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市議団の実績

「大阪市児童福祉施設最低基準条例案」

に対する井上議員の反対討論

井上浩市会議員

2012年3月28日

 3月28日の閉会本会議で、井上浩議員が「大阪市児童福祉施設最低基準条例案」に対する反対討論を行いました。条例案は、維新の会、公明党、自民党、OSAKAみらいの賛成多数で可決されました。

 尚、付帯決議については全会派が賛成しました。


 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表致しまして、議案第176号「大阪市児童福祉施設最低基準条例案」に反対する討論を行います。

 本条例案は、「地域主権改革」一括法により、大阪市を含む35の自治体で、2012年度から3年間の暫定措置として、保育所の面積基準や保育士の配置基準などの緩和ができるとされたことを受けて、提案されたものであります,

 一括法の狙いは、国のナショナルミニマム保障への責任の縮減にあることは、明らかでありますが「地域住民が自らの課題に自主的に取り組む」というのが法の建て前である以上、もともと低い国基準を今以上に向上させることが本来求められているのであります。

 橋下市長は就任してまだ3ヵ月を過ぎたところであり、認可保育所の整備という「本流」の待機児童解消施策も、市長が力を入れるとしている個人型保育ママ事業も、これから始まるという段階であるため、施策の検証も当然のことながら現時点ではできません。

 待機児童解消施策に、まだ何も取り組んでいないのに安全基準を切り下げるということは、「禁じ手」にいきなり手をかけるも同様であり断じて認める訳にはいきません。

 以下具体に指摘致します。

 国基準は、現行0歳児・1歳児について、乳幼児一人あたり1.65u又はほふく室3.3u以上としていますが、これに対し大阪市は現行5.0uと、国基準を上回る基準を設けています。ところが、本条例案では、0歳児・1歳児について、ほふく室3.3u以上という規定が削除されているのであります。また、2歳児以上についても、国・市ともに1.98u以上としていた基準が1.65u以上と、これも現行基準を下回るものとなっています。

 私は、「本市独自の現行基準を引き下げること自体認められないが、いくら下げるにしても、せめてほふく室3.3u以上という最低限の基準は維持するべきではないか」と質問したのに対し、市長は「乳児室1.65u 以上という国の基準に合わせる」というだけで、ほふく室3.3u以上をなぜ削除するのかについての答弁はありませんでした。

 「ほふく室3.3u以上」を規定しなくてもよいということは、赤ちやんのほふく、つまりハイハイするためのスペースは確保しなくてもよいということになります。

 0歳児・1歳児の赤ちやんが、成長とともにハイハイすることぐらい、こどもでも知っている事ですが、本条例案は、人間の発育過程すらふまえず、待機児童解消の効率性のみを追求したものであり、こどもたちをただつめ込むだけの「モノ」としかとらえていません。安全を度外視した人権感覚のカケラもないものであります。

 乳幼児1.65u又はほふく室3.3u以上という基準自体、1948年の児童福祉法制定以来、64年間ただの―度も改善されていません。この基準は敗戦直後の混乱期における大変貧しい日本の経済状態を反映したものであり、今日からみればいかに不十分なものであるかは論を待ちません。だからこそ児童福祉法では、都道府県が地域の実情をふまえて、最低基準を超える設備を整備し運営することや、厚生労働大臣が最低基準を常に向上させるように努めることを求めているのであります。

 本条例案の基準は、敗戦直後の基準さえ下回っているのですから、「大改悪」以外の何物でもないことは、誰の目にも明らかです。

 また、厚生労働省が2009年に全国社会福祉協議会に委託した、保育所の最低基準のあり方についての調査研究の報告は、2歳未満で4.11u以上、2歳以上2.43u以上が最低限必要であり、これに遊び等の面積が確保されるべきというものでした。さらに現行水準は、諸外国と比べても極めて低レベルであるとも指摘されています。

 この報告に照らせば、本条例案に規定されている1.65uの2.5倍の面積が、本来は必要だということになるのであり、この点からも保育の専門性を全く無視した中身だと言わなければなりません。

 こうした研究報告をふまえ、厚生労働省は昨年、1歳児は「ほとんどほふくする」、0歳児も「相当数ほふくする」としてほふく室の確保についての技術的指導を行なっていますが、市長はそうしたことも全く意に介さず、あくまで3年間の時限措置だと言い逃れに終始したのであります。

 しかし、時限措着だとはいえ、安全基準に手をかけることに、他の自治体は慎重な姿勢を見せており、「保育所の定員を増やすことで、待機児童ゼ口を目指す」という自治体が圧倒的多数であり、今回基準を引き下げるのは、35自治体中、東京都と大阪市だけであります。東京都でも、0歳児・1歳児については2.5u以上、しかも基準の引き下げは年度途中に募集する場合に限るとされているのであり、年度当初からいつでも1.65u以上という極めて低い基準につめ込めるようにしようという大阪市の条例案が、いかに突出してひどいものであるかが浮き彫りになっています。不十分な国基準をも下回る基準を保育所に持ち込み、3年間事故を起こさないという保障が一体どこにあるのでしょうか。

 さらに、1歳児の保育士配置基準を本市の独自基準5:1から6:1にしてしまう点も大問題です。22日の文教経済委員会でも、各委員から、「災害時に対応できないのではないか」「障害のあるこどもはもとより、こども達に目が行き届かなくなるのではないか」といった安全面を問題視する意見が多数出されました。

 京都市では、保育士配置基準を引き上げるということが、3月の予算議会で提案されているのであり、本来京都市のように、現行基準を引き上げていく努力が各自治体に求められているのであります。

 こども達の命と安全を脅かす本条例案はきっぱりと撤回するべきであると申し上げ、反対討論と致します。