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市議団の実績

大阪市議会決算認定 

市民に負担押し付け わたし議員が反対討論

わたし考一市会議員

2010年12月14日

 大阪市議会閉会本会議が14日開かれ、日本共産党のわたし考一議員が2009年度一般会計決算の認定に反対の討論をおこないました。自民、公明、民主、維新は、決算の認定に賛成しました。

 わたし議員は、働く人の賃金が減り続け、府の失業率が全国最悪の状態となる中、大阪市は住民の福祉の増進に努め、暮らしを守るという自治体本来の役割を発揮するどころか、スーパー中枢港湾事業などに巨費を投じる一方で、国保会計ヘの繰り入れの削減など市民に負担を押し付ける決算は認められないとのべました。

 国民健康保険について、滞納を理由に保険証を区役所窓口に留め置き交付しないのは、市民のいのちと健康を守ることよりも保険料徴収が第一という国保法の精神にもとる許されない態度だと批判しました。

 また、財政再建と称して市民に負担を押し付ける「市政改革基本方針」を批判。財政難のツケを市民に押し付けることは許されないとのべ、公債償還基金からの借り入れによって公債費の平準化を図り、市民の暮らしを守りながら財政再建への道を歩むことこそ「基本方針」とすべきだと強調しました。

(2010年12月17日付しんぶん赤旗)


 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2009年度大阪市一般会計決算認定に反対する討論を行います。

 今、日本経済は「大企業を応援すれば、経済が良くなり、やがて国民の暮らしも良くなる」というやり方が成り立たなくなってきた事を、様々な指標が示しています。その最大のあらわれは、12年間にわたって働く人の賃金が下がり続けていることです。国税庁の「民間給与実態統計調査」からみると、1997年の平均467万円から、2009年には406万円へと、61万円も下がりました。こんな国は世界にもほかにありません。

 一方では、大企業のため込み金――内部留保は増え続け、244兆円にも達し、現金、預金だけで52兆円と「空前のカネ余り」となっています。ここにただすべき日本経済の最大のゆがみがあると言わなければなりません。

 失業も深刻です。総務省が先月30日に労働力調査を公表しましたが、10月の完全失業率は前月比0.1ポイント悪化の5.1%でした。悪化は4カ月ぶり、5%以上は8カ月連続となりました。同時に公表された7月〜9月期の都道府県別完全失業率で最も高かったのは大阪府で沖縄県の7.4%を越す7.7%で全国最悪の状況となっています。

 こうした中で、本市には住民の福祉の増進に努め、暮らしを守るという地方自治体本来の役割を発揮することが、強く求められているのであります。

 ところが、本決算にあらわれているのは、スーパー中枢港湾や夢咲トンネル、北港テクノポート線、淀川左岸線2期事業などに多額の費用を投じる一方で、国民健康保険会計への繰り入れを削減、わずかの難病患者見舞金を打ち切り、学校維持運営費を大幅にカットするなど、市民には負担を押しつけ、大型開発は優先するという姿であります。また、市長公約であった、中学校給食実施のためのとりくみはまったく成されておらず、到底認めることはできません。

 

 以下具体的に指摘いたします。

 第一に市民の暮らしや教育・子育てについてであります

 まず国民健康保険についてであります。

 いま、保険料を1円以上滞納していることを理由に区役所窓口で保険証を「留め置き」にされ、通常保険証が未交付になっている世帯が1,629世帯、短期証では21,876世帯、資格証を合わせれば33,884世帯もの人が保険証を交付されていない異常な事態であります。

 わが党委員が、国保法第1条は「社会保障である。国民皆保険制度の一翼を担うものであり、低所得者などのセーフティーネットとなっている」と強調し、滞納があるからといって被保険者に制裁措置をとり、事実上の無保険者にすべきではないと批判しました。これについて理事者は「今後も収納対策を積極的にすすめる」と開き直ったのであります。とんでもないことです。市民のいのちと健康を守ることよりも保険料徴収が第一という、国保法の精神にもとる許されない態度だと言わなければなりません。

 また、介護給付費準備基金の剰余金は87億円までになっており、準備基金の本来の役割である保険料の調整、つまり引き下げのために活用すべきであると強調しておきます。

 

 次に教育・子育てについて指摘しておきます。

 大阪市の合計特殊出生率は2009年度1.24。全国平均の1.37をも下回り、経済的な要因もあいまって少子化に拍車をかけています。大阪市が「安心して子育てを」というのなら、せめて病気の時くらい安心して医療を受けさせたいと願う親の思いに応え、所得制限なしで中学校卒業まで拡充すべきだと求めたのに対し、市長は、これを拒否し子育て世代に背を向ける冷たい答弁に終始したのであります。

 また、市長は中学校給食の実施について、「任期中に実施時期を明らかにしたい」と答弁されました。しかし、市長の公約は、中学校給食の実現をするということであり、実施へむけた第一歩をすみやかに踏み出すことこそが求められているのであります。本市会では10月に「市立中学校での完全給食の早期実施、及び実効性ある実施推進体制を早期に確立することを強く求める」決議がされているにもかかわらず、市長の答弁はこれを全く尊重しない、やる気のない答弁だといわなければなりません。

 言うまでもなく、全国ではすでに80%以上の中学校が完全給食を実施しており、遅れている大阪府下でも我が党委員が紹介したように富田林市が自校炊飯方式でスタートさせました。本市でも早急に実施するよう求めておきます。

 さらに、小中学校一般教室へのクーラー設置についてであります。

 今年の記録的な猛暑の中で、全国の自治体が喫緊の課題として、財政が厳しい中でも、子ども達の健康と教育環境が最優先だとして、クーラー設置に足を踏み出しているのであります。府下でも枚方市など8市が設置しています。我が党委員が全国一暑い大阪市でこそ、早急にクーラー設置をと、もとめたにもかかわらず、教育委員会は、いまだに、財源、環境の問題、教育上の課題などをあげつらい、結局、検討していることは、わずかの「夏期休業期間を増やすこと」ではあまりにもお粗末です。体温を超えるような、むせかえる教室の中であっても、子ども達は、汗をぬぐうことや下敷きで扇ぐことしかできません。このような実態に市長や教育長は、胸が痛まないのでしょうか。まさに児童虐待です。真っ先に検討すべきはクーラーの設置であるという事を改めて強調しておきます。

 また、市長は教育日本一を目指すといいながら、一般会計にしめる教育費の割合はわずか5.1%と、政令市で最下位というお粗末な状況であることをこの際、指摘しておきます。

 

 第2にまちづくりの問題です。

 まず、市営住宅の建替え、新規建設についてであります。

 本市は「市営住宅は、十分に足りている」と繰り返し、この30年間もの間、新規の建設をおこなっていないばかりか、計画戸数48800戸に対し8647戸も未着工を残しているのであります。わが党委員が市民の市営住宅入居の要望は極めて高く、過去10年間の定期募集では、最高1608倍などをはじめとして、全体として、平均30倍にものぼっており異常な倍率であることを指摘しました。市民の願いに答えるために新規建設を求めましたが、理事者は「定員割れや応募のないものもある」などと、わずかにある実態を、さも全体にあるかのようにのべ、良質で低家賃の住宅を望む市民ニーズに背をむける答弁をおこなったのであります。

 次に商店街対策についてです。

 長引く不況と消費低迷の中、商店街は深刻であります。本市の空き店舗数は、一商店街あたり、全国平均の5,3店舗を上回り7店舗となっています。如何に苦境に追い詰められているかは明白であります。ところが、肝心の商店街対策費は毎年減額され、2009年度決算では05年度の3分の1まで大幅に減額されているのであります。

 わが党委員が、アーケード設置事業返済金等で重荷を背負い、それに追い打ちを掛けるように商店街対策費の大幅減額で電気代補助打ち切り、商店街連盟への補助金削減などによって意欲を大きく後退させていると指摘したところ、「意欲と工夫を伸ばすという視点から、自らが主体的に商店街の活性化を図るというところを支援する」などと、活性化の責任をもっぱら商店街に転嫁し予算削減を正当化する答弁に終始したのであります。とんでもありません。

 活性化への希望がもてる支援策を講じるためには、対策費の大幅増額、意欲や工夫を引き出し励ます、ハード、ソフトの両面から支援をおこなうべきである事を強く求めておきます。

 

 第3に大阪市職員および教職員に対する成果主義賃金制度と評価、育成システムなどについて指摘しておきます。

 大阪市は2006年から人事評価制度を強行実施しました。この制度は経済産業省でさえも、多くの従業員がモチベーションを低下をさせていると指摘をし、民間企業でも見直しがされている問題の多い制度であります。

 大阪市でも同様で、市民に奉仕するのではなく市民いじめが横行するなど、様々な問題がおきています。例えば市税事務所では納税者の立場に立った対応ではなく、差押競争で会社が倒産に追い込まれるという事態が起きていることや、国保でも徴収強化が進められるなど、職員が成果主義をバックに債権取り立て屋まがいの行動に駆り立てられている実態が明らかになりました。

 さらに教育現場でも成果主義について評価者、非評価者とも成果はあがっていないと指摘、批判をされる結果が報告されています。わが党委員は直ちにこうした制度は見直すべきと求めましたが、当局は現行制度を今後も漫然と継続するという答弁に終始したのであります。

 続いて職員の健康問題と非正規雇用の問題であります。市長はこれまで8500人の職員を削減したと自画自賛していますが、こうした中で精神疾患などで休職に追い込まれる職員が年々増えているのであります。ある区役所では12名の休職者のうち、11人が精神疾患が原因、という職場さえあります。また、教職員についての発生率は全国平均の3倍というひどさです。こうした事態に市と教育委員会は何の痛み感じないのか、何の対策も打たれておりません。管理者として失格だという事を申し上げておきます。

 また、官製ワーキングプアについて保育所等で、臨時的な任用職員、非常勤嘱託職員、任期付職員等が配置され、その割合は4割にも及んでいます。まさに異常といいようがありません。しかもフルタイムで働いても月額14万3400円、育休の任期付職員は15万1100円という低賃金。その上、臨時的任用職員96名は全員が5年以上働いていますが正規雇用もされず、長年劣悪な条件におかれ続けているのであります。我が党委員がこのような脱法行為は改め、職員の採用を図るなどして非正規職員の改善おこなうよう求めましたがこれを拒否する答弁をおこなったのであります。

 

 次に、公益通報をうけた教育委員会が、教職員に対し尾行を行っている事が常態化している事があきらかになりました。我党委員が、公益通報があった際には、学校長や本人に確認をするなどの当然の初期対応がなされ、問題があれば是正、指導が行われるべきであって、通報、即、犯罪者扱いをする対応は重大な人権侵害であると指摘。当該、教職員に謝罪をし信頼を保てる対応に改めるよう求めたのに対して、教育長、および平松市長とも、今後とも続けるとの驚くべき答弁を行ったのであります。まさに言語道断、絶対に許される行為ではありません。警察でさえも任意で事情聴取するのが通例です。ましてや犯罪をおかしたわけでもない職員に、予断と偏見でもって秘密警察まがいの尾行をおこなう何の権限も理由もありません。他に仕事はないのかと言わなければなりません。直ちにこうした行為は中止するよう、あらためて強く要求しておきます。

 

 第4に同和問題について指摘しておきます。。

 私は4月に開設された旧同和地域の市民交流センターの人権協会に対する委託費が難波などの市民学習センターなどと比較し、1.5倍になっている事実や、人権相談では、他都市のほとんどが人権擁護委員会と連携して行われているのに対し、本市ではこれに加えて、別枠で8千500万円もの委託費で人権協会に委託し、2重に人権相談が行われている事をあきらかにしました。また、生徒数141人の旧同和校・栄小学校には教職員が計33名配置されているのに対し、生徒数137人の東成区・東小橋小学校には半分の16名しか配置されていない事を示し、同和特別対策は依然として残されている実態を指摘しました。市長はかねてから同和問題について特別対策、特別扱いをするつもりは毛頭ございません。と、いけしゃーしゃーと答弁されていますが、これはまさに白を黒といいくるめるものだといわなければなりません。同和事業は新たに装いを変えて再構築・継続されているのが実態です。特別対策、特別扱いは完全に終結すべき事を重ねて求めておきます。

 

 最後に大阪市経済成長戦略ならびに市政改革基本方針についてふれておきます。

 私が「北ヤードと臨海部を大阪経済の2つのエンジンと位置づけ、しがみつくやり方をやめて、これを転換し、市民のくらし、中小企業への直接支援の施策こそ実施すべき」と求めたのに対し市長はほとんど具体性のない、中身のない答弁に終始したのであります。

 本市の成長戦略は冒頭に申し上げた「大企業を応援すれば、経済が良くなる」という破綻済みの政策に固執し、不要な高速道路や関空アクセスのための鉄道網などを整備し、関西財界が要求するムダな開発を推進するものであって、なんら成長を保証するものではありません。

 いま、打開方向を示せない日本経済に関わって、注目すべきいくつかの議論が発信されはじめています。例えば、新日鉄系シンクタンクの北井義久氏は、「日本に必要な成長戦略とは『賃上げターゲット』政策だ」とのべ、みずほ総合研究所は10月に発表したリポートの中で、大企業内部留保、企業の貯蓄超過幅拡大に注目しながら、賃上げや雇用拡大を提言しています。また、セブン・アイホールディング名誉会長の伊藤雅俊氏は「資本主義のあり方を公益という観点から再考すべき時代が来た」と語っています。現在の日本経済の停滞を克服するためには、「労働者の賃上げ」「内部留保の活用」という主張が次々に出されているのであります。

 今や、財界系の研究機関でさえも、賃上げで家計を応援する事が必要と述べざるをえない状況です。大阪市の「成長戦略」も、市民のくらし、家計を応援し、市営住宅建設をはじめとする生活密着型公共事業や商店街支援、固定費補助などで中小企業を直接応援する立場にたって戦略を全面的に見直すべきであります。そして、国に対しては不安定で低賃金、生活保護増大の要因ともなっている、労働者派遣法の抜本改正を要求すべきであります。

 市政改革基本方針案についてでありますが、同方針案は他都市水準を上回っている事業を列挙し見直しの対象とされています。しかし他都市に比べて劣っているもの、例えば中学校給食、子供の医療費助成、教室のクーラー設置、少人数学級、虐待通報数と比べると非常に少ない児童福祉司の配置数、などについては全く検証・精査されていないのであります。

 結局、市政改革基本方針は、財政再建と称して他都市水準を上回っている事業を見直し、他都市にくらべ劣っている事業についてはひたすら無視をする、これでどうして「基本方針」が描く「安全で安心な住みやすい大阪市、高い都市格をもつ大阪市、そしていちばん住みたいまちへ」と展望できるんでしょうか、まったく根拠がありません。

 我が党が提案しているように今日の財政難は市民にはかけらの責任もないわけであります。財政難の多くの責任は政府と、巨大開発と不公正乱脈な同和行政を推進してきた歴代市長であり、これに賛同してきた旧「オール与党」の諸君であります。よって、そのツケを市民におしつける事はゆるされません。公債償還基金からの借入によって公債費の平準化をはかり、市民のくらしを守りながら財政再建への道を歩むことこそ「基本方針」とすべき事を強調しておきます。

 

 以上をもって本一般会計決算の認定に反対の討論と致します。ありがとうございました。