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市議団の実績

2017年度大阪市予算案に対する

井上議員の反対討論(要旨)

井上ひろし市会議員

2017年3月28日

写真私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2017年度大阪市一般会計予算案等に対する組み替え動議に賛成し、原案に反対する討論を行います。

市民のくらしが、依然厳しい状況におかれている中、本市は政令指定都市としての財源と権限を最大限に活用し、住民の福祉の増進に努めるとともに、大阪経済の活性化に向けた実効性ある施策を展開しなければなりません。

ところが、市長が提案した予算案は、市民のくらしに寄り添う姿勢が欠如しているとともに、「大型開発のムダづかい」・「何でも民営化」・「大阪市廃止分割」に固執する中身となっているのであり、そうしたことに市民の血税と労力と時間を費やしている場合ではないのであります。

こうした市民不在の予算案は、市民の切実な願いに反するものであり、到底認められません。 

以下、具体に指摘致します。

 

第一は、市民のくらしや教育、子育てに悪影響を与える予算が含まれているという点です。

まず、国民健康保険についてであります。

 市の国保会計は、2015年度15億円の単年度赤字が出たものの、後期高齢者医療制度が実施された2008年度から、ほぼ毎年単年度黒字を計上しており、8年間の黒字額の合計は、247億9千万円にものぼります。

ところが、来年度は2%の国保料引き上げが示されており、前市長の4年間で4%、吉村市政初年度で1%、そして来年度2%の引き上げとなれば、この6年間で7%もの引き上げとなるのであります。

しかも、昨年度から拡充された国の保険者支援制度によって、本市には今年度も34億円の財政支援が行われていますが、これを一切市民の負担軽減のために活用せず、昨年度同様、そっくりそのまま本市の任意繰り入れを減らすことに充当しているのであります。

本市国保会計の黒字も、国からの財政支援も、市民の負担軽減のためには一切活用しないという姿勢は、あからさまな市民いじめとしか言いようがありません。

地方自治体として、市民の負担軽減に最大限努め、くらしを守る姿勢を示すべきなのであります。 

次に、教育現場で大問題になっている、府チャレンジテストと大阪市統一テストについてであります。

文科省は、全国学力テストについて「調査結果を直接又は間接に入学者選抜に関して用いることはできない」としており、教育活動としてのテストではなく、学力調査としての性格を持つテストを「個々の生徒の成績評価を目的」としてはいけないのであります。

たった1回のテスト結果で、普段の授業や提出物、定期テストなどでどんなに頑張っていても、チャレンジテストや統一テストの点数が低ければ、低い評定へと変更されることになります。このような「評価権」の侵害は、教育基本法が禁じる明らかな「不当な支配」なのであり、そもそも教育委員会には、各学校・教員に対して成績評価を変えさせる権限は与えられていないのであります。

こども達をテスト漬けにし、学校のランク付けまで行う異常な競争教育は、教育の営みを歪めるだけではなく、校内暴力や不登校の増加に拍車をかけることになります。

府に対しチャレンジテストの中止を求めるとともに、大阪市統一テストは速やかに中止するべきであります。 

また、一人ひとりを大切にしこども達に目が行き届く少人数学級の推進や就学援助の拡充、学校維持運営費の増額などには背を向けながら、公教育の解体につながる公設民営学校いわゆる国際バカロレアの設置や、教育的効果が検証されておらず逆に様々な問題が各地で起きている施設一体型小中一貫校の整備などを推進することは容認できないのであります。 

続いて、西船場幼稚園の廃止についてであります。

西船場小学校では児童が急増していますが、大阪市は狭い小学校内での増築にこだわるあまり、併設されている西船場幼稚園を廃園しようとしています。

しかし、扇町高校跡地などを活用して、急増する児童に対応することこそ、行き届いた教育を保障する抜本的で現実的な対策なのであります。

保護者や地域住民の反対の声を無視して、強引に幼稚園を廃園することは決して認められません。

地域の宝、大阪市の宝である西船場幼稚園は存続させるべきであります。

 

第二は、不要不急で呼び込み型の大型開発が、目白押しであるという点です。

淀川左岸線2期事業に、20億4700万円が計上され、本体工事が始まろうとしています。しかし、人口減少社会が予測されている中、必要性自体疑問視されているだけでなく、河川堤防の開削を行うという前例のない事業は構造上あまりにリスクが高く、災害対策にも逆行する事業なのであり、中止するべきであります。

必要性自体、疑問視されているという点では、淀川左岸線延伸部事業についても同様であり、大阪市内の阪神高速道路の交通量が引き続き減少傾向にある中、明らかに不要不急であり止めるべきであります。 

また、総額4000億円にものぼるなにわ筋線についても、検討調査費500万円が計上されています。東海道線支線の地下化がすでに進んでおり、これで現在よりも17分の時間短縮が可能となるため、新たになにわ筋線ができても、短縮できる時間はわずか5分であります。5分短縮するために4000億円もの巨費を投じることになるのであり、市民感覚では到底考えられない話であります。 

さらに、万博誘致推進事業に1億1千万円、IR推進局が進めようとしているIR誘致に2億400万円、夢洲まちづくり構想に500万円が計上されております。私達は、万国博覧会そのものに反対するものではありませんが、万博開催の関連事業として南回りの鉄道建設が盛り込まれているのであり、これはカジノを中核とするIRへの客を運ぶ鉄道でもあります。カジノは、マイナスの経済効果やギャンブル依存症対策など、その社会的コストは計り知れません。

万博をIR誘致のための“隠れ蓑”に、セットで進めようとしているのであり、断じて認められません。かつての大阪湾ベイエリア開発計画が大失敗したのは、「呼び込み型の大型開発は経済効果が絶大だ」として、後先も考えずに事業を進めたからに他ならず、市長自ら過去のムダな大型開発を批判していることに照らしても、矛盾しているのであります。 

超大型船の入港に備えるとして進められている、国際コンテナ戦略港湾についても、超大型船が入港する気配はなく、現在大阪港に入港している最大の船舶でも余裕をもって入港していることから、その必要性は皆無でありこれ以上の浚渫は見直すべきであります。

これら一連の大型開発推進予算は、市民の理解を得られるものではなく、決して認められないのであります。

 

第三は、「大阪市廃止・分割」を前提に、様々な事業や施設の民営化・統廃合の計画が含まれているという点です。

まず、住吉市民病院についてであります。

市民病院跡地に誘致する南港病院の開院が、日影規制で2年遅れる問題について、健康局は南港病院からその旨の報告を受けていながら8ヶ月も隠蔽し、議会では虚偽の答弁をしたうえ、来年度予算に市民病院改修工事費7千万円を計上し、再来年度以降の2年間で11億8千万円もの新たな支援を行うとしています。

ここに至った南港病院の責任もさることながら、監督・指導を怠り莫大な市民負担を生じさせようとしている大阪市の責任は、極めて重大であり到底認められません。

公的な病院を乱暴に“二重行政”だと決めつけた過ちを認め、最初の計画通り公立病院として現地建て替えするべきであります。 

次に、今年4月に発足する地方独立行政法人・大阪健康安全基盤研究所についてであります。地方独立行政法人法第2条には、「地方公共団体自身が、直接実施する必要のないものを効率的・効果的に行う」と定義されており、地方公共団体が、直接実施しなければならない分野だからこそ、大阪以外の全ての公衆衛生研究所が自治体直営で運営されているのであります。

独法施設には、市民の代表たる市長においても直接、指示・命令することができません。大阪府の法人となる大阪健康安全基盤研究所に対し、本市の財政負担は生じるものの、公衆衛生に関わる調査研究や健康危機事象への対応など、本来基礎自治体が責任を負うべき公衆衛生に、直接責任を持てなくなるという重大な欠陥が根本にあるのであります。到底認められません。 

また、博物館施設についても経営形態を見直すとして、地方独立行政法人化を無理やり押し進めようとしていますが、結局これも運営費の削減が目的なのであり、文化・学術などの継承発展のためには、全くなじまない経営形態だと断じざるを得ません。

本市直営で運営し、必要な予算の確保に努めるべきであります。 

続いて、下水道事業についてであります。経営形態の見直しと称し、4月から本市100%出資のクリアウオーターOSAKA株式会社へ維持管理部門の全面的な委託が計画されています。

その狙いは人件費の削減に他ならず、日常の維持管理や浸水対応などへの影響が懸念されるのであり、市民生活に不可欠なインフラである下水道事業において、公的責任を後退させてはならないのであります。 

最後に、本予算案には都構想・特別区設置を再び推進しようとする予算が盛り込まれていることについてであります。特別区の設置については先の住民投票で否決されており決着済みであります。吉村市長は、市長選挙で都構想を修正することを掲げて当選したことをもって再挑戦を合理化していますが、これは結局、住民投票の重みを顧みず、住民投票で示された民意を踏みにじることにほかなりません。

特別区を設置する都区制度には、大阪市が廃止となって大阪市域に係る広域行政についての大阪市民の自己決定権が奪われる、財政調整制度によって特別区は大阪府のひも付きの「半人前の自治体」になる、今は政令市として一つでやっている国民健康保険など膨大な事務が一部事務組合となって市民の手が届かないものになるなど、避けられない欠陥が多数あると言わなければなりません。

また吉村市長が進めようとしている全市的な合区を伴う総合区8区案は、住民自治を強化するとした地方自治法改正の趣旨に背くものです。合区すなわち行政区を廃止することは、市民にとって大問題であります。市長自らは特別区の方をやりたいのに、市民的な議論もなしに総合区に名を借りて合区する案を持ち出す、こんなやり方は断じて認められません。

そんな制度いじりに再び熱中するのではなく、政治の中身を市民本位に変えることを市民は強く求めているのであると申し上げておきます。

 

以上、予算組み替え動議に賛成し、原案に反対する討論と致します。