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市議団の実績

2015年度大阪市一般会計決算認定に対する

井上議員の反対討論

井上ひろし市会議員

2016年11月15日

写真大阪市議会本会議が15日に開かれ、日本共産党の井上浩議員は2015年度一般会計等の決算認定に反対する討論を行いました。決算は維新、公明の賛成多数で認定されました。

 井上氏は、子どもの貧困などが進行する今こそ、本市が市民のくらしを守る役割を発揮しなければならないときに、「都構想」に固執し、統廃合や民営化の路線をごり押しし、市民に寄り添った施策がなされていないと批判しました。

 「市政改革プラン」と市民のくらしや福祉・教育について、「現役世代への重点投資」の掛け声の陰で、子育てや教育にかかわる施策が改悪されてきたと指摘。「貧困問題は一部施策を突出させれば解決に向かうというものではない」と主張しました。

 また、万博誘致に関連して、府の基本計画案では、本市の負担は1000億円にものぼると指摘し、「市民のくらしを切り捨てながら、一過性のにぎわいしかもたらさない万博に、府の言うままに巨費を投じることは許されない」とのべました。

(2016年11月16日付しんぶん赤旗)


私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2015年度大阪市一般会計決算認定に反対する討論を行います。

いま、大阪市の経済状況は、家計消費支出や雇用者報酬をはじめ、どの指標も回復の兆しは見られず、多くの市民が苦境に立たされているのであり、そのことは、こどもの貧困をはじめ各層での貧困化の進行が、大きな社会問題に発展していることにも象徴的に現れています。

こうした時こそ本市は、地方自治体本来の役割を発揮し、市民のくらしを守ることに全力を注がなければならないのであります。

ところが市長は、決着済みの「大阪市廃止・分割構想」について、再度の住民投票へ持ち込む狙いを前提に、その設計図づくりに固執するとともに、二重行政と頭から決めつけての施設の統廃合や何でも民営化の路線をごり押しする一方、市民のくらしや福祉には、市民に寄り添った手当が施されないままなのであります。

本決算に現れているのは、福祉の増進をはかるという、地方自治の本旨から大きく逸脱した姿であり、到底認められません。

以下、具体に指摘致します。 

まず、昨年5月に実施された住民投票についてであります。

住民投票に向け、行政が総がかりで、税金と労力と時間を惜しみなく費やすと共に、「何度もやるものではない。一回限り」「5月17日の住民投票で全てが決まる。大阪を変えられるのは、このワンチャンスだけ」との大キャンペーンの果てに、否決という結果に至ったのであり、その重みを受け止めて、270万市民の代表として市政運営にあたるべきだったのであります。

市長は、「住民投票の結果は重く受け止めている」としながらも、一方で再び住民投票を行ない、総合区と特別区の二者択一を、市民に無理やり迫ろうとしているのであり、都構想のために再び市民の血税を費やすことは、断じて認められません。

加えて申し上げておきますが、都市内分権を進めていくにあたっては、住民の皆さんを真ん中に「どんな住民自治が求められているのか」「区の権限というのはどこまで必要なのか」といった制度の根幹に関わることを、上から押し付けるのではなくて、市民と一緒に探っていくというように、地域の実情から制度を構築すべきなのであります。 

次に、市政改革プランと市民のくらしや福祉・教育についてであります。

この間、「現役世代への重点投資」の掛け声の陰で、子育てや教育に関わる施策だけ見ても、例えば、保育料の負担を非課税世帯にまで求めはじめ、給食費の値上げや一人親世帯などへの上下水道料金福祉措置の廃止、保護者のいない児童や虐待を受けた子供たちを預かる乳児院への補助金の引き下げ等々が行われてきました。

貧困問題は、一部の施策を突出させれば解決に向かうというものではありません。

こどもの貧困対策を推進していくうえで、本市としてこれまで貧困問題に正面から向き合い効果的な対策を講じてきたのか、また貧困問題に対し、逆に追い打ちをかけるような施策展開はなかったのかを検証し改善する必要がありますが、そうした動きは全く見られないのであります。

市政改革プランなどで廃止・縮小された数々の施策は、長年に渡ってこども達と親を支え続け、セーフティネットとしての重要な役割を果たしてきたことは、言うまでもありません。

社会の底辺を支える施策の切り下げは、貧困対策にも逆行するのであり、到底容認できません。 

高齢者施策に関わる敬老パスについても、現在、年間3千円の負担に加え、一回乗車ごとの50円の負担が課せられていますが、制度変更前の2012年度と制度変更の影響が平年度化された 2015年度を比較しますと、交付者数で約3割、交付金の決算で約4割も減少しているのであります。

高齢者の生きがいや健康・長寿に関わる重要な施策であるにも関わらず、制度改悪による影響は深刻であり、速やかな制度の改善が求められているのであります。

ところが市長は「地下鉄・バスが公営のもとでは、スキームを変えるべきではないと考えている」「一方で、地下鉄が民営化した場合、あくまで株式会社が負担するという意味において、年間3千円の負担をなくすことができると思っている」と、公営のままでは制度の改善はできないが、株式会社なら高齢者福祉が充実するかのような、全くスジ違いの発言をしているのであります。

高齢者福祉施策の財源を、営利追究が目的の株式会社に求め続けることができるかのような問題のすり替えに終始し、制度の改善をはかるつもりがないばかりでなく、地下鉄民営化をしゃにむに進めるために、敬老パスをこんな形で利用し、市民のミスリードを誘おうという姑息な手法も合わせ、言語道断だと言わなければなりません。

公衆浴場の固定資産税減免措置についても、当初の減免率67%が2015年度は34%にまで引き下げられました。その結果、本市の公衆浴場は、2011年度451施設であったのが、 2015年度は367施設へと、4年間で84施設も激減しております。

本年4月に行なわれたアンケートには、固定資産税の減免措置の必要性について尋ねる項目が盛り込まれましたが、237施設が必要と答えており、不要と応えたのはわずか2施設のみでありました。必要と応えた理由としては、「経営困難だから」「地域に必要な施設であり、社会的な使命があるから」というものが圧倒的に多かったのであり、固定資産税の減免率は、当初の67%に戻すべきと申し上げておきます。 

就学援助について、本市の認定率は2009年度で35.4%だったのが、2015年度には26.8%と6年間で8.6ポイントも低下しております。これまで教育委員会は、経済状況が改善していけば、おのずと就学援助の認定率が下がっていくという主旨の答弁をしていましたが、決算委員会で私が明らかにしたように、2009年度と2015年度を比較した大阪市の経済指標では、家計消費支出は3.89ポイント悪化し、雇用者報酬は1.75ポイント悪化しているのであります。

大阪市の経済状況が良くなっているとは、とても言えないのであり、経済状況が低迷傾向にあるにも関わらず、認定要件のハードルの高さを見直さないでいることに、認定率の低下の要因を求めるのが、至極自然なのであります。

また、国が実施した、生活扶助基準の引き下げに連動して、対象者が狭められないように、多くの自治体では、所得基準を下げない措置が取られました。文科省が昨年10月に公表した調査結果によると、2015年度に所得基準額を下げたのは、生活保護の基準をもとに所得基準額を算定している全国1067市区町村のうち、わずかに27市町村でありますが、

何とこの27市町村の中に本市が入っているのであります。

国が基準を引き下げたのだから仕方がない、本市がその分の手当てをする必要はない。こういう考え方に基づいて、基準額が引き下げられたのであります。

市民に最も身近な基礎自治体として、市民に寄り添い、教育や福祉を充実させるための努力を惜しまないという立場が不可欠なのであり、こんな冷たいやり方は、到底認められません。 

加えて教育については、本市が創設した特別支援学校の府への移管が、二重行政解消の名目で実施されましたが、これまでの本市における特別支援教育の水準が維持されるどころか、著しく後退している実態が、次々と明らかになっているのであります。

学校維持運営費の大幅な減額、実習助手の大幅削減や理学療法士派遣回数の大幅減、視覚・聴覚の専攻科生の就学奨励費の廃止、給食費の値上げ、さらには、府立大阪北視覚支援学校の寄宿舎において、小中学部の生徒達がこの2学期から全員退舎させられるという、およそ信じ難いことまで起きているのであります。

教育委員会は、府への移管の意義について「大阪の特別支援教育のさらなる充実を目指していくことになる」と繰り返し答弁してきたのであり、これまでお預かりしてきた大切な生徒達をはじめ保護者・関係者に対し、府に任せたからあとは関知しません。こんな無責任な姿勢ではひどすぎます。決して容認できません。

続いて、大阪港における大型公共事業のムダづかいについてであります。

港湾局は、大型コンテナ船の就航に備えるとして、大阪港の主航路の増深・拡幅をはじめ、その際発生するしゅんせつ土砂の処分場である新人工島の築造などを、2011年度から 2020年度までの予定で進めています。

ところが現在、外貿コンテナ貨物量は、増えるどころか目標値を下回っている状況であるとともに、肝心の北米基幹航路における取り扱い貨物量は、8年前に比べ何と2割台にまで落ち込むという惨状であります。

しかも港湾局は、水深16メートルの航路を建設する根拠として「いずれ、水深16メートルが必要なコンテナ船が入港することも見込まれるため」と言い続けておりますが、待てど暮らせど超大型船が入港する気配はなく、現在大阪港に入港している最大の船舶でも余裕をもって入港していることから、現状の水深でも十分過ぎる程なのであり、そもそも本事業の必要性、妥当性は皆無なのであります。

国際コンテナ戦略港湾として進められている、本事業の全体事業費は約748億円、その内、本市負担は約247億円もの巨費にのぼり、2015年度決算でも32億円が投入されたのであります。これは、本市における大型公共事業のムダづかいの代表格なのであり、断じて認められません。

貴重な血税は海原に沈めるのではなく、市民のくらしにこそまわすべきであります。 

最後に、こうして大阪港とりわけ夢洲へのムダな公金投入を続けながら、無人の夢洲への鉄道建設など、さらなるムダな投資をしようとしていることに触れておきます。

2014年度に「夢洲まちづくり構想検討会」が立ち上げられ、「新たな観光拠点の形成」などというアドバルーンのもと、カジノを含む統合型リゾート=IR誘致が画策されてきましたが、いよいよ万博を利用してまでこれが具体化されようとしています。

大阪府は2025年の万博を夢洲に誘致するとして、「万博基本構想案」をぶち上げました。

会場建設費1200億円〜1300億円。そのうちの200億円をはじめ鉄道建設などの関連経費や、夢洲埋め立ての前倒し費用など、本市の負担は1000億円を下らないとの推計であります。

市民のくらしを切り捨てながら、一過性のにぎわいしかもたらさない万博に、府の言うままに巨費を投ずるなど決して許されません。

しかも、万博開催に先立って、IRを誘致しようという計画であることは何をかいわんやです。結局、これまで「IRのためのインフラ整備はIR事業者の負担で行なう」と言い続けたその場しのぎをごまかすために、万博を利用しようとしているのであります。

世界一深刻な、ギャンブル依存症を拡大させるカジノ誘致は、大阪の経済をよくするどころか、市民の生活を壊すものであるとともに、巨大開発の失敗を繰り返すものであると申し上げ、反対討論と致します。