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市議団の実績

地下鉄・バス民営化に反対する

山中議員の討論(要旨)

山中智子市会議員

2017年3月28日

写真 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、議案第44号「大阪市交通事業の設置等に関する条例を廃止する条例案」に反対する討論を行います。

 本条例案は、昭和2年開業以来、市民の身近な足として、住みよい大阪の街づくりに貢献してきた市営バス事業を経営破たんしたなどとして切り捨てると同時に、今や一日当たり1億円の利益を稼ぎ出し、1600億円もの現金・預金を有する超優良企業となった地下鉄事業の株式上場・売却をはかろうとするものです。バス90年、地下鉄84年の歴史に照らしても断じて認めることはできません。

 以下、具体的に指摘いたします。

 バス事業の90年の歩みは、確かに平坦なものではなく、苦難の連続ではなかったかと思います。

 しかしながら、バスの果たすべき役割の大きさに鑑みての一般会計からの支援と、バス・地下鉄一体の交通ネットワーク構築の観点からの地下鉄の支援を受けながら、何よりも市民の要望、期待に応えるべく努力を積み重ねてきた90年でもあったと思います。

 ところが橋下前市長の突然の民営化方針の下、アクションプランに基づく地下鉄からの支援が打ち切られると同時に、路線・便数ともに大幅にカットされることとなりました。

 そうして交通局は一路民営化に向かってまい進することになるわけですが、折しも、インバウンドの飛躍的な増加や燃料安も重なって、なんと、昭和58年度以来30年間赤字続きであったバス事業が、平成25年度4億円、26年度10億円、27年度12億円と3年連続して経常利益を積み上げたわけです。ちなみに28年度ももちろんまだ決算数値は出ておりませんが、引き続き黒字になる見通しということで、まさに公営バスとして立派にやっていけるという証しとなったのではないでしょうか。

にもかかわらず何が何でも民営化≠フ交通局は、こともあろうにオスカードリームの経営破たんの責任を一人バス事業に押しつけて、もはや公営バスは成り立たなくなったなどとして、バスをつぶしにかかったのです。本当に許しがたい暴挙だと言わなくてはなりません。しかも民営化すれば途端に経営が健全化するなどと盛んに幻想を振りまいたわけです。とんでもない話です。

その実、無理やり人件費を抑えるために、シティバスに転籍する職員には、給与減額分の定年までの累計を退職金に上乗せして、民営化時に支給するという苦肉の策を講じただけのことではありませんか。その追加分等32億円は地下鉄が負担するというのです。なんのことはない、民営化後のバス事業の収益収支への、地下鉄からの支援に他ならないではありませんか。公営バスには支援しないが、民営化のためにはなりふりかまわず支援するという、まことに身勝手な論理です。

ちなみに通常ベースの退職金64億円と、企業債一括償還38億円は、残された営業所等の資産を地下鉄に売却して充てるわけです。

ですので、民営化後のバス事業は、なるほど、負債はなくなりますが、営業所はおろか、530両のバス車両まで地下鉄から賃借して、年15億円の賃料を支払わざるを得ないという事業体に成り下がるということです。

その上、一般会計から毎年約4億円の補助金を受け取るにもかかわらず、1年目の税引き後の利益が8億6千万円、5年目は3億6千万円と、公営と大差がないということではありませんか。

加えて、市民から悲鳴が上がるほどにカットされた今の路線や便数の維持すら「原則として」という表現に示されているように、何ら保証もないとなれば何をかいわんや、です。

バスの民営化は、一片の道理もないと断ぜざるを得ません。 

 

道理のなさという点では、地下鉄の民営化も同様です。

それは、第一に、フィーダー系バスの支援は、交通ネットワーク構築の観点からも、また、バスのドル箱路線が地下鉄にとって代わられたという点での営業補償という意味からも、地下鉄の責務であるにもかかわらず、これを放棄することになるからです。

第二に、株式上場・売却に向かって突進するあまり、利益の最大化、有利子負債の低減に汲々として、御堂筋線の可動式ホーム柵設置の凍結にみられるように、最も肝心な輸送の安全、安心を置き去りにするということです。

第三に、周辺住民にとって待望久しい8号線=今里筋線延伸の事実上のストップで、市民の足の利便をはかり、住みよくつりあいのとれた大阪の街づくりへの貢献という、昭和8年以来の地下鉄事業の使命を投げ捨てることになる、ということです。

そして、最も許しがたいことは、実に115億円を上乗せして都合1000億円にものぼる退職金の支払いなど、民営化にあたっての諸費用で1600億円もの手持ち資金を、70億円を残してすべて使い果たしてしまうということです。

1600億円。これだけのお金、いっぺんに使うのではなくて、徐々に有効に使えば、いったいどれだけのことができるでしょうか。

この6分の1の予算で、御堂筋線の可動式ホーム柵設置は車両改造も含めて全駅で実現できます。

あるいは、仮に8号線の延伸にかかる費用、全額地下鉄が負担したとしてもまだ、おつりが来るわけです。

これほどのお金を使い果たしてまで、どうして民営化を強行するのかと申し上げたい。

交通局は、民営化すれば一般会計に対して年に100億円を超える貢献ができると広言してきました。ところがどうでしょう。確かに、固定資産税の納付や株式の配当などはありますが、逆に地方交付税の減などなどがあって、つまるところせいぜい40億円程度にすぎないことがこの間の議論ではっきりといたしました。わが党が一貫して主張してきたように、公営企業として地方公営企業法18条2項に基づく、一般会計からの出資金に対する納付金を納めた方が、あらゆる面でプラスになるということもまた、明確になったわけです。

この間、地下鉄に対して一般会計から累計3471億円の出資が行われています。地方公営企業法の「逐条解説」によれば納付金の額は企業債の借入利率が参考になるということなので、長期物の利率を参考にして1.7%とすれば、60億円という数字がでてきます。ですので、公営の方が、割り増しした退職金を一括で支払うこともいらないし、民営化のための様々な費用を支出する必要もなく、それでいて一般会計に対して民営以上に立派に貢献できるということです。

民営化には道理がないという証しではないでしょうか。

それで、交通局はいうに事欠いて、将来、乗客収入が落ち込んでサービスを維持することができなくなる前に、民営化する必要があるなどと言っていますが、これまた、まともに議論するに値しないことだと言わなければなりません。

交通局が作成した民営化10年目の公営・民営収支比較のシミュレーションに公営のままでまったく問題がないということが明確に示されているではありませんか。

公営のままで推移すれば、収益は確かに1年目と比べ10年目では146億円減ることになっていますが、費用の方も人件費その他で262億円減ることになるので、経常利益は1年目190億円が、10年目262億円と、72億円も増えることになっています。民営化した場合の税引き後収益よりわずか5億円ではありますが、多いわけです。

しかも資金面でも、公営では企業債残高が3897億円と平成29年度末と比べ901億円縮減しているとともに、現金・預金残高はなんと3419億円にもふくらむことになるということです。

民営の場合は、新規の借り入れは一切しないということですから、有利子負債残高は1675億円と公営に比べかなり少なくはなりますが、資金残は70億円と、公営の方が実に3349億円も多い計算になります。結局、資金面では公営の方が差し引き1127億円もプラスになるのです。ですので、10年間毎年60億円の納付金を一般会計に納めたとしても、なお、公営の方に527億円の資金面でのアドバンテージがあるということになるわけです。

これでどうして、公営ではいずれサービスの維持が難しくなるなどということになるのでしょうか。とんでもないことだと言わなくてはなりません。

それをいうなら、むしろわずか70億円の運転資金しか持たない民営の方が、大変なのではありませんか。法人税等の負担が大きいうえに、新たな事業展開によるリスクも負わざるを得ないわけです。何か突発的なことが起きればたちまち窮するのではないでしょうか。まさに綱渡りともいえる厳しい経営状況に立たされる可能性が十分ありうるということを指摘しておきます。

いずれにしても、地下鉄は公営事業として引き続き発展させていくことが市民にとって、あらゆる面でプラスになると強く申し上げます。

以上、指摘してまいりましたように、市営交通事業の廃止にはなんの道理もなく、到底容認できないと重ねて申し上げ、反対討論といたします。