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市議団の実績

2010年度大阪市一般会計予算案への

江川議員の反対討論

江川繁市会議員

2010年3月26日

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、2010年度大阪市一般会計予算案に対する予算組み替え動議に賛成し、原案に反対する討論を行います。

 今、長引く経済危機のもとで、国民の暮らしの実態はきわめて深刻です。失業、賃下げ、倒産など、どの指標をとっても史上最悪であります。こうした中で大阪市に求められているのは、国に対して悪政の転換を促すとともに、住民の福祉の増進という地方自治体の原点に立ち返って、市民の暮らしを守るためにあらゆる手立てを尽くすことです。

 ところが、予算原案は、本市独自の高齢者・障害者・子ども向けの予算を削り、子どもの貧困が広がっているのに就学援助の予算を後退させる一方で、一部の企業を優遇するための「経済特区」の創設をめざし、夢洲造成地の基盤整備や淀川左岸線2期事業などには重点的に予算を付け、さらには市民交流センターを開設するなど同和事業の終結にも背を向けるものです。

こんな予算原案は到底認めることはできません。以下、具体的に指摘します。

 

第一は、市民の暮らしや福祉についてであります。

まず、国民健康保険についてです。

高すぎる国保料を引き下げるために、我が党委員は、保険料の収納率が最も低くなっている「所得300万円世帯」で、重度障害者1人を含む4人世帯の保険料は49万4000円であるのに対し単身世帯では41万円となっている実態を示して、各種控除を加味することを求めました。さらに一般会計からの繰り入れでは、市費でまかなう「任意繰入金」が2008年度に比べ予算案では22億円も少なくなっていることを指摘し、大幅な増額を求めました。ところが当局はいずれも拒否したのであります。

その一方で、国保料滞納世帯への財産調査を始めた6年前は4154件であった調査件数を、2009年度は本年1月末までの10カ月間で13万4093件と、32倍以上にも急増させ、強権的な取り立てを強めているのであります。しかも、「無保険状態」となる資格証明書世帯では、お産の費用を支援するための「出産育児一時金」の受け取りを区役所窓口に限定し、それからも滞納保険料を取り立てるというひどさであります。言語道断であります。

 

次に、生活保護についてであります。

今の生活保護受給者の急増は、市長も認めている通り、派遣切りや中小企業の倒産・廃業などによる失業者の増加と、まともに機能しない雇用保険や劣悪な年金制度など様々な社会保障制度の貧困から生まれているものであります。

今求められているのは、各種社会保障制度の抜本的な拡充と、高齢者加算の復活など生活保護制度の改善を国に強く要望するとともに、雇用の確保への取り組みを強めつつ、稼働年齢受給者の安定的な自立に向けた様々な援助を丁寧に行っていくことであります。そのためにも、職員体制を本格的に強化すべきであります。

ところが、本市がとろうとしている対応は、任期付き職員の採用でやり過ごそうというものであり、わが党委員が正規職員の採用を強く求めたのに対し、当局はこれを拒否したのであります。これでは受給者の自立は進みません。

あわせて指摘しておきたいのは、10年度の生活保護費予算は2863億円ですが、その75%は国負担金であって、しかも残りの25%の8割は国が交付税措置しますから、本市が税等で実質負担するのは予算全体の5%、143億円だと言うことであります。従って、生活保護費が本市財政を圧迫している一番の原因だという議論は成立たないのであります。ところが、生活保護が本市財政を圧迫しているとし、しかも生活保護急増の原因が制度自身にあるかのように歪めて、その改悪を求めるありさまは、異常だと言わなければなりません。

 

次に、市営住宅の11回落選者特別措置制度についてです。

 都市整備局は、この制度による優先入居が募集可能な住宅の3分の1を占めていることなどを理由に見直すと言い出しました。しかしこの制度は、40倍、50倍という募集倍率の中で何回申し込んでも当選されない住宅困窮者にとって、何としても入りたいという願いに応えるセーフティネットとして機能しています。

申込み倍率が毎回とても高いのに、市営住宅の戸数を増やさないどころか、建替用地が余ったら民間マンション業者に売却して住宅戸数を減らすことまでしておいて、11回優遇による入居が増えたことがけしがらんというのは、本末転倒であります。11回落選者特別措置制度の廃止方針は撤回すべきであります。

 

さらに、市営住宅家賃の減免制度をも改悪しようとしていることも明らかになりました。理由は、給与、年金など同じ収入額であっても所得額が違うことによって減免額に相違が出るのは不公平だなどというものですが、これは居住者の責任ではなく、まったくこじつけの議論です。我が党委員の質問によって、今回の見直しの狙いが、家賃調停額の19%を占める減免額68億円を10%程度に抑え、30億円以上の家賃収入の増額をはかることであることが判明しました。とんでもありません。減免制度の改悪による実質上の家賃値上げは、今日の経済不況の下で生活困難にあえぐ居住者に追い討ちをかけるもので、断じて認められません。

 

第二に、教育について2点、述べておきます。

 まず、中学校給食の実施についてです。平松市長は「昼食弁当を10%の生徒が注文しないと『給食』事業に移れない」としていますが、親には弁当をつくることを押付け、その一方で子どもには昼食弁当の購入をすすめること自体が大きな矛盾です。我が党委員の「なぜ10%なのか」との質問に当局は答弁不能でありました。 

義務教育における給食は、全ての自治体にたいして実施が努力義務となっております。弁当持参の方が望ましいという教育委員会の主張はこの法律を踏みにじるものです。平松市長と教育委員会には子どもを教育する資格があるのかと厳しく指弾しなければなりません。いつまでも給食実施を先延ばしすることは断じて許されない、このことを強く指摘しておきます。

 

 次に、市立大学に対する運営交付金と6・7限目の授業についてです。

 来年度予算案では運営交付金が前年度比で16億円も減らされています。これでは、満足な資料も整えられず、十分な教育研究環境が確保できなくなってしまいます。また、大学の2部廃止の暴挙に大きな社会的な批判の声が高まったことを受けて、1部に夜の授業を設けるとしてこの4月から6・7限目の講義が始まります。ところが大学は、6・7限目を受講できる学生は、入学時に正規またはこれに準じる職を有し、週30時間以上の就労をしていることという基準を設定しました。これは今、半数以上が非正規雇用にならざるを得ない青年の雇用情勢をまったく無視したものであり、即刻改めることはもちろん、2部そのものを復活させるべきです。

 

 第三に、中小業支援についてです。

 厳しい経済環境のなかにあって、今大阪市に求められるのは、中小企業への仕事と物品などの発注を抜本的に増やすことであります。ところが、大阪市教育委員会は、国の緊急経済対策にかかわる補正予算で各学校にパソコン7328台、電子黒板440台を購入するにあたって、スケールメリットや効率性を強調し、そうした入札が行われた結果、大手量販店とその系列企業がこれを独占しました。これでは中小企業支援にはなりません。これについてわが党委員が、「今後は、せめて24行政区に分離・分割発注し、町の電気屋さんにも参入の機会をつくるべきだ」と求めたのに対して、当局はこれを拒否したのであります。

さらに、我が党委員が、中小企業の振興に全市あげて取り組むために、「大阪市中小企業振興条例を制定すべきだ」と質問したのに対して、市長は、「私を先頭に中小企業対策本部をつくってがんばっている」とまとはずれの答弁をして、中小企業振興条例の制定に背を向けたことは、許せない姿勢であります。

 

第四に、安心で安全な街づくりについてであります。

 まず、赤バスをふくむ市バス路線の維持についてです。

交通局は、赤バスの廃止を1年先送りし、その間に利用率の向上を図り、利用率が一定基準を超えれば存続させる路線も出てくるなどとしていますが、赤字を理由に赤バスをふくむ市バス路線の大幅縮小を図ろうとすること自体が大間違いであります。「赤バス」を100円で運行をさせたのは行政であり、少なくとも「赤バス」の赤字は全額補てんされるべきですし、地域系やコミュニティ系のバス路線についても同様の措置が求められて当然であります。交通局が、市営バスのあり方について諮問した検討会ですらその最終提言で、「地域系やコミュニティ系といった一般会計が費用負担して維持すべき路線については,大阪市として今後も引き続き、十分な財政措置が講じられるべきである」と述べているではありませんか。 

名古屋市や、京都市並みに適切な運営補助が行われるなら赤字は避けられます。まともな支援もせず、赤字を理由に廃止・縮小するなんて断じて認められません。

 

 次に、森之宮ゴミ焼却工場の建て替えについてです。

 2008年に森之宮工場の建替えについて「凍結宣言」をした平松市長は今、一転、建替えを進めようとしていますが、これは、焼却工場をどんどん建替えるというものであり、循環型社会という理念にまったく反するやり方です。メンテナンス技術をもって、住之江工場の寿命を5年延ばして37年にするならば、森之宮工場建替の結論を5年間先にすることができます。2015年度までに110万トンにするというゴミ減量目標の進捗状況を見極めて結論を出しても、まったく支障はありません。性急な森之宮工場の建替えは今からでも見直すべきであります。

 

 第五に、無駄な大型開発の問題です。

スーパー中枢港湾づくりなどムダな港湾整備について指摘いたします。

 これまで、港湾局は「増大するコンテナ貨物や大型コンテナ船の入港に備えるとともに、国際競争力の一層の強化をめざして、荷役コストの3割の低減をはかる」などとして、700億円もの事業費を投じて、大水深高規格の夢洲コンテナターミナルの建設を推進し、昨年10月、鳴り物入りで供用開始いたしました。ところが今回の委員会質疑を通じて、肝心の5万トンを超える大型コンテナ船は、C11にエバーグリーンが週2便程度、これまでどおり入っているだけで、あとは咲州のR岸壁やC6、7から中国航路など22航路の1万トン内外のコンテナ船が移ってきたに過ぎないことが明らかになりました。しかも、至上命題であるコスト低減にいたっては、3バースの一体使用とは名ばかり、C11のバックヤードがエバー専用で他は使えないなど、荷役作業にロスが生じている上に、貨物量が少なくスケールメリットどころではなくて、全く目的を達していないことも明白になりました。

しかるに当局は、今度は、国交省が更なる国際競争力の強化をうたい文句に新たに打ち出した、水深18メートルの埠頭づくりを柱とする国際コンテナ戦略港湾の指定を、神戸などと一緒に受けようと必死になっているのであります。言語道断と言わなくてはなりません。 

 

次に、淀川左岸線の延伸部などの広域インフラ整備についてです。

平松市長は、我が党委員の質問に答えて、橋下知事の府市再編構想の狙いについて、国際的競争に勝つための広域インフラ整備のために権限を集中したいという印象を受けたと言い、知事のような公共投資一辺倒では国民の暮らしが見えて来ないと批判して見せました。しかしその一方で市長は、2月に「大阪経済圏の発展にむけて」を発表し、そこでは、高速道路・淀川左岸線延伸部などのミッシングリンクの整備はこれからの関西の成長戦略にとっては欠かせないとし、高速道路の一体的な運営形態を構築することや、料金を完全対距離料金制に統一することなどを提案し、そうすれば多額の費用を要する左岸線延伸部などの実現可能性が高まると言っているのであります。これでは、やり方が違うだけで、広域インフラ整備に走るという点はまったく同じではありませんか。 

3月20日に阪神高速の第二京阪道が1兆円の巨費を投じて開通しました。しかし当初予測された8万台の交通量は5万台見込みにまで激減しています。第二京阪からは近畿自動車道と大阪港線を利用すれば南港まではすぐです。淀川左岸線の延伸部は欠かせないという認識そのものが間違っているのであります。

平松市長は、関西財界と一体になって、WTCへの府庁移転と咲洲・夢洲開発をテコとして、淀川左岸線延伸部、地下鉄浪速筋線、JR桜島線の延伸などの広域インフラ整備を進めようとしていますが、これらはきっぱりと止めるべきです。

 

第六は、同和問題です。

 大阪市は、人権文化センターや青少年会館、老人福祉センターを一つに統合し、これは同和事業ではない、コミュニティ活動の振興を図る事業だと言って市民交流センターを発足させようとしています。しかし我が党委員の質疑によって、市民交流センター10館には90人の職員がおり、一館平均9000万円の予算が付けられていること、一方で24区の区役所付設会館には116人の職員しかおらず予算も一区平均5600万円でしかないことが明らかになりました。これでは、24区の会館が平均11万人の市民を対象にした施設であることを考えれば、旧同和地域に10館もコミュニティ施設を設置すること自体が異常な特別扱いをしていることになるのであります。まさに「一般施策に名を借りた特別対策」と言うしかありません。全廃すべきは明らかです。

 

旧芦原病院への融資を巡る訴訟の和解勧告について一言触れておきます。

「大阪市が芦原病院について、うその情報を提供し、だまして融資させ、2億円の損害を生じさせた」として、りそな銀行が本市を訴えた裁判で、昨年5月の一審で、本市による「故意による不法行為」と「信義則上の義務違反」が認定され、本市に1億1000万円を支払えとの判決が出されました。ところが、わが党の反対にもかかわらず本市は控訴し、その結果、一審判決より重い1億5000万円の支払いを求める和解勧告が出されたのであります。平松市長は、この和解勧告を受入れるが、故意による不法行為は認めないとし、また、支払い金額を増加させたことについて市長自身には責任がないとしていますが、市長のこの態度はまったく無責任で異常であります。平松市長には、不公正で乱脈な同和行政にたいする根本的な反省がないのではないか、このことを厳しく指摘しておきます。

 

最後に、これからの市政改革についてであります。

「新たな市政改革の骨子(案)」は「豊かな税収を背景にしたこれまでの公共の枠組みでは、増大・多様化・深刻化する社会の課題に取り組むことはできなくなっている」と現状分析し、「多様な主体によって公共の担い手を増やして公共を再編する」ことによって、「力強く健全な行財政基盤を構築する」としています。

これは、政治が国民の暮らしや社会保障と経済を破壊してきたことには目をつぶった上で、「公共の再編」の名で行政の責任を放棄し、市民サービスを切捨て、職員を減らして公共が担うべき仕事を縮小しようとするものです。市民が今、政治と行政に求めているのは、「自民公明政治が破壊してきた社会保障の制度を建てなおす」ことであり、「住民の福祉の増進」に努めるという自治体本来の仕事を進めることであります。「地域から市政を変える」という美名の下に市民の願いを踏みにじろうとすることは許されません。

 

 また、中期収支概算による2700億円もの収支不足をカバーする「フレーム」として、年間120億円の経費を削減することがあげられています。その矛先が、敬老パスや上下水道料金福祉措置、さらには障害者や子どもに対する大阪市独自のサービスに向けられているとしたら大問題です。平松市長は予算発表時に「受益と負担の原則をしっかりと市民の方に分かっていただく努力を続けたい。敬老パスの有料化などは完全になくなったわけではありません。今回は出していません」と発言しました。ここに、経費削減のなかで、大阪市独自の市民サービスを大幅に廃止・縮小したいという、市長の魂胆がはっきり示されているのであります。

こんなことは断じて認められません。

 

以上、組み換え動議に賛成し、原案に反対する討論といたします。