻になるだけではないですか。

 韓国のカンウォンランドのような惨たんたる状況になれば、元も子もないことになってしまいます。財政的にも無謀な夢洲開発、その核であるIR・カジノの誘致は、やめるべきではないでしょうか。答弁を求めます。

 

 

◆吉村洋文市長

 IRの誘致につきましては、プラスの面を最大限に引き出して、課題をできるだけ押さえていく。そしてその課題について大きな、僕はギャンブル依存症だと思ってますが、それについては既に日本に多くありますので、これについても正面から取り組んで、全体の数、絶対数を減らしていく事が重要だと思っています。

 IRは民間、民設民営の事業でありまして、観光、それから地域経済の振興、カジノ収益の社会還元を通じた公益、この実現を目指すものでもあります。

 夢洲にIRを核とします国際観光拠点、オールインワンのMICE施設が形成されることで、大阪を訪れる人であったり、国際会議、大規模展示会の開催、大幅な増加が見込まれているところでもあります。

 IRは国内外から新たに人、モノ、投資を呼び込むものであります。第170㏊の民間開発によりまして、建設投資による経済波及効果は7,600億円、雇用の創出効果は5.1万人、運営による経済波及効果は、年6,900億円、雇用の創出効果は年8.3万人と試算しております。

 非常に大きな効果が見込まれ、本市の財政にも寄与するところでもあります。大阪にとって大きな成長に資すると考えています。

 一方、依存症については、直近の国の調査においてこの一年間でギャンブル依存症の可能性がある方は、全国で70万人と報道されています。例えばシンガポールでは、IR導入前にギャンブルも含めた総合的な依存症対策を行うための国家依存症管理サービス機構、通称NAMSを設置し、これは僕自身も見に行きました。IR導入年の2010年には依存症治療に関する診療期間としてNAMSクリニックを開設するなど、国を挙げて有効な対策を取る事で、IR立地前の2005年の有病率は4.1%。これが直近の調査では0.7%迄減少させているところでもあります。日本においても見習うべき事例だというふうに思っています。

 本市においても、予防教育、啓発の実施や、発症、進行、再発の各段階に応じた防止、回復のための支援など、実効性のある対策を府と一体になって実施していきます。

 IR誘致をきっかけとしまして、国の規制や海外の先進事例に加えて、大阪独自の対策も講じる事で、カジノは元より、既存に今ありますギャンブルに対する依存症の最小化に向けて全力で取り組んでいきます。

 民間の活力をどんどん活かして、プラスの効果を最大限引き出すとともに、ギャンブル依存症といった懸念事項に対しては、正面から取り組む事で、大阪で国際競争力の高い世界最高水準のIRの実現に努めていきます。

 

 

●こはら孝志議員

 市長は言いましたけれども、ギャンブル依存症の深刻化や治安の悪化などの懸念材料は払拭できないと思います。第一、IR・カジノに対する府民の反対の声は大きく根強いものがあるではありませんか。

 最近の読売新聞の府民向けの世論調査では、賛成30%に対し、反対57%で、昨年の同じ調査より反対は5ポイントも増えているという事でありますから、重ねて誘致はやめるよう申し上げておきます。

 

3.南海トラフの震災対策について

 @防潮堤の耐震化をどう進めるつもりか。

 

 それで、巨大開発回帰といえるような状況の中で、その一方、やれ副首都構想だと、平時から首都の代替機能を持つようにするとしながら、待ったなしの南海トラフの震災対策は遅々として進んでおりません。

 中でも、防潮堤の耐震化は、2016年度末10年計画の3年が経過しているにも関わらず、計画延長、14.4km中わずか1kmしか進捗しておりません。

 事業費ベースでも総事業費430億円中46億円の執行にとどまっています。このままでは2023年の計画年次までにはとても完了できるとは思えません。いったいどうするおつもりでしょうか。お尋ねします。

 

 

◆吉村洋文市長

 遅々として進んでいない訳ではありません。本市では、堤防の耐震対策を、南海トラフ巨大地震対策の大きな柱としまして、大阪府と歩調を合わせながら取り組んでおります。

 平成26年度から10年間で対策を完了すべく取り組んでいるところです。昨年度までの3年間については、主に全体計画を精査するための堤防耐震性能の調査や、工事を実施するための設計を優先的に行ってきました。現在これらの成果を踏まえて、計画的に工事を進めています。

 今年度末では、延長2.1キロの耐震対策が完了する予定です。また10年間の内、前半の5年間では対策予定の4.2キロメートルについて、概ね実施できる見込みであります。最終的には10年間で14.4キロの耐震対策を実施する予定です。

 尚、対策の実施には、多額の事業費が必要であります。この間財源となります国からの交付金の配分は、本市の要望額に比べて充分とは言えない状況であるため、これまで大阪府をはじめ全国の関係自治体と連携し、国に対して防災、減災にかかる予算確保や、財政支援制度の拡充について要望してきているところであります。引き続きこのような要望活動を通じて、財源の確保に努めていきます。

 さらに国からの交付金に加えて、防災減災のための地方単独事業を対象とする起債制度であります、緊急防災減災事業債なども活用しながら事業を進めてきています。

 今後もこの制度を活用する事によって、財源の確保をはかり、目標年次であります、平成35年度までの完了に向けて、着実に対策を進めていきます。

 

 

●こはら孝志議員 

 着実に行っていく、完了させるということですが、これまでの経過を見るとにわかに信じられませんね。元々、この防潮堤の耐震化については、対策延長32.7km、事業費780億円の計画だった訳です。大幅に縮小した計画ですら出来るかどうかわからないようでは市民の安全・安心は守ることはできません。そういう身近な公共投資を後回しにした、巨大開発・都心偏重の街づくりの弊害が今、各所に表れています。

 

4.つり合いのとれた街づくりについて

 @都心部の人口増と周辺部の人口減という状況についての所見を伺う。

 

 ここ数年の人口の推移をみるとはっきりしています。今年101日の推計人口と5年前の2012101日の推計人口との比較では、増えているのは、交通至便の中心部の12区であり、減っているのは、いわゆる周辺行政区の12区であります。

 特に伸びの大きいのは、中央区、西区、北区、浪速区の都心4区で、逆に減少率の高いのは西成区、大正区、住之江区、港区といった状況であります。

 伸び率の高いところでは小学校の教室が足りないとか、保育所の待機児童を多く抱えているといった問題が生じ、人口の減少に歯止めがかからない行政区では、商店街などの疲弊が顕在化するといった状況であります。

 こういう状況について、市長はどういう所見をもっているでしょうか。

 

 

◆吉村洋文市長

 本市の人口は、近年の都心回帰の影響等によりまして、全体として増加傾向にあります。とりわけ大規模マンションが増加している市内中心部においては、児童生徒が急増している事から、その対策が急務になってます。その為、市内中心部の児童急増対策を検討しますプロジェクトチームを設置するとともに、待機児童を含む入所保留児童の早期解消をはかるための特別チームを設置してまして、個々の地域事情をふまえた対応策に取り組んできているところです。

 人口の現状分析と、将来展望を提示します「大阪市人口ビジョン」において、中長期的には人口は減少に転じ、このまま推移すれば2040年には232万人まで減少すると、そういった推計がされています。

 またその増減ですが、市内一様ではなくて、2040年にかけて中心部では引き続き増加する区があるものの、多くの区では減少すると見込んでいます。

 そこで将来に渡って成長する豊な大阪を実現するためには、この人口減少に歯止めをかけるとともに、経済を活性化させる取り組みが必要だと思っています。

 「大阪市まち、人、しごと創造総合戦略」の元で、魅力度、活力あふれる大阪、若者、女性が活躍できる社会。健康で安心して暮らし続けられる地域づくりを目指して、総合的な施策を進めているところであります。

 それから、区のそれぞれの特性や地域の実情に即した街の活性化をはかるために、「西成特区構想」であったり、「咲洲ウエルネスタウン計画」であったり、「築港・天保山街づくり計画」といった、様々な点について、区長を中心としながら地域資源を活用した、魅力ある街づくりを展開していきたいと思っています。

 

 

●こはら孝志議員

 人口減少に歯止めをかけると言われましたが、いろいろ言われましたけれども何ら具体性は感じません。

 私の選出区の大正区では、10年前の2007101日には人口、71,874人で少ない順で5番目だったものが、今や64,355人と最小区となってしまいました。事業所数や小売事業者数の減少率も市内平均を大きく上回ると同時に、何より年間小売商品販売額は、全行政区中最も低くなっているという事であります。

 

 A大正橋−鶴町間の地下鉄建設に、市としての責任があるのではないか。

 

 なんといっても大正区は交通の利便性において、行政区の入り口までしか鉄道が整備されておらず、他の行政区に比し大きく劣るという事があるのではないでしょうか。

 1989年の運輸政策審議会、第10号答申で地下鉄長堀鶴見緑地線の内、2005年までに着手適当とされ、後回しにされた大正橋−鶴町間は、先行区間の開通後直ちに着工されるべきところ、もう20年も経つのに全く放ったらかし状態であります。

 大阪市はこの路線建設に責任があるのではないでしょうか。市長の見解を求めます。

 

 

◆吉村洋文市長

 大規模開発を進めろというのかやめろというのか、ちょっとわかりにくいところではあるんですが、確かにこれは条例の計画路線に位置づけられています。で、現在ですね、大正区においては専用レーンやバス優先信号の設置、バス停留所を車道に張り出した形とするなど、スムーズな運行を確保する都市新バスシステムを、昭和63年に導入しまして、朝ラッシュ時間帯で約1分〜2分間で、高頻度でバスを運行しており、梅田、難波、天王寺の主要ターミナルへ接続するなど、現状の交通需要にも対処しており、また、交通利便性も確保されているというふうに考えています。

 このような状況の中で、7号線の延伸を含みます未着手の地下鉄条例路線については、大阪市鉄道ネットワーク審議会において、事業化方策について審議され、平成268月に答申が出されたところであります。

 その中で、第7号線の延伸は、収支採算性が確保出来ない結果が示されました。収支採算性を確保するためには、例えば13.5万人と予想されます需要が4万人となる必要がある事に加え、加算運賃60円、及び毎年約5.4億円の運営補助の導入を行う必要があるなど、現時点で地下鉄の整備は極めて厳しいものと考えています。

 

 

●こはら孝志議員

 我が党議員団は、市民にとって必要な開発を否定した事はありません。また、大正区の、この7号線の延伸に関しては、今の市長のご答弁、非常に冷たいものであったと思います。

 だいたい大阪市鉄道ネットワーク審議会は「財源、収支採算性」を検討したものであり、公共交通の要である、その必要性は全く考慮されておりません。市長、先ほども申しましたが、大正区の人口減少の原因は交通の利便性の低さにあります。

 区民からは「せめて大正区役所まで地下鉄を伸ばして欲しい、そうなれば街づくりが大きく前進する」など、待望する区民は多くいらっしゃいますし、なにより終点である鶴浜にはIKEAをはじめとした集客施設、未活用の土地が多くあります。鶴町には沢山の住民もいるんです。人の住んでいない人工島に鉄道をつくるよりも7号線や8号線を整備し周辺区の交通の利便性を高め、それがひいては地域の活性化に大きく寄与すると指摘しておきます。

 こういう中で、市バスが唯一の区民の足という事になりますが、路線の統廃合や、減便により、「ギュウギュウ詰め」、乗客の積み残しなどもありまして、サービスの低下が現れています。市バスの改善もされるよう強く求めておきます。

 

5.府・市の団体統合について

 @これまでの団体統合で、機能強化などプラス効果があったのか。

 

 さて、この間、橋下市政以来、都構想の地ならしといいますか、二重行政の解消と称して、住吉市民病院の廃止・統合、特別支援学校の府への移管、信用保証協会の統廃合等が進められて来ましたが、何か機能が強化されたり、前向きの言わばプラス効果はあったのかどうか、市長の所見を伺います。

 

 

◆吉村洋文市長

 広域機能を有します大阪府と大阪市が狭い府域の中で、大阪トータルの視点が不充分なまま役割分担を明確にする事無く、それぞれの施策を行って来たこという事が、二重行政などの非効率を生み出しておりまして、こういった府市の連携不足が大阪という大都市のもつ強みを充分に発揮できてこなかった一因だというふうに思っています。

 二重行政解消に向けた取り組みとしては、平成2312月に従前の府市統合本部が設置されてから、現在の副首都推進本部に至るまで、市長と知事が強力に密接に協力をしあい、方向性を確認しながら継続して進めてきたところであります。

 これまで、府市消防学校の一体的運用、府市の信用保証協会の合併、市内府営住宅の市への移管、市立特別支援学校の府への移管や府市の研究所のそれぞれの統合というような実現したところであります。

 これまでの取り組みを通じて、例えば議員指摘の保証協会の合併についてみれば、基本財産規模の拡大に加えて、経営の効率化により、経営基盤がさらに充実されることで、安定的な保証が推進されています。

 また、統合後の市域分の保証承諾総額について、直近の平成28年度は4,131億円となっておりまして、統合前の平成25年度の3,192億円と比べて一千億円近く増額している事から、中小企業の方々の資金ニーズに対応出来ているものと考えています。

 また、市立の特別支援学校の府への移管によりまして、教育目標の統一や、施策の一体的実施によります大阪の特別支援教育の充実がはかられています。

 加えて教員の人事交流が可能になり、より一層適材適所の配置が行われ、教員間でのノウハウの共有が行われているところであります。

 またご指摘の住吉市民病院については、平成304月開院を予定しています、大阪府市共同住吉母子医療センターへの機能統合によりまして、小児救急医療のさらなる充実や最重症・合併症妊産婦への対応が強化できる事、医療資源の集約化、重点化に伴う小児周産期の医療体制の強化充実をはかる事が出来る事、イニシャルランニングコスト及び、今後の運営交付金の抑制などが期待できるものであります。

 二重行政を解消することによって、行政の効率化だけでなくてですね、都市機能の強化、住民サービスの向上をはかることが期待出来るというふうに考えておりまして、今後も府市それぞれが別々ではなくて、府市連携への取り組みについては進めて参りたいと思っています。

 

 

●こはら孝志議員

色々言われましたが、住吉市民病院は混乱の極みであります。

信用保証協会に至っては、なるほど一般保証が増えたとおっしゃられておりますが、肝心の小規模事業所対策としての制度融資はガタ減りではないですか。銀行への預託金は、大阪市は2013年度945億円だったものが2016年度803億円に、大阪府は同じく4,018億円だったものがなんと2,710億円にまで下落しているではないですか。

プラス効果どころか、まさにリストラそのものであります。

 

 A大学統合でどのようなプラス効果があるのか。

 

そして、これからいよいよ、大学の統合問題が焦点になってきました。

2012年に府市統合本部で、府大と市大の統合と統合後の新たな大学づくりの議論がスタートしましたが、201311月の市会で大学統合案件は否決、その後も第2期の中期目標の変更の際の付帯決議では「プレゼンス(存在感)が向上されなければ統合の意義は無く、結論のみを求めるような進め方はあってはならない」と決議されました。

ところが今回の第3期の中期目標変更案では、平成344月に新大学をスタートさせるというスケジュールが決められているものの、肝心の大学統合のメリットについては、ハッキリとした提示がありません。

市長は両大学の統合でどのようなプラス効果があるとお考えですか。

 

 

◆吉村洋文市長

少子化がすすむなか、大学を取り巻く環境というのは非常に激化しているところです。こうした厳しい大学間競争を勝ち抜く大学、そして選ばれる大学になるというために、大学の価値をさらに高めていく必要があります。

また大学を設立します府・市の側においても、グローバル化がすすみ、都市間競争が激しくなるなか、大阪の都市機能を高める必要もあります。都市の活力を維持・向上していくうえで、大学に求められる役割は重要となってきます。

市立大学・府立大学の統合によりまして、スケールメリットや、両大学が有するリソースを最大限に活かして、教育力・研究力・地域貢献力の向上をはかっていくとともに、新たに、この間、府・市・両大学からなります、新大学設計のタスクフォースにおいて検討してきました2つの機能、大阪の都市問題の解決を目指す「都市のシンクタンク機能」、それから大阪の産業競争力の強化をはかる「技術インキュベーション機能」の充実・強化に取り組んでいきます。

従来からの教育・研究・地域貢献の基本の3機能に加え、新たな2機能を付加することで、大学のプレゼンス向上をすすめるとともに、大阪の「知の拠点」として、大阪の発展を一層牽引できる大学の実現ができると考えています。

 

 

 B大学統合は、つまるところリストラ計画そのものではないか。

 

●こはら孝志議員

市長の答弁は、統合によるスケールメリットなどと言われるだけで、全く具体性がありません。メリットなど無いということの証ではないでしょうか

そもそも大学統合問題は、橋下前市長が、「東京ですら140億円のキャッシュしか出していない。大阪では府と市で合わせて200億円。大阪はそこまでの大学を抱える必要があるのか」と検討が始まった経緯があります。

そしてこれ以降、大学の運営交付金は、府市ともに徐々に減らされてきているではありませんか。その上、統合して重複学部・研究科の再編・集約化をはかり、キャンパスもまとめると言う訳ですから、他の統合事例と同様、リストラ計画そのものではないかと言わざるを得ません。

この点での市長の明確な答弁を求めます。

 

 

◆吉村洋文市長

リストラ計画ではありません。大学統合は、業務の効率化・経費削減を目的に行うものではありません。先ほども述べましたけれども、両大学のリソースの最大限の活用と、教育・研究機能の強化と、新たな2機能の充実、大阪の「知の拠点」として、大阪の成長に寄与する日本一の公立大学をつくることを目的としています。またそこで、多くの大阪の若者が学んでいただきたいと思っています。

新大学における運営費交付金の財政支援については、現状の水準を維持しながら、引き続き大学における取り組みを継続させることで、適正に行っていきます。統合効果として生まれた財源については、新大学の取り組みに回して、大学の機能向上につなげてもらえたらと考えています。

新たな投資については、そのメリットやリターンを具体的に示せるものについて、判断を行っていきます。

 

 

●こはら孝志議員

市長は、大学統合は経費削減が目的ではないと答弁されましたけれども、この間、大学の運営交付金が徐々に減らされてきたことは、まぎれも無い事実ではありませんか。

しかも、新大学では交付金などの支援を適切に行っていくということで、今の漸減(ぜんげん)傾向を引きつづき続けて行くと言っているに等しいではないですか。

大阪は他都市と比べて、決して大学が多いわけではありません。人口や経済規模からすると、むしろ少ない位だと言わなくてはなりません。首都東京と比べるのはおこがましい限りですが、大学の数、定員においても天と地ほどの差があるということは言うまでもありません。曲がりなりにも首都の代替機能を備えるなどと言っているわけです。

大学のリストラなど、もっての他であります。キッパリと統合はやめるよう申し上げておきます。

 

6.国民健康保険について

 @保険料が高すぎるとの認識はあるか。又、府県一本化により値上げはやむを得ないとの考えなのか。

 

さて、市民の暮らしに関わっていくつかお聞きいたします。

まず、国民健康保険についてであります。

大阪市はこの6年間で4回、合わせて7%もの値上げを行い、40歳代の夫婦と子ども2人の4人世帯で所得200万円の場合、2017年度の保険料は介護分を含めて年37万円、所得のおよそ2割にも達するものになっており、「払いたくても、とてもじゃないが払えない」と、悲鳴が上がっています。

こんな中、来年4月から国保法の改定によって、国民健康保険が府県に一本化されますが、大阪府は10月、大阪市が行っている136億円の任意繰入を入れずに計算する「統一保険料」方式では、2017年度国保料は2016年度に比べて一人当たり6.74%、7,870円、4人世帯で31,480円高くなるとの試算を示しました。

先日の決算委員会で吉村市長は、「府の考えに沿った対応をすることが必要だ」として、何か値上げはやむを得ないかのような答弁をされました。

そこでお聞きしますが、市長にあっては、今の国保料は市民に耐え難いほど高いものになっているという認識はないのでしょうか。そして、国保法改定にともなう保険料の値上げは仕方がない、市民は甘受すべきだとお考えでしょうか。合わせてお答え下さい。

 

 

◆吉村洋文市長

国民健康保険につきましては、その事業運営を、保険料と国庫支出金等で賄うことが原則でありまして、事業を安定して運営していくためには、被保険者にも応分のご負担をお願いせざるを得ないというような状況であります。

現在の保険料については、平成25年度以降、受益と負担の適正化を図る観点から、モデル世帯における収入に対する保険料の負担割合を、府内市町村並みとするように改定することを基本としています。

国保の都道府県単位化にあたりまして、大阪府においては、府内市町村の保険料は、被保険者間の負担の公平性の観点から、大阪府内のどこにお住まいでも、「同じ所得、同じ世帯構成」であれば、「同じ保険料額」とする方向で検討がすすめられておりまして、本市としても、府の方針に沿った対応をしていきたいと考えています。

なお今般、大阪府から第2回目の仮試算結果が示されましたが、平成30年度からの、全国で約1,700億円の公費拡充分について、大阪府では一部しか算入されていないことから、本市として、未算入のものについて、保険料の負担軽減に活用するよう、府へ要請しています。

 

 

 A一般会計からの任意繰り入れを継続すべきではないか。

 

●こはら孝志議員

冷たい答弁です。市長はあくまで「府の考えに沿った対応をすることが必要だ」とのお考えですが、これにはまったく道理がありません。

国民健康保険法改定に伴う厚生労働省令には、「府県は標準保険料率を算定し、各保険者はこれを参考にして保険料を課す」と書いてあるではないですか。これは、大阪府が示している標準保険料率はあくまで参考であって、本市は必ずしもこれに従う必要はなく、参考としつつも保険者としての権限で、独自の保険料を定めることができるという意味であります。

そこで改めて市長にお伺いいたします。長年本市は、高すぎる国保料を少しでも軽いものにするために、法定繰入とは別に任意繰入を行なってきました。国保加入者の「これ以上国保料の値上げはしないで」という切実な願いに答え、大阪府の言いなりになるのではなく、今までどおりの任意繰入を続けるべきではありませんか。

 

 

◆吉村洋文市長

国保の都道府県単位化にあたっては、国保の持続可能な制度運営を目指す観点から、任意繰入を前提としない運営が、基本的な考え方とされています。

ただ、本市としては、保険料が急増する場合には、激変緩和措置のための任意繰入を検討するなど、市民負担に配慮しながら、円滑な移行に向けて取り組んでいきます。

 

 

●こはら孝志議員

やはり冷たい答弁です。ただでさえ高すぎるわけです。激変緩和などもっての他です。絶対に値上げなどするべきではありません。強く申し上げておきます。

 

7.保育所の待機児童の解消について

 @就学前まで預けられる「認可園」を増設するべきではないか。

 

それで今ひとつ、保育所の待機児童と保育士不足の問題についてお聞きをいたします。

待機児童の解消は、喫緊の課題であります。本市の待機児童は、20154月時点で217人であったのが、20164月には273人へ、そして直近の20174月には、325人へと増加の一途をたどっています。「規制緩和」や「詰め込み」など、その場しのぎの対応が中心となっているため、本格的な解消には程遠いといわざるを得ません。

この間、入所枠を増やすための様々なメニューが示されましたが、「就学前まで転園の心配なく預けたい」これが保護者の切実な願いです。

「小規模保育」など、低年齢児のみを預かる保育所頼みではなく、就学前まで預けられる「認可園」の増設こそ、待機児童解消の柱とすべきだと考えますが、いかがでしょうか。

 

 

◆吉村洋文市長

待機児童対策については、本市の重要な施策だと認識しています。そのため、私自身がトップとなります「待機児童対策チーム」を本年、立ち上げました。そして議論を重ねてきて、政策もうってきたところであります。

これまでの入所枠というのは、だいたい2,000ぐらいだったんですが、本年度4,000人の枠を確保することができましたし、それ以外にも、あらゆる策というのを講じているところでもあります。

保育所の、保育を必要とする待機児童の解消に向けて、認可保育所の新設はもちろん重要ですし、認定こども園、地域型保育事業所の計画的な整備にも努めているところであります。

本年41日の待機児童の状況を見ますと、325人の待機児童のうち、012歳が290人でありまして、全体の90%と集中しています。また、平成304月の利用申し込みの状況を見ますと、4歳・5歳児では1,878人分の空き枠が生じている状況です。

それが大阪市の現状でありまして、こうした保育ニーズへの対応としては、活用できる土地なんかが限られているこの大阪、大都市においては、小規模保育事業所の整備は、効果的・効率的な対策だというふうに考えています。また、各区長の意見を踏まえて、就学前までの保育ニーズへの対応が求められる地域においては、認可保育所の整備についても積極的にすすめているところであります。

待機児童の解消に向けて、今後もそれぞれの地域における保育ニーズに適切に対応できるように、待機児童解消特別チームでも検討を重ねながら、あらゆる手法を用いた認可保育所等の整備に取り組んでいきます。

 

 

 A本務保育士を増やし、公立保育所の利用定員を元に戻すべきではないか。

 

●こはら孝志議員

そういう答弁ですが、認可保育園・保育所を増やしてこそ、安全・安心の保育、そして何より本格的な待機児童解消につながるものと、重ねて申し上げます。

最後の質問です。大阪市は、2013年度からの3年間、本務保育士の採用を行なわなかった結果、公立保育所では、2014年度から2017年度までの4年間で、利用定員を維持するのに必要な118人の保育士が確保できず、450人もの利用定員を引き下げてきました。その結果、待機児童解消に逆行する悪循環を招く事態に陥ってしまいました。

あわてて、昨年度3年ぶりに本務保育士を12人採用し、来年度は40人程度採用する予定とのことでありますが、一方で、本務保育士の退職者数は、採用を行わなかった3年間だけで241人にものぼっているのであります。新規採用を再開したといっても、40人程度の水準にとどまれば、利用定員をさらに減らさなければならなくなるのは必至であります。

今年の秋に行なわれた来年度の採用試験には、本務保育士・大卒10人程度の募集に対し119人が、同じく本務保育士・短大卒30人程度の募集に対し124人もの応募がありました。一方、一般任期付の保育士112人程度の募集に対し98人の応募、非常勤嘱託の保育士190人程度の募集に対し104人の応募と、いずれも定員割れを起こしています。このことは、保育士として働き続けたいと願う多くの若者たちが、保育という専門職にふさわしい処遇を求めていることを示しているのであります。

待機児童の解消は、言うまでもなく行政の責務なのであり、公立保育所において思い切って本務保育士を増やし、この間削減してきた利用定員を元に戻すべきだと考えますが、市長の答弁を求めます。

 

 

◆吉村洋文市長

待機児童対策については、先ほども申し上げましたが、大阪市にとって非常に重要な課題だと思っています。昨年度に「待機児童対策チーム」を立ち上げ、本年度から本格的な施策を実施して、予算を執行している状況であります。

保育士の人材確保についても、民間保育士の新規の保育士さんが働きやすく、就職しやすいという就職支援制度、まあ様々な、家賃の援助であったり、借り上げの補助、様々な制度を活用しながら、保育士さんがこの大阪で働いていただけるような策も同時にとっているところであります。

公立保育所を退職しました保育士の欠員の補充については、一般任期付保育士と本務保育士を採用して対応してきたところです。

利用定員については、地域ごとの入所申し込み状況を精査しまして、可能な限り待機児童に影響を与えないというような見直しも行ってまいりました。

平成28年度および平成29年度には、本務保育士の採用を行っています。平成30年度についても、本務保育士を採用する予定です。

待機児童対策について、今日もそうですし、全般的にご質疑がありましたが、これまでにない予算を計上して、あらゆる手段を通じて解消に取り組んでいきたいと思います。

 

 

●こはら孝志議員

市長、公立保育所は、本来的に、待機児童の解消を率先して行うために整備されてきた施設ではないですか。民間まかせでは問題が解決できないから、大阪市の責任で、今でもやっているんですよ。しかし利用定員を450名も下げてきた、これは大問題です。

喫緊の課題というのなら、公立保育所の本務保育士を増やして、利用定員を増やすべきであると強く申し上げます。

行政の責任というものをもっと重く受け止めてもらわなければなりません。

市長の答弁ははなはだ不満ですが、時間が来ましたので、後日の各常任委員会や年明けからの予算議会での質疑にゆだねることとし、私の質問を終わります。

ご清聴ありがとうございました。