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市議団の実績

2016年度予算案に反対し

組み替え動議に賛成する小川議員の討論

小川陽太市会議員

2016年3月29日

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2016年度大阪市一般会計予算案等に対する組み替え動議に賛成し、原案に反対する討論を行います。

 市民のくらしと大阪経済において、極めて厳しい状況は依然として変わりなく、「格差と貧困」が社会問題化しているように、市民の将来に対する不安は、いっそう大きく広がっています。

 そうした中、本市は住民の福祉の増進に努め、くらしを守り地域経済の活性化についての施策を積極的に展開し、市民が安心と希望をもてるよう、地方自治体本来の役割を発揮することが求められているのです。

 ところが、市長が提案した予算案では、市民のくらしへの切実な願いに向き合う姿勢が欠けているとともに、「副首都」の看板をかかげ、これまで失敗を重ねてきた大規模開発・呼び込み型の成長戦略にもとづく「税金のムダづかい」や、何でも民営化・統廃合し「大阪市廃止・分割」への道を突き進もうとしているのであります。こうした予算案を認める訳にはいきません。

 以下、具体に指摘致します。

 第一は市民のくらしや教育・子育てに悪影響を与える予算となっているということです。

 まず、国民健康保険についてであります。本市の国保会計は、後期高齢者医療制度が実施された2008年度から、ほぼ毎年単年度黒字を計上しています。2014年度までの7年間の黒字額合計は、263億1千万円にのぼると共に、今年度から本市に対し、国の「保険者支援制度」によって34億円の財政支援が行われることになりました。この34億円を世帯数47万3800世帯で割れば、一世帯平均7,176円引き下げできるのであります。今年度から始まった国からの財政支援分を活用するだけで、これだけの市民負担軽減がはかれるにも関わらず、市長は引き下げるどころか1%の値上げを提案しているのであります。橋下前市政の2013年度には2%、2014年度にも2%引き上げられているのであり、来年度1%引き上げられることになれば、わずか5年で5%の値上げが強行されることになります。これでは、苦境に立たされる市民のくらしを、いっそう追い詰めることになるのであり、断じて容認できません。

 続いて、教育や 子育て世代への 支援についてであります。今、こどもの貧困問題は本市のみならず、全国的に社会問題化しており、大阪のこどもの貧困率は全国ワースト2位と、貧困対策は待ったなしの状態にあります。全国的には、就学援助の受給者が増加している一方、本市ではこの10年間、認定数も予算も減り続けています。これは本市が、認定の要件を厳しくし、就学援助を受けにくくしていることが大きく影響しているのです。

 せめて認定のための所得額について、多くの都市で実施しているように、生活保護基準から引き上げることを求め、給食費補助について「小学校では全額補助しているのに、中学校では1/2補助となっている点の改善を」と求めましたが、理事者は本市のこども達の状況を全く見ない、冷たい答弁に終始したのであります。到底認められません。

 また、保育所の待機児問題についてです。本市では、公立保育所の廃止・民営化を強引に進めると共に、保育士の新規採用は基本的に行わず、給与も極端に引き下げました。その結果、深刻な保育士不足を招き、公立保育所の入所枠を大幅に減らさざるを得なくなったのであり、待機児解消が進まない要因を自らつくりだしているのであります。保育への公的責任を後退させることは決して認められません。

 第二は、不要不急の大規模開発・呼び込み型の誤った成長戦略にもとづくものが含まれているからです。淀川左岸線2期事業の14億3300万円、うめきた2期地区の新駅設置や東海道支線地下化などの42億4400万円、大阪港の国際コンテナ戦略港湾建設などの36億7000万円、加えて、なにわ筋線やリニア中央新幹線、夢洲へのIR誘致などに関連する調査費などであります。これらは進めるべきでない不要不急な巨大開発、あるいは、本市が負担すべきでない巨大開発への負担と言わなければなりません。

 吉村市長は本年1月19日に関経連会長らと一緒に東京まで足を運んで淀川左岸線延伸部の建設を促進する要望をしました。要望書は、延伸部を国直轄事業とし、3000億から4000億と言われる事業費の3分の1を本市が負担する、28年度にも都市計画決定をするというもので、前のめりになって巨大開発を進める市長の姿勢が露になりました。

 「うめきた」の事業も重大です。当初あれは民間がやる開発だ、大阪市の負担はわずかだというふれ込みでした。ところが新駅設置など主な三つの事業費1154億円のうち約64%にあたる737億円も本市が負担しているのであります。本予算案の42億円は、地権者や開発大企業、JR西日本などの事業に対する異常な公金投入と言わなければなりません。

 また吉村市長がカジノを含む統合型リゾート・IRを誘致するためのインフラ整備はすべて民間が負担するかのように説明したことのまやかしも明らかになりました。私がIR誘致について「税金の投入はないといいきれるのか。」と質したのに対して、市長は「鉄道や道路などの基盤整備は民間に負担を求めるが、どこまでが民間の為かどこからが公共の為か検討が必要」と答弁しました。これは、例えばアクセス鉄道の北ルート、南ルートの建設費2200億円のどこまで負担するかはこれから検討する、本市も税金を投入する、これを認めた答弁であり重大であります。カジノの誘致に市民の税金をつぎ込むなんてとんでもありません。

 さらにわが党委員が、大阪を副首都にするために必要な機能だと言って、淀川左岸線延伸部やIR誘致などの巨大開発を進めようとしているのではないかと質したのに対して、市長はこれを否定せず、交通・インフラの整備は大阪の成長に必要なものだと答弁しました。副首都構想は無駄な大型開発を進める看板にもなっていると重ねて指摘しておきます。

 第三は、「大阪市廃止・分割」を前提に、様々な事業や施設の民営化・統廃合の計画が含まれているということです。

最初に住吉市民病院についてであります。厚生労働省は、「住吉市民病院廃止に伴う病院再編計画」に同意しましたが、地元医師会をはじめ多くの住民が現在も反対を表明しています。地元が反対している計画に、厚労省が同意することなど前代未聞であり、地域の不安は全く解消されていないのであります。住吉市民病院廃止後、誘致する南港病院が提案している3名の産科医師数で年間600件から700件の出産に対応するのは困難だと、医療審議会等でも指摘されています。また、児童虐待被害児の一時保護受け入れや未受診妊婦の受け入れなど、これまで住吉市民病院が担ってきた役割を引き継ぐ事ができるのかという点についても、専門家である地元医師から大きな疑問や不安の声があがっています。本市の南部医療圏における住吉市民病院の役割はいっそう浮き彫りになっているのであり、住吉市民病院の廃止と民間病院の誘致は到底認められません。

 新しい美術館の整備についてであります。当初の予算案は、基本設計から工事、15年間の運営にいたるまですべてをPFI事業で進める計画でした。その後、理事者修正によって運営のみPFI事業とすることが提案されていますが、美術館の運営は、多岐にわたり特に学芸部門は高度な専門性を必要とし、PFI事業者に担わせないと市は答弁していますが、運営責任の所在などあいまいな点も多く、美術館本来の役割が担保されるのか不安が残ります。

 美術館へのPFI事業導入の実績はまだ全国に一例しかありません。全国では、病院など他の事業において、PFI事業の破綻事例も相次いでいます。美術館は収益を目的とする事業ではありません。収益を求めるPFI事業者に運営させるのではなく、大阪市が責任をもって公共でおこなう事業として進めるべきだと申し上げておきます。

 下水道事業についてであります。下水道は市民生活に不可決なインフラであるとともに災害発生時には浸水から市民の命、財産を守る要の事業であります。こうした事業の経営形態見直しを行い、本市が出資設立する株式会社に大部分の職員を転籍させて維持管理業務を包括的に民間委託して行政としての責任が果たせるのか、はなはだ疑問であります。新株式会社といくら安全の枠組みや災害時の協定を結んだとしても、民間になった職員と公務員とでは災害発生時の役割に関して法的位置づけが大きく違うではありませんか。到底賛成できません。また、海老江下水処理場の改築更新と保全管理をPFI事業で行おうとしています。これは民間企業に価格を競わせて建設と保全管理のコストを下げようと言うものですがこれも安心安全の下水道事業にそぐわないと言わなければなりません。

 次に港湾の一元化についてであります。大阪港、堺泉北港、阪南港はそれぞれ規模も取り扱う貨物の特徴も全く違います。大阪港は公共岸壁が多くてコンテナ貨物を主に取り扱う商業港、堺泉北港は民間企業専用岸壁が多く原油エネルギー関連生産が多い工業用途の港、阪南港は砂利や木材などの原材料を主として扱う港、このように性格が大きく異なっており、その規模もまったく違います。特徴がまったく違う港湾を統合してもメリットは出ないと申し上げておきます。

 最後に、財政問題です。委員会質疑を通じて、吉村市長が「今後も厳しい財政状況が続くことが見込まれる」として、市民サービスのカットや職員の給与削減も継続するとしていることの誤りも明瞭になりました。

 市長は「収支概算」を基に今後も200億円程度の収支不足が続くとしていますが、実際の不足額はこの4年間、収支概算の3分の1以下に収まっていますし、不足額への補填財源である財政調整基金には全く手が付けられてないだけでなく逆に増えています。我が党委員が「財務リスク」と言われる6つの事業の内4つの負担が後5年ないし8年で終わる、財務リスク分を除く公債費も10年後には700億円も減る、だから財政が好転する、こうしたことも示して、職員給与の削減は継続しなくて済むし、敬老パス50円負担は無しにすることもできるではないかと質しました。ところが吉村市長は、財政は厳しいとの一点張りで、まるで思考が停止したかのような答弁をされたのであります。

 市長が収支不足を持ち出す本当の理由は、淀川左岸線延伸部など大型開発の事業費を生み出すためであり、それを隠して市民に負担を押しけるなんてとんでもありません。

 以上、予算組み替え動議に賛成し、原案に反対する討論と致します。