title


市議団の実績

「教育長の任命」についての質疑・答弁(要旨)

井上ひろし市会議員

井上ひろし市会議員

2016年3月28日

 ●井上浩議員

 私は「教育長の任命」について、市長および教育長候補者に質問いたします。

 2014年6月、地方教育行政法が改悪されたことにより、教育委員会制度の根幹が大きく歪められようとしています。これまでの教育委員長と教育長を一本化し、首長が教育長を任命するとしており、教育委員会から、教育長の任命権も教育長を指揮監督する権限も奪うものであります。これらは、教育委員会と教育長との関係を逆転させ、教育委員会はその独立性を損ない、首長と教育長に強く支配されることになります。

 さらに、首長が招集権限を持ち、首長と教育委員会で組織される「総合教育会議」が設置され、首長が教育の振興に関する大綱を策定します。これでは、教育委員会は形だけとなり、「教育の政治的中立」が脅かされることになります。

 もともと、教育委員会制度は、戦後の1948年、選挙で選ばれた教育委員達が、その自治体の教育のあり方を決めるという、民主的な制度として発足しました。戦前の中央集権型の教育行政の反省に立ち、「不当な支配」から教育の自主性を保障し、首長への権限の集中を防止するための地方自治の仕組みとしてつくられたのであります。

 しかし、1956年の地方教育行政法の改悪により、公選制が廃止され、教育委員会の形骸化が進みました。その背景には、歴代政府が国の方針を学校現場に押し付けるため、教育委員会事務局にその役割をおわせ、教育委員会の自主性を奪ってきたという問題があります。その結果、教育行政の中に閉鎖的で官僚的な対応も広がり、教育委員会は、地方の教育行政の意思決定を行う住民代表の合議体としての役割が、十分に発揮できていないという問題を抱えていると考えます。

 したがって本来、教育委員会制度は、制度発足当初の理念を具体化する方向の改革こそが必要であることを、わが党は一貫して主張してきました。教育は、こども達の成長、発達、人格の完成を目指すものであり、この目的を達するためには、こども一人ひとりの個性、創造性、自発性が尊重され、人として持っている潜在的な能力が十分発揮できるよう、教育環境を整備するための施策を実現していくことが重要なのであります。これらの教育の理念は、社会がいかに変化しようとも変わらない教育の本質的、普遍的原理であります。

 「教育の政治的中立」とは、政治的見解によって教育環境、教育施策が変遷することにより、教育の本質的、普遍的原理が歪められることのない制度設計を確立することを意味するのです。だからこそ憲法のもとでは、政治権力による教育内容への介入・支配は厳しく戒められているのであります。

 私は、「教育の政治的中立」を確保するために、多様な属性をもつ複数の教育委員による合議制である教育委員会制度が設けられていると理解していますが、「教育の政治的中立」を今後、新体制の下どのように担保していこうと考えているのか、市長および教育長候補者に答弁を求めます。 

 次に、「学校教育の質の向上」に関して、教育長候補者にお尋ねします。所信表明において、「特に力を入れて取り組みたい5つの施策」の2つ目に「学校教育の質の向上」が挙げられ、「教職員の資質の向上」「優秀な人材の確保」「個々の教員のモチベーションの向上」「各学校の実情に応じた教職員体制の構築」に取り組むとのことでありました。

しかしながら、期限付き講師に頼らざるを得ない慢性的な本務教諭不足と、それに伴う長時間・過重労働の問題については、教育現場においてとりわけ解決が急がれている深刻な問題であるにも関わらず、解決の糸口が全く見えてきません。

 この点についてどのように改善をはかっていくのか、具体的にお答え下さい。

 続いて、「学校教育の質の向上」に関して、教育長候補者にもう一点お尋ねします。所信表明では、「学校教育の質の向上」との関わりで「学校配置の適正化」を進めるとのことでありました。「学校配置の適正化」は言うまでもなく、児童・生徒の保護者や、地域住民の十分な理解と協力が不可欠であり、これはむしろ「地域とともにある学校づくり」をどのように進めるかという類の問題であることを指摘しておきます。その上で「学校配置の適正化」の進め方について、これまでの取り組みをどう総括されているのか、また「学校教育の質の向上」をはかるためには、教育効果が認められている「少人数学級」を積極的に推進するべきだと考えますが、合わせてお答え下さい。

 最後に、「私が最も大事にしたいのは、現場目線です。」という表明について教育長候補者にお尋ねします。

 私は、「現場目線」という問題と、冒頭にお尋ねした「教育の政治的中立」という問題は、表裏一体のものと認識しております。

 本市では、橋下前市長が、全職員に対する違法な思想調査を行おうとした時、本市教育委員会が否決し学校現場を守りました。まさに「現場目線」が「市長目線」の「不当な政治介入」を退ける判断を下したのであり、これは、教育委員会が首長から独立した意思決定機関だからこそできたのであります。その後、訴訟にまで発展した思想調査は高裁でも断罪され、ついに本市は上告を断念しました。これは、教育委員会の当時の判断が正しかったことを裏付けるものとなりましたが、教育委員会を首長のもとに置けば、前市政の時のような「不当な政治介入」がいっそう助長されるのではと懸念します。

 前市政時の教育行政を振り返り、「不当な政治介入」とは一線を画し、本当に「現場目線」を毅然と貫いてきたという認識をお持ちなのかお答え下さい。

 以上、大きく4点について、答弁を求めます。

 

◆吉村市長

 まず教育の政治的中立性に関してですが、これは解釈の幅がある概念だと思っております。ただ、教育基本法の中でこの教育の政治的中立性というのが明確に記載しておりまして、学校の教育活動については一党一派の思想に偏ってはならないということが明確に規定されております。私自身もそれは非常に大切な概念だというふうに思っておりまして、それをしっかり守っていきたいというふうに思ってます。

 今回の地方行法の改正についてもですね、政治的中立性をいかに守るかというその要請と、それから市民の代表である首長と教育委員会がいかに連携して充実した教育体制を整えるか、そういった利益交流の中で、そういった議論を十分にされた上で、今回の法整備がされたものと認識しております。今回その法整備によって改正された法に基づいて新教育長制度に移行したいというふうに考えております。

 この地方公共団体が行います教育、学術、文化に関する事務、これは広範にわたりますが、教育関係の事務については、その政治的、中立性を維持するということが強く求められていますから、公正による属人性の機関とは別に合議体の執行機関として教育委員会が設置されています。

 この教育委員会、教育委員会制度残っているわけであります。新制度におきましても市長から独立した行政委員会として、教育委員会を執行機関として残すということにされておりまして、引き続き政治的中立性、これは確保されることになるというように認識しております。

 また、非常に重要になってきます総合教育会議でありますが、それもすべてフルオープンにしまして、マスコミの皆さんから市民の皆さん、そして議会の皆さんのチェックもしっかり受けですね、その政治的中立性をはかりつつ市長として、しっかり教育委員会と議論をして、子ども達のそういった教育環境を整えることを邁進していきたいと思っております。

 

◆山本教育長候補

 まず、教育の政治的、中立についてでございますが、ただいま市長がご答弁した通りでございまして、その主旨を踏まえてまいりたいと考えております。

 次に、学校教育の質の向上についてでございますが、教育水準の維持、向上には教育環境の充実が重要であり、その中で教員が担う役割は大きいと認識しております。

 これに対し、本市では独自に学校における体制整備といたしまして、習熟度別少人数授業の講師配置をはじめ、副校長、教頭補佐、教頭補助の配置などの施策を強力に推進しております。また、教職員の負担軽減に向け、校務支援、ICTの活用や部活動の民間委託に関する研究などに取り組んでおります。今後、これらの施策を充実してまいりますことで教員がその持てる能力を十分に発揮し、学校が子どもの活気にあふれる場となるよう学校の活性化に向けて施策を推進する所存にございます。

 次に、学校配置の適正化の進め方についてでございますが、11学級以下の過小規模校につきましては、人間関係が固定化する傾向があり切磋琢磨の機会が少なく、教育活動の幅が狭くなる等の課題がございますことから、子ども達のよりよい教育環境の確保と教育活動の充実をはかるため、これまで38の小学校を対象として統合を実施するなど学校の適正配置に取り組んでまいりました。平成27年度からは、新たに分権型教育行政といたしまして、区と教育委員会とが連携して、学校配置のあり方を検討するとともに保護者や地域住民等との協議、調整を進めているところでございます。

 都心回帰により新たな課題となった過大規模校の対策も含め、子ども達の教育活動に最適な規模で人材や財源を適切に配分できますよう、区とも連携を強化し、今後ともさらに適正化の取り組みを推進してまいる所存でございます。

 また、少人数学級についてでございますが、全国的に少子化が進むなか、国会におきましては平成23年に公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律が全会一致で改正され、学級編成の標準を順次改定し、それに必要な財源の確保に努めることが附則に明記されております。安倍内閣総理大臣もこの附則の主旨を踏まえ、さらなる35人学級の実現に向けて鋭意努力していく旨の国会答弁を行っております。そういった経過を踏まえ、義務教育にかかる学級編成の標準の引き下げは、まさに国が責任を持って必要な財源を確保し、速やかに実施すべきであると考えております。

 次に、現場目線についてでございますが、私は先ほども所信表明でも述べましたように、学校や地域保護者等の意見を聞きながら施策等を検討、実施していくことが重要であると考えております。

 これまでも教育委員会におきましては、マネジメント改革として校長がリーダーシップを発揮した活気ある学校づくりができるよう各学校で校長が中心となり、独自の目標や取り組みを掲げた運営に関する計画を定め、そこに定められた目標の達成に必要な予算について優れた提案に対して重点的に予算を確保する校長経営戦略予算など、校長が裁量を発揮できる仕組みを構築するとともに、管理職を中心とした学校の組織マネジメント体制の改革を進めてまいりました。また、ガバナンス改革といたしまして、学校協議会を設置するとともに、各学校において学校運営に関する情報を積極的に提供し、保護者や地域住民等の理解や協力を得るよう取り組みを進めてまいりました。

 さらに、ニアイズベターの観点から、区長を区担当教育次長に位置づけ、保護者や地域住民、校長等の多様な意見、ニーズを地域に身近な区がくみ取りながら学校や地域の実情や課題により適応した取り組みが展開できるよう、今年度より分権型教育行政への転換がかかっていいるところでございます。私といたしましては、今後これらの取り組みをさらに進め、学校や地域、保護者との意見を十分にくみ取り対話をしながら、本市の子ども達が学力を身につけながら健やかに成長していけるようしっかりと教育行政を推進してまいる所存でございます。

 

●井上浩議員

 教育長候補者に2点再質問します。「学校配置の適正化の進め方」について、「こども達のより良い教育環境の確保と教育活動の充実を図るために、これまで取り組んできた。」とのご答弁でした。果たして本当にそうでしょうか。

 文部科学省の「公立小学校・中学校の適正規模・適正配置等に関する手引」には、つぎのようにあります。「学校規模の適正化や適正配置の具体的な検討については、行政が一方的に進める性格のものでないことは言うまでもありません。各市町村においては、学校が持つ多様な機能にも留意し、学校教育の直接の受益者である児童生徒の保護者や将来の受益者である就学前のこどもの保護者の声を重視しつつ、地域住民の十分な理解と協力を得るなど「地域とともにある学校づくり」の視点を踏まえた丁寧な議論を行うことが望まれます。」

 私は、文部科学省が指し示す立場に首尾一貫、徹することが何より重要であると考えます。しかしながら本市においては、「統合ありき」で、あるいは教育学的にも十分検証されておらず、課題が山積している「小中一貫校ありき」で、行政の一方的な都合を優先させて進めてきたのではありませんか。まず、この点について再度答弁を求めます。

 合わせて、教育長候補者が最も大事にしたいとされている「現場目線」についてです。橋下前市政時は、まさに「市長目線」の「不当な政治介入」の嵐が吹き荒れ、教育現場はその被害を著しく受けました。

 改めてお尋ねします。「不当な政治介入」とは一線を画し、本当にこども達や保護者、地域に寄り添い、「現場目線」を毅然と貫く覚悟がおありか、この点についても再度答弁を求めます。
 

◆山本教育長候補

 まず学校配置の適正化の進め方につきましては、従前より各学校の統廃合等につきましては十分に時間をかけ、地域、保護者の皆様方と十分なお話し合いを尽くして対応をしてまいりました。今後とも子ども達の十分な教育環境の確保のために、課題となっております学校に対しては、十分に地域、保護者のご意見をいただきながら、十分な時間と対話を心がけて学校配置の適正化を進めてまいりたいと考えております。

 また現場目線につきましては、先ほどもご答弁を申しあげましたが、今進めております様々な施策、あるいは新しい施策を進めていくうえで、私は学校や地域、保護者等の意見を十分にくみ取り、また対話を心がけながら、本市の子ども達が学力やあるいは社会性を十分身につけながら健やかに成長していけるよう教育行政を推進していきたいと考えておりますのでよろしくお願いを申しあげます。

 

●井上浩議員

 まず、学校配置の適正化の進め方については、関係者に対して十分に意見を聞くというご答弁でありました。そのご答弁しっかりと覚えておきたいと思います。

 同時に、最初にご答弁がありました少人数学級につきましては極めて消極的なご答弁でありました。国まかせにしていてはダメです。その効果、成果自体はお認めになっているわけですから、国任せにせずに本市としても積極的に取り組むように強く求めておきます。

 これからの本市の教育行政は、前市政によって残された深い爪痕とトラウマを修復、除去していくことが、まず優先的に行われなければならないと認識しております。前市政の教育改革の取り組みを継続するという立場は到底認められないと申しあげて私の質問を終わります。