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市議団の実績

2008年度一般会計決算認定に対する

尾上議員の反対討論

尾上康雄市会議員

2009年12月17日

  私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2008年度大阪市一般会計決算認定に反対する討論を行います。

今、市民の暮らしと中小業者の経営は、極めて深刻な状況に追いやられています。若者を中心とした高い失業率と就職難、中小企業の仕事の激減と企業倒産・自己破産の増加、低い年金と高齢者の各種負担の急増、子どもの貧困の広がりなど、かつてない程であります。

そんな中で、本年8月の総選挙において国民は、自公政権に対して厳しい審判を下しました。国民が新しい政治を探求する時代が始まったのであります。今こそ、大企業優遇と大型開発優先の税金の無駄遣いをやめ、医療や福祉・子育てと教育・雇用対策や中小企業対策にこそ手厚い施策を大胆に実施すべきであります。そして、住民の福祉の増進に努めるべき大阪市は、本来の自治体の役割をしっかりと果たさなければなりません。

ところが、本決算にあらわれているのは、国民健康保険料の1.2%値上げや定時制高校授業料の値上げ、就学援助のカットなどを強行する一方、スーパー中枢港湾や夢咲トンネル、北港テクノポート線、新人工島、淀川左岸線2期事業などに234億円も投じるなど、市民には負担ばかり押し付け、大型開発は優先するという姿であります。到底認めることはできません。

以下、具体的に指摘いたします。

 

第一に指摘したいのは、市民の暮らしや教育等についてであります。

まず、深刻な事態となっている雇用問題について、とりわけ、大阪市自らが「官製ワーキングプア」を生み出している点についてであります。

決算特別委員会の質疑でわが党委員は、「大阪市が発注する工事請負や業務委託の入札落札率は年々低下している。このことは、入札業者間のダンピング競争が行われていることを示しており、結局、労働者にしわ寄せされ、官製ワーキングプアーを作り出している」と、厳しく指摘しました。そして、「こうした事態をなくすためには、まともな労働時間や労働条件を義務付ける『公契約条例』の制定が必要であり、すでに千葉県の野田市が制定するなど各地でそういう動きが起こっており、国の制度化を待つのでなく、大阪市としても早く制度化し、地方から世論を盛り上げていくべきだ」と求めたのに対し、理事者はこれを拒否する態度に終始したのであります。とんでもない姿勢だと言わなければなりません。

 

次に、国民健康保険料について指摘します。

 国民健康保険料については、「高すぎて払えない状況」がいっそう広がり、2008年度の滞納世帯率は29.3%、実に「3軒に1軒」という事態に迫ろうとしています。40歳代の夫婦と子ども2人の4人世帯で所得200万円の場合、保険料は約37万円、所得に対して実に18.5%もの負担になっているのです。そして、現行の保険料算定方式も保険料減免制度も、所得だけを基準にしており、支出の状況はほとんど反映されず、生活の困窮状況の実態に合わない保険料になっている場合も多く見受けられます。

大阪市として、これらの状況を改善する措置をとることが必要であるにもかかわらず、まったく改善策がうたれていないのであります。それどころか、一般会計からの繰り入れを毎年のように削減し続け、今年度は2004年度に比べ66億円も減っており、保険料を軽くする措置を弱めている状況なのです。とんでもないことだと言わねばなりません。

 

続いて、赤バスについてであります。

 赤バスの廃止が発表されて以来、私の地元の西成区でも、大問題になっています。「雨の日、風の日は、用心して赤バスを利用させていただいています。日を追うごとに赤バスのありがたさを感じます。なくなると大変困ります」など、たくさんの切実な声をいただいています。

 ところが、当局は、経済性も公共性も基準をみたしていないなどと、乱暴にも、すべての赤バス路線を切り捨てるというのであります。経済性については、福祉のためにということで、問題にはしてこなかったわけで、まったく筋が通りません。また、私が決算特別委員会で指摘したように、赤バスは、病院やスーパー、市場、区役所などを回る、動く公共施設の役割を果たしているのであり、公共性がないなどは、現実を見ない空論であります。福祉の観点からも、街づくりの観点からも、また、将来の交通需要、人口動態、高齢化が進行していくことを想定し、赤バスはもっと利用しやすいものへと改善しつつ、ぜひとも存続させるべきであります。 

 

次に、教育問題と保育環境について指摘します。

 平松市長は、教育日本一をめざすと表明していますが、その条件整備を進めるための財政的な裏付けが全くないことが、わが党委員の質疑で浮き彫りになりました。

 教育にかかわる決算額は、学校維持運営費をはじめ、毎年減り続けているのであります。教育委員会は、少人数学級の拡充や中学校給食の実施に背を向けるばかりか、「一般教室にクーラーを設置してほしい」「設置されるまではせめて扇風機を付けてほしい」との切実な声には耳を傾けず、その一方で、国旗掲揚のためのポールはさっさと設置する。予算の使い方が全く間違っていると言わなければなりません。中学校給食についても、「弁当販売昼食事業の10%以上」などという無意味で遠回りな基準設定はやめて、市長の公約通り、ただちに給食実施に踏み出すべきであります。

 また、保育についてでありますが、公立保育所では、子ども用の壊れた便器の修理のため、休廃止された保育所の便器を持ってきて使うなど、ひどい実態が放置されています。経費削減の影響がこういうことにも表れているのであります。そして、子どもと保護者に大きな犠牲を強いる「公立保育所の民間委託」が、保護者の強い反対の声にまったく耳を貸さず、引き続き強行されていることも許すことができません。

 

暮らしにかかわっての最後に、市営住宅について指摘します。

市長は、「住宅は十分に足りている」として、市営住宅の新たな建設や増設は行わないという立場を表明しています。しかし、本市での実態は、低所得者がどんどん広がっており、非正規労働者や母子家庭、高齢者世帯での「ハウジングプア(住まいの困窮)」問題は深刻です。その典型的な例が、昨年の難波での個室ビデオ店火災で犠牲になった方々の状況です。犠牲者の大半が決まった住居・職業がなく、そこを住居代わりにしていたというのが実際であり、これは氷山の一角であります。

こういう問題の解決のためにも、市営住宅のあらたな建設、増設がどうしても求められているのです。大阪市が行っているストック計画は、これに逆行する「市営住宅縮小計画」と言えるもので、建て替えのたびに住宅戸数が減っているのです。こんなことは直ちにやめるべきであります。

 

第二に指摘したいのは、経費削減策として進めている「3174の事務事業総点検(中間とりまとめ)」について、市民生活に直結している事業は見直し、削減する方向を鮮明にしつつ、その一方で、大型開発などの無駄には手をつけないという、まったく逆立ちしたやり方になっているということです。

 

決算特別委員会で、わが党委員が「リーマンショック以来の経済危機の中、市民生活の現状について市長がどのように認識しているか」と質したのに対し、平松市長は、「大阪の完全失業率は7%を超え生活保護の申請も昨年対比で180%近くまで推移するなど、大変厳しい状況が続いている」と答弁しました。わが党委員が、そうした市民生活の実情をふまえ、市民の暮らしを守ることを第一にした市政の推進を強調したうえで、「事務事業総点検に市民の意見がどのように反映されるのか」と質したのに対して、理事者は、市民意見を反映させる手法を一切示すことができず、市民そっちのけでの総点検になっていることがはっきりしたのであります。

さらに、質疑を通じて、小泉内閣の悪政を推進したシンクタンクであり、政府の「事業仕分け」にかかわった「構想日本」の手法を、大阪市の事務事業総点検に持ち込んでいることが明らかとなり、その異常さが示されたのであります。

 

その上で、「事務事業総点検(中間とりまとめ)」の内容で、市民生活に直結する具体的な問題点をいくつか指摘します。

第一に、昨年10月の市会本会議で「敬老パス等の改悪に反対する決議」があげられているにもかかわらず、性懲りもなく「敬老パス等の見直し」を俎上にのせていることであります。

 第二に、国が「子ども手当て」を創設することを理由に、就学援助や非課税世帯への保育料の減免制度を見直すとしていることであります。

そして第三に、市民生活になくてはならない、新婚世帯への家賃補助制度などを見直すなど、市民サービスを切り捨てる内容になっていることであります。

 

その一方で大阪市は、JR東海道線支線の地下化や淀川左岸線延伸部事業の促進、森之宮ごみ焼却工場の建替え、大阪湾主航路の浚渫など莫大な費用のかかる大型開発事業はどんどん進めようとしているのであります。全くの逆立ちした経費削減策であります。

そして、WTCの破たんとその処理策としての大阪府による買い取りを契機にして、夢州・咲州への企業誘致を進め、鉄道や高速道路網の建設へとつなぐ大規模な開発へと突き進もうとしていますが、これは大失敗した「テクノポート大阪計画」の再来になると厳しく指摘するとともに、断じて容認できないものであります。

 

さらに見過ごせないのは、なにわ筋線鉄道計画であります。

20年間もお蔵入りしていたこの計画が、なぜ、今、急浮上してきたのか。それは、大阪府の橋下知事が、「関空の利用客が低迷しているのは空港への交通アクセスが悪いからだ」と決めつけ、眠っていたこの計画をたたき起こしてきたからであります。総事業費は4000億円というとてつもない計画で、これが開通しても今より5〜6分短縮されるだけです。しかも周辺住民には、振動・騒音公害が押し付けられ、まさに百害あって一利なしの税金の無駄遣いでしかありません。

ところが、私が「大阪市長として反対を表明すべき」と求めたのに対し、平松市長は、「成熟度を見極めたうえで判断していきたい」と答弁し、推進の余地を残す態度を表明したのであります。とんでもありません。こんな計画は、調査を打ち切り、きっぱりとやめるべきであります。

 

また、森之宮工場の建て替えを含む「ごみ焼却場整備・配置計画」についてであります。

平松市長は、「整備・配置計画検討委員会の報告書を尊重する」として、「港工場は廃止するが、森之宮工場・大正工場を現地で建て替えていく」という計画で、「来年から具体化していきたい」と言明しています。しかし、決算特別委員会でのわが党委員の質疑で、この計画の二つの重大な問題点がはっきりしました。

ひとつは、今、直ちに結論を出し、来年から実施に移すことによって、発生するごみの量に比べ、ごみ焼却工場の能力が過剰となって、500億円もの工場の建設コストや、年間30億円もの管理運営コストが無駄になる恐れがあること。そして、2015年度のごみ減量目標110万トンへの進捗状況を見極めた上で、新たなごみ減量目標を持ち、その後に計画の結論を出しても、十分対応できるということであります。

すでに森之宮工場は41年稼働させています。今後、他の工場もできるだけ長く稼働させる努力を行うことと、中長期的にもごみ減量に取り組むという前提に立てば、今後30年近くは一切の工場建替えが不要となることなどを具体的に示し、拙速に工場建て替えの結論を出すべきでないことを明らかにしたのであります。

もうひとつは、市長が森之宮工場建て替えの理由にあげた、「市内中心部に唯一位置するということの重要性」について、その根拠が全くなくなったということであります。

主に市内中心部から大量に発生する、合計約85万トンの事業系ごみの焼却処理量の実際をみれば、市内中心部に近い森之宮工場ではわずか8万トンに過ぎず、舞洲工場で14.5万トンなど、周辺部の工場での処理が大半を占めています。そして、森之宮工場の建て替え後の処理能力からすれば、市内中心部を主な発生源とする事業系ごみの処理はたった2.2万トンであります。中心部に位置することの重要性は、完全に否定されたのであります。森之宮工場の建て替えを拙速に決定し、実施に移すなどということは、断じて認められないのであります。

 

第三に指摘したいのは、同和行政についてであります。

 

今回の質疑を通じて、100億円もの予算を投じて1000人規模の超豪華校舎が建てられた浪速区の栄小学校が、現在はわずか150名の児童しか在籍していないことが明らかになりました。しかも、栄小学校は、児童数が同規模の一般校に比べ、学校維持運営費が2倍も配分されているのであります。また、旧同和校では、同規模の小学校と比べ、学年を担当する教員が2倍も配置されています。

わが党委員が、学校維持運営費の分配や教職員配置の明確な基準、理由が示されていないこと、20023月をもって法的に終結している同和行政が未だに続けられていることは許されないときびしく指摘したのにたいし、市長は、加配を容認する答弁をおこなったのであります。全ての子どもたちが、等しく教育を受けられるよう、直ちに改善し、同和行政は完全に終結させるべきであります。

 

以上をもって、本一般会計決算の認定に反対する討論といたします。