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市議団の実績

瀬戸一正議員の自民党のチェックオフ廃止条例提案に反対する討論

瀬戸一正市会議員

2008年3月28日

 3月28日の大阪市議会閉会本会議で、瀬戸一正議員が、自民党のチェックオフ廃止条例提案に反対する討論をおこないました。以下はその全文です。

 

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、只今上程されました議員提出議案第7号「職員の給与に関する条例の一部を改正する条例案」に反対する討論を行います。

 最初に指摘しなければならないのは、そもそもチェックオフの制度は、労働組合の事務所・掲示板の使用、在籍専従などと同様の、使用者による労働組合への便宜供与の一つであり、憲法が保障する労働基本権であり、労働組合活動を保障する制度だと言う点であります。国際労働機構・ILOの結社の自由委員会は「公正なチェックオフを国が禁止することは、ILO87号条約すなわち『結社の自由および団結権の擁護に関する条約』に違反する」と言っています。 同じくILO公務条約151号条約の第6条は、「承認された公務員組合の代表者には、勤務時間中及び勤務時間外にその業務を迅速かつ能率的に遂行することができるよう適当な便宜が与えられるべき」としています。つまり、チェックオフなどの労働組合への便宜供与は、重要な組合活動の一つとしてこれを保証するべきだということは、いまや国際的な労働基準となっているものであります。それは労働組合が勝ち取った権利というべきものであって、使用者から恩恵として与えられるようなものではありません。

 チェックオフ制度は、わが国の労働法制にあっても、労働基準法第24条において、「労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる」と明確に法律で認められている制度であり、権利であります。現に、大阪市の被使用者でも、現業職員で組織する労働組合や、公営企業に雇われている職員で組織する労働組合にあっては、今日現実に、労働協約でもってチェックオフが行われています。今回、自民党が提案しているチェックオフ廃止の条例改正案は非現業職員のみを対象にしているのであって、現業職員や公営企業職員は対象となっていません。現業職員と公企業職員に対して行われているチェックオフは協定に基づくものですから一方的に破棄することはできないのであります。

 では、非現業職員の労働組合である職員団体のチェックオフはどうでしょうか。職員の給与からの組合費のチェックオフは、「法律又は条令で定めるならば、給与支払から組合費などの控除ができる」という趣旨の地方公務員法25条2項の規定に基づいており、本市の場合も、職員給与条例の27条(4)の定めによって、チェックオフが行われているのであります。ではなぜ職員団体は協定によってではなく条例によってチェックオフが行われているのか。それは、アメリカ占領軍のマッカーサーの超法規的な指示をうけ、政府が発した「政令201号」によって、公務員の労働基本権が制限され、そのために公務員の組合すなわち職員団体には行政当局と団体協約を締結する権利が与えられていないからであります。それを補っているのが条例であります。すなわち、公務員に対するチェックオフは、憲法によって保障されている労働基本権が制限されているために、地方公務員法25条2項とそれに基づく条例で補完しているものであります。従って、チェックオフの問題はすぐれて労使間の問題であり、それを条例事項だからと言って、労使間の合意を抜きに議会が先行してこれを定めることにはまったくなじまない問題だといわなければなりません。ましてや、今回の自民党提案のように、使用者や被使用者の意見も聞かずに多数決でもって廃止するというのは、憲法に保障された国民の労働基本権をないがしろにし、そしてこれを不十分ながら補完している地方公務員法の規定をも、乱暴に踏みにじるものだと言わなければなりません。

 さて、長年の慣行として行われているチェックオフを使用者が一方的に廃止することは不当労働行為に当たります。このことは判例で明らかであります。山口県宇部構内タクシー事件での地方労働委員会の命令、広島県東洋シート事件での中央労働委員会の命令、トップ工業での新潟地方裁判所の判決などいずれも、「長年慣行として行われてきたチェックオフを事前に組合と協議することなく、ストライキなどにより労使間の対抗関係が深まっていた機会に突然、一方的に廃止することは、組合の弱体化を狙い、組合が困惑するであろうことを期待して行った、支配介入の不当労働行為」だと明確に断罪し、済生会中央病院事件では最高裁判所も、「チェックオフの中止は、支部組合を財政的に弱体化させることを目的としたものであり、支部組合及び全済労に対する支配介入行為であることは明らかである」と判決しているのであります。ところで、大阪市の職員にたいするチェックオフ制度は、条例の定めのなかった時代から職員団体と当局の間の合意で行われてきました。条例に定められたのは1966年でありますが、それは前年の1965年のILO87号条約批准と、これに基づく地方公務員法25条改正を受けてのものであります。つまり、条例制定以前から使用者と被使用者が合意して行われていた事実行為であるチェックオフを、1966年以来、42年間、条例で定めて行って来たというのがこの間の事実であります。従って、自民党が今回、条例制定・改廃の権利を振り回して、チェックオフ制度を廃止することは、使用者たる大阪市と被使用者たる職員団体の合意に介入するものであると同時に、慣行として長年行われてきた便宜供与を一方的に廃止するものであり、「組合の弱体化を狙い、組合が困惑するであろうことを期待して行う支配介入」「不当労働行為」に相当すると非難されても仕方のないところです。もちろん、議会がおこなう行為が不当労働行為をなすかどうかは議論のあるところかもしれません。しかし、議会のおこなった条例廃止によって、大阪市が職員団体に不当な不利益行為、不当労働行為に相当する行為におよぶことになるわけです。議会がその原因をつくることには変わりがありません。

 さらに言えば、不当労働行為として労働委員会に申立ができるのは現業・公営企業食の労働組合のみであり、非現業職員の労働組合は労働委員会に申立できません。しかし、そもそも地方公務員法は労働基本権を制限することの代償として、議会や行政が職員と職員団体に対して不当労働有為などはしない、紳士的・道義的に振舞うんだということを想定しているのであって、その意味からも、自民党の今回の提案はまったく道理や道義をも踏みにじる、許しがたいものだと言わなければなりません。自民党は最近、国政にあっても、労働基準法そのものを改悪してチェックオフができないようにすることを策すことまで行って、あえなく挫折しております。そこにあるのは労働組合適視論でありますが、それは社会進歩に逆行するものであり、働くものが使用者と対等な立場に立ち、使用者とともに社会を築いて行くという近現代の歴史の常識を覆してしまおうという反社会的な妄想だし、国際的にも物笑いになる行為だということも指摘して、私の反対討論といたします。