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市議団の実績

大阪市決算

くらしには冷遇 大型開発は厚遇

小川陽太市会議員

2012年11月6日

共産党反対討論

 大阪市議会本会議が6日開かれ、日本共産党の小川陽太議員が2011年度一般会計決算の認定に反対討諭しました。公明、自民、みらいの賛成多数で決算を認定しました。

 小川議員は、失業や賃下げ、年金の引き下げ、子どもの貧困の広がりと市民のくらしが深刻な状態にある中、市民のくらし応援には消極的な一方、国際コンテナ戦略港湾や阪神高速淀川左岸線2期事業などの大型開発に多くの税金が無駄遣いされている決算は認められないと表明しました。

 小川議員は、国民健康保険について「高すぎる保険料」が常態化する中、2年連続の大幅な黒字分すべてを累積赤字の解消に使ったが、本来は黒字の一部を少しでも限界を超えた保険料引き下げに当てるべきだったと指摘しました。

 保育所の待機児問題では、厚労省基準でカウントから除外されている「隠れた待機児」を加えると、2974人の待機児となっていると強調。待機児解消に向けた橋下徹市長の「個人 実施型の保育ママ事業を大規模に展開する」方針では、安全性の確保や事業の安定的運営に問題があると批判し、認可保育所を本格的に増やすことこそが待機児の解消につながるとのべました。

(2012年11月7日付しんぶん赤旗)


2011年度一般会計決算認定に反対する討論

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2011年度大阪市一般会計決算認定に反対する討論を行ないます。

 依然として、多くの市民のくらしは、失業、賃下げ、不安定雇用の拡大、年金の引き下げや介護保険料の大幅値上げ、子供の貧困の広がりなど、極めて深刻な状況にあります。

 また、国の政治において、現政権は社会保障や財政危機をどうするのか、長期にわたる日本経済の低迷をどう打開するかなど、日本が直面する問題について「展望」や「戦略」をまともに示すことが出来ず、完全に行き詰っています。

 そうした状況に、国民の政治への失望と将来への強い不安が一層広がっています。

 今こそ、本市として、市民のくらしを応援する施策を大胆に実施すべきであり、弱肉強食、自己責任を過剰にあおり立てる政治ではなく、本来の地方自治体の原点に立ち、その役割をしっかり果たさなければならないのであります。

 ところが、本決算にあらわれているのは、市民のくらしを応援するということには、いたって消極的である一方で、国際コンテナ戦略港湾や淀川左岸線期事業などの大型開発をはじめ、多くの税金のムダ遣いが継続されているという姿であり、到底認めることは出来ません。 

以下、具体的に指摘します。

 

まず、国民健康保険についてであります。

 国民健康保険料は「高すぎて払いたくても払えない」ことが常態化しています。40歳代の夫婦と子供2人の4人世帯で所得200万円の場合、保険料は約38万円、所得に対して19%もの負担になっています。市民の苦しい生活実態に合わない保険料を課しているのです。一方、国民健康保険会計を見てみると、2010年度に約114億円、2011年度には約74億円と二年連続で大幅な黒字を出し、本市は黒字分をすべて累積赤字の解消に充てました。

 そもそも、国保会計が高額な保険料を市民に課しておきながら、慢性的な赤字になる原因は、国が本来出すべき国庫支出金の負担割合を、1984年度60%から2011年度には25%まで低下させている事におもな原因があります。また、現在市独自の施策に対して行なわれるペナルティー減額の累計額も334億円となっており、国保会計の赤字を生み出す原因は国の政策によるもので、市民はその犠牲となっているのであります。

 したがって、黒字の一部を少しでも限界を超えた保険料引き下げに当てるべきで、累積赤字の解消は、国に適正な負担をもとめ、見通しを持って徐々に解消していくという姿勢こそ、自治体本来の立場であると申し上げておきます。 

また、追い打ちをかけるように、保険料滞納に伴う財産調査や差し押さえを急増させています。財産調査は、2006年度15,171件だったものが2011年度721,489件へと5年間で47.6倍に激増させ、しかも口座があるかどうかもわからない銀行にまで無差別に調査しているのであります。財産調査での実態は、大半が生活困窮者であります。個別の事情への配慮もないまま、強権的に取り立てるというやり方は、国民健康保険という社会保障制度への信頼を揺るがす行為といわなければならず、見過ごすわけには行きません。

 

 続いて介護保険について申し上げます。

 20122月から、それまで各区役所で行なっていた介護認定の事務手続きを、「認定事務センター」で一元的に取り扱う変更を行ないました。そして、その大半を民間事業者に丸投げしており、この民間事業者の募集広告によると、経験不問とされ、雇用形態も契約社員・アルバイトと責任を果たせるかどうか不安に感じる内容であり、その結果、介護認定が大幅に遅れ、介護現場に大混乱をもたらしています。

 介護保険制度では、介護認定は申請から決定まで30日以内となっています。しかし、認定まで1ヶ月半から2ヶ月間も待たせるケースはざらにあり、ひどい場合には90日もかかるケースもあります。これは、一刻も早く介護サービスを必要とする市民に対して、円滑に介護認定をすすめるという、行政の役割を後退させており、経済効率だけを判断基準とする、こんなひどいやり方は到底認められないのであります。 

 

 次に教育の問題についてです。

 貧困と格差の広がりが、大阪の子供たちにも深刻な影響を及ぼしています。貧困、虐待、不登校、など抱える問題は深刻さを増しています。こういう時だからこそ、公教育の役割を発揮し、子供を分け隔てなく大事に育み、一人ひとりに行き届いた教育の実現に向けて、自治体が教育環境の充実に向けて頑張るべきです。

 しかし、大阪市は教育予算を増やすどころか減らし続け、学校維持運営費は2007年度、147億円から2011年度には115億円へと、実に32億円も削減しているのです。そのため「学校現場で先生が必要だと思うものを「買って」といえない状況が広がって」おり、実際の教育現場に深刻な影響を及ぼしています。

 例えば「教科書改訂の際、新しい指導書が教員に十分に行き届かかず、若い教師が増えている中で、教育の水準を引き上げていく環境が不十分になっている」事や「学校の施設整備で、窓ガラスが割れた男子更衣室に、ベニヤ板を当てたままにしている状況」「クラブ活動用の施設が壊れたまま放置されていたり、プールの底面の塗装がはがれて授業中に足をきって流血したこと」など、私が調査に基づき、具体的に、現実の問題を指摘したにもかかわらず、理事者は「子供たちの教育活動に支障のない範囲での節減に留め、必要な予算の確保に努めてきた。」と答弁したのであります。

 

 つぎに、保育所の待機児問題についてです。

大阪市が発表した本年41日現在の待機児数は664名であり、これに、厚生労働省の基準での待機児のカウントから除外されている「隠れた待機児」2,310名を加えると、実に2,974名の待機児となっています。

 先日の決算特別委員会で我が党委員が、「2010年度から、待機児解消に向けた専任担当部署設置の体制を解除し、2011年度もそのままにして適切な対策を講じてこなかったことが、待機児増加の一因になっている」と指摘しました。事実、専任体制をとってから、一応は待機児数が減ってきていたのに、専任体制解除後に、またV字型で急増しているのであります。こう言う状況を生み出している経過を承認するわけにはいかないのであります。

 加えて申し上げますが、橋下市長は、「待機児解消に向け、保育の過剰供給状態をつくる」として、「個人実施型の保育ママ事業を大規模に展開する」との方針を示していますが、これには、子供たちの安全性確保の問題や、事業の安定的運営が維持できない問題などがあることからも、認可保育所を本格的に増やすことが、待機児解消につながるのであり、ここにこそ、真剣に取り組むべきであると、厳しく指摘しておきます。

 

 つづいて市営住宅についてであります。

 本市は、「住宅は十分に足りている。」といって、この30年間、新規建設を行なっていないばかりか、予算に計上した2002年度から2011年度までの、10年間の計画個数10,400戸に対して、建設戸数は9,356戸にとどまっており、1,044戸もの未着工を残しています。

 拡大する非正規労働や母子父子家庭、高齢世帯などの層では、「市営住宅入居の要望」は非常に強いにもかかわらず、住宅管理個数は2002年度末104,268戸から2011年度末101,542戸へと、2,726戸も減らしています。その結果、20122月募集では、一般世帯向け募集倍率の最高は227倍、平均では、22.3倍、単身者の募集倍率はこれを上回る事を見ても、市民の願いに答えていないのは明らかなのであります。

 

 つぎに、国際コンテナ戦略港湾や淀川左岸線2期事業など税金のムダ遣いである大型開発について申し上げます。 

まず、国際コンテナ戦略港湾についてです。

 港湾局は、国際競争力強化、コンテナ船の大型化に備えるといって、夢洲に700億円もの巨費を投じて、水深15m・16mという大水深高規格のコンテナ埠頭を整備しました。

 しかし、大阪港には、中国など東アジアからの1万トン未満という小型のコンテナ船の入港がほとんどで、基幹航路といわれる北米向けの大型船の入港は、2000年度362隻が2011年度243隻と一貫して減り続けています。それにもかかわらず、国の「国際コンテナ戦略港湾」に神戸港とともに名乗りをあげ、選ばれるやいなや、主航路を14mから15mにするムダな浚渫工事に総事業費58億円、本市負担19億円もかけているのであります。その上、

 夢洲C12岸壁が水深16mだから、主航路も16mまで掘り下げなくていけない、とばかりに、その土砂の処分のためとして六百数十億円もの費用を要する新人工島の護岸建設を復活させようとしているのです。

 決算特別委員会で「国際コンテナ戦略港湾の方向ではなく、中国アジア諸国との交流を通じて、大阪港の着実な発展をはかるべき。」と指摘したところ、基幹航路の維持拡大という路線にしがみつく姿勢を示し、「具体的にどのようにはかるのか。」と重ねて質したのにたいして、当局は夢洲の後背地に企業を誘致し、そこから輸出の荷物を作り出すとか、日本海側の港湾から出ている荷物を琵琶湖東岸に作るインランドポートを通じて無理やり引っ張ってくるなどと答弁したのであります。

 いずれも空想的な甘い需要見積もりに基づいているのであり、到底認めることは出来ません。

 

 また、淀川左岸線2期事業についてです。

建設局は、広域幹線道路ネットワークの形成や、都心北部地域での交通混雑緩和などを理由にして、淀川左岸線2期事業を本決算でも21億円もの多額の公金を投入して進めています。

しかし、本市の自動車交通量は、昭和63年度をピーク時に年々減り続け、平成22年度はピークに比べ20%も減少しています。これから更に人口減少、高齢化社会が進行し、自動車交通量も確実に減る見通しの中で、これ以上の高速道路建設は必要ありません。しかも、総延長4.3キロメートルのうち、4キロメートルにわたり、スーパー堤防を開削し、トンネルを堤防の中につくるという、全国でもいまだかつて行なったことのない工事をしようとしており、多くの学者、専門家などから地震発生時の安全性に大きな問題があると指摘されているのです。

 そして、何より淀川左岸の良好な環境を壊すことにつながる訳です。不必要で、震災などに強い街づくりにも逆行する高速道路建設は中止すべきです。

 

 以上、2011年度大阪市一般会計決算の認定に反対する討論といたします。