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市議団の実績

「職員の政治的行為の制限に関する条例案」への

山中議員の反対討論

山中智子市会議員

2012年7月27日

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、議案第209号「職員の政治的行為の制限に関する条例案」に反対する討論を行います。 

大阪市役所では長年にわたって、不適切な労使の癒着、選挙の際などの一部労働組合のあるべき姿からの逸脱などが続いてきたことは事実です。この悪しき組織風土と決別し、すべての職員が、住民全体の奉仕者としての自覚と誇りをしっかりともち、市民に信頼される職員集団をめざして邁進すべきは当然です。 

しかし、だからといって、休日などのプライベートな時間をふくめて、きわめて広範に政治的行為を禁止するような条例は許されるはずがありません。 

以下、具体的に申し上げます。

まず、このような条例をつくるべき根拠についてです。

市長は本条例案の提案にあたって、野村修也元特別顧問を代表とする第三者調査チームの報告書に基づき、区役所内の政治活動、区長会議での選挙情勢の報告などが行われていたことをあげておられます。しかし、いずれも、地方公務員法や公職選挙法などを適用すれば対処できることであるうえに、第三者調査チームの報告でも、「これまでの調査では地公法や公選法において規制される政治活動に明確に該当するような行為があったとは評価できない」としているのです。まして、勤務時間外に政治的活動をし過ぎて、職務に支障をきたした、とか、職員が、休日にデモや集会に参加したことで、公務の中立性が損なわれた、などただの一言も書かれていません。職員の個人的な政治行為を規制する必要性などまったく読み取れず、立法の根拠はないと断ぜざるを得ません。 

 第2に、あまりに広範であいまいな規制項目についてです。

本条例案は、地方公務員法では禁止されていない、政党または政治団体の機関紙の発行、編集、配布やその援助、デモ行進の企画、組織、指導やその援助、集会などで政治的な意見を述べること、政治的目的を有する文書・図画などの著作・発行・編集・配布・回覧などなど国家公務員法に列記されている10項目もの政治活動を禁止の対象としています。「選挙で1票投じる以外はいっさい禁止となりかねない」と報じた新聞がありましたが、言い得て妙だと思います。政治的行為について、こんなに広い範囲にわたりあいまいな表現で規制することは、民主主義の根幹である表現の自由、政治的活動の自由に関して、大きな萎縮効果をもたらすことになります。

市長も、この間、記者会見等で、「民主主義社会においては、政治活動の自由は最大限に保障されなければならない」とか、「表現の自由はひとたび傷つけると、その萎縮効果によってとんでもない制限になるから、制約については必要最小限にしなきゃいけない」と、表現の自由、政治活動の自由の大切さを繰り返し語っておられます。公務員も同じではありませんか。勤務時間内の活動はしない、市の物品などは使用しない、肩書や立場を利用しないなど地方公務員法や公職選挙法を厳格に遵守しつつ、一人の国民・市民として、よりよい社会をめざす活動をいたずらに規制・禁止することは民主主義破壊にほかなりません。さらに言えば、「地域住民の繁栄なくして自治体労働者の幸福なし」という自治体労働者としての原点に立つならば、市民の不安や苦しみに寄り添い、よりよい社会や地域をつくるために議論し行動することは自然な姿ではないでしょうか。これを条例によって禁止する発想からは、市長には一切逆らうな、という歪んだ公務員像が透けて見えるではありませんか。 

 第3に、本条例案のもととなっている国家公務員法についてです。

本条例案の禁止項目は国家公務員法の引き写しですが、これ自体が、時代錯誤であるとともに、国際社会から強い批判をあびています。戦後、日本に対していったん民主化政策をとっていたGHQが、国際情勢の緊張が強まるなか、労働運動の弱体化を狙って国家公務員法の規制を大幅に強めるよう指示し、国公法が改定され、現在のものになりました。その2年後の1950年、地方公務員法制定にあたり、国公法の規制は人権蹂躙であり、ゆきすぎだ、という国会での議論のすえ、地方公務員法にはこれらの規制は盛り込まれなかったのです。60年前の亡霊を、いま、引写しにするなど恥ずべき時代錯誤です。

さらに、この国家公務員法が適用されたケースについて東京高裁は憲法違反の判断を下し、現在、最高裁で争われています。そうしたなかで2008年には、国連の自由権規約人権委員会から日本政府に対して、「表現の自由や公的な活動に参加する権利を不合理に制限している法律を撤廃すべきである」という勧告が出されています。

これらを踏まえて、市長も「国家公務員法に問題点があるのはわかっている。違憲となれば見直す」と言っておられますが、憲法に照らしても、時代の流れに照らしても、国際標準からみても、一日も早く撤廃されるべきものを引用してまで、本条例案がねらうものは、結局、市長の言いなりになる物言わぬ公務員であれという恫喝以外の何ものでもないのです。 

修正を加えたとしても、職員を免職を含む懲戒で脅すものである以上、時代錯誤の人権侵害と異常な公務員敵視という条例案の本質はなんら変わるものではないと申し上げ、反対討論といたします。