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市議団の実績

環境科学研究所の廃止・独法化・統合への

北山議員の反対討論

北山良三市会議員

2014年12月19日

写真 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表し、平成25年 議案第300号「大阪市立環境科学研究所条例を廃止する条例案」およびこれに関連する議案第302号ないし305号に反対する討論を行います。

まず、橋下市長らが府市統合本部などで市立環境科学研究所と府立公衆衛生研究所の統合を進めようとした理由である「二重行政のムダ」という点について、これはまったく間違った認識であるということであります。

両研究所の調査・研究内容においては、環境監視・薬事など重複していない分野が大きく存在しています。また、重複している調査・研究分野であっても、都心部と郡部というエリアの背景の違いによって、実際の調査・研究内容には大きな違いがあります。さらには、両研究所の管轄エリアとして、大阪市内と市外とに分かれています。これらの現状は、市民の立場からみれば「二重行政によるムダ」どころか、それぞれに重要な役割を担っているということは明らかであります。

事実、最近の大規模で重大な広域的危機管理事象への対応でみても、1996年のO−157による大規模集団食中毒事件、2000年の雪印集団食中毒事件、2003年の重症性呼吸器症候群SARSへの対策、2008年の中国産冷凍ギョーザ薬物中毒事件、2009年の新型インフルエンザへの対策、そして、2011年からの福島第一原発事故に関連しての食品や大気・土壌などへの放射性物質の影響調査など、両研究所がそれぞれに重要な役割を果たしています。同時に、様々なレベルで両研究所間の連携・協力もはかられております。いくつかの問題点はあったとしても、独立行政法人化や統合をしなければ解決できない問題ではありません。 

次に指摘したいのは、国の衛生研究機関も地方衛生研究機関も、どこも「独立行政法人化」していないということであります。

これは、たまたまそうなっているのではありません。1997年の国立独立行政法人の法制化の際に、除外規定を設定し、重大な危機管理に直結する業務として国の衛生研究機関を「独立行政法人」の対象から除外したのであります。また、2003年の地方独立行政法人の法制化の際も、この考え方が踏襲されているのであります。その結果、全国79ヶ所のすべての地方衛生研究機関が「独立行政法人化」していないし、横浜市など、検討したところでも「独立行政法人化」を取りやめているのであります。

市立環境科学研究所と府立公衆衛生研究所は、大規模で重大な広域的危機管理事象が発生した場合だけでなく、日頃の調査・研究活動でも両研究所間での協力・連携がはかられているとともに、100年以上の歴史を持つ両研究所のそれぞれが、全国の衛生研究機関の中でもトップクラスの業績をあげているということも、大事な事実であります。各種学術誌への研究成果の論文投稿、学会での研究発表等での実績は、各方面から非常に高い評価を得ているのであります。

さらに、市立環境科学研究所や府立公衆衛生研究所の業務結果をもとに、保健所等が、事業者への営業停止や商品の回収命令などの行政処分をおこなうなど、公権力の行使が行われてきているということも見逃してはなりません。

市立環境科学研究所が担う「重大な危機管理に直結する業務」「公権力の行使の根拠を与える業務」というのは、予見的な研究や、日常的・基礎的調査の蓄積、突発的事態に備えた体制の整備などが必要であり、経済性・効率性を追求する「独立行政法人化」にはなじまないだけでなく、こういう取り組みを弱体化させてしまうことは明らかであり、許してはならないのであります。

2006年度の厚生労働省の委託研究報告「健康危機管理のための地方衛生研究所のあり方(提言)」では、「独立行政法人化はなじまない」とされています。2012年7月の厚労省健康局通知で、「地域保健対策の科学的かつ技術的中核機関として、地方衛生研究所のいっそうの充実強化を図ること」を自治体に求めています。今回の提案は、これらにも反する方向であるということも申し添えておきます。 

最後に、今回の提案は、大阪市の解体・特別区の設置への移行を前提とした「廃止」「独立行政法人化」「統合」であります。「特別区設置協定書」が10月27日の市会本会議で否決されており、この前提は否定されています。この点からも、今回の提案は到底認められないということも申し上げ、反対の討論といたします。