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市議団の実績

瀬戸一正議員の決算反対討論

(2006年11月30日、閉会本会議)

瀬戸一正市会議員

2006年11月30日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2005年度大阪市一般会計等決算認定に反対する討論を行います。 

日本社会は今、5年間の小泉政治の「構造改革」によって、経済的格差の広がりと貧困の増大という深刻な社会問題に直面し、この是正に一役買うべき地方自治体もまた、三位一体改革の名のもとに補助金や交付税が大幅に削減される一方、「集中改革プラン」の名で職員の削減や業務の民間委託と民営化など、福祉と暮らしのための施策をいっせいに切捨てることが強要されています。

こうした中にあって、大阪市に求められているのは、国の圧力に屈するのではなく、その本来の役割である住民福祉の機関という地方自治体の仕事をしっかり行うことであります。

ところが本決算に現れているのは、生活保護世帯の夏冬一時金は廃止する、介護保険料は16.7%も値上げする、乳幼児医療費助成や小児ゼンソク医療費助成には一部負担金を導入する、その一方で、北港テクノポート線や夢洲トンネル、夢洲土地造成、新人工島などには計235億円もかける、経営破綻したATC・WTC・MDCには64億円もの補助金支出や家賃支援を行うなど、市民には負担ばかり押付け、大型開発には手厚いという本市の姿であります。到底認めることはできません。 以下、具体的に指摘いたします。

 反対理由の第一は、福祉と教育などの分野で、市民に大きな負担を押付け、市民の切実な願いに背を向けているからであります。

 まず、この5年間に行われた税制改悪が市民にもたらした負担増でありますが、配偶者特別控除の廃止、年金控除の縮小、老年者控除と老人非課税措置の廃止、定率減税の廃止によって、139億円もの市民税の増税が行われました。この国の税制改悪に連動し、さらに本市の制度改悪も重なって、高齢者や低所得者の国民健康保険料や介護保険料が大幅に値上げになり、年金月額20万円の65歳一人暮らしの高齢者で言えば、所得税や住民税、国保料、介護保険料の負担は、2004年の9万2616円から08年の35万2491円へと3.8倍にも膨らみます。そしてさらに市営住宅の家賃にも大きく跳ね返るなど、とんでもない「雪だるま式」の負担増になっているのであります。

こんな時こそ、地方自治体は住民のくらしを守る防波堤の役割を果たさなければなりませんが、本市はその役割を果たすどころか、国保料・介護保険料を値上げするなど市民の暮らしに負担をかぶせる、追打ちをかけたのであります。

 しかもこれに加えて、「市政改革マニフェスト」においては、「低い負担で高い水準のサービスが温存されている」と言って、本市独自の福祉施策を目の敵にし、10数項目、予算にして270億円を超える「市民サービス」を見直しの対象としているのであります。

私が質疑の中で、保育所の保育料を国基準に比べて67%に押さえている本市独自の助成策が見直し対象とされているが、保育料は政令市全体でも平均68%に押さえられている、少子化対策の重要性が叫ばれ、若者世代にも「ワーキングプア」と呼ばれるほどの低賃金が押付けられている。こんな中での保育料助成の見直しはやめるべきだと質したのに対して、関市長は「市民負担が増えているのは事実だが、負担増は少子高齢社会を持続的に支えていくためには必要だ」と答えましたが、市民の納得できるものではありません。

  また、障害者支援についてもそうであります。我が党はスタートしたばかりの障害者自立支援法の下で、障害者やその家族が応益負担制度に苦しみ、障害者施設は多額の収入減におちいり、運営に支障をきたす事態となっていることを明らかにし、市長に対して、国に法の見直しを要求するとともに、市独自の支援策を実施するよう要求しました。市長は「今後検討していく」と答弁しましたが、全国の40%の自治体がすでになんらかの支援策を実施している中、法施行の下で障害者や施設がどんな実態になっているのか、大阪市はまともな調査さえ行っていない事が明らかになりました。障害者自立支援法に対応する支援策で本市が他都市に比べて一歩も二歩も遅れをとったのは、市政マニフェストで市民サービスに大なたをふるう事にのみ労力を費やしてきた、關市長に大きな責任があるといわなければなりません。

 次に、緊急の課題である「こどもの『いじめ』」に対する本市教育行政の在り方についてであります。

学校現場が「いじめ」の原因を早期に発見する努力を行うとともに、行政が家庭の経済格差を学校に持ち込ませないという教育基本法の機会均等の精神を具体化することは、今、重要な課題になっています。

  大阪市立の学校では、1996年から10年間で小・中・高校生が16人も自殺をしています。教育委員会は3人の子どもの自殺原因は、家庭関係、精神的要因、友人関係であったとし、他の13名の自殺理由は明らかではないが、「いじめ」が原因ではないと報告しています。しかし、7名が自殺している02年以前は「いじめ」件数を掴むだけで原因については全く調査もしていないのです。そのような粗雑な把握でどうして「いじめが原因ではない」等と断定できるのでしょうか。

  「いじめ」の原因・誘因は、学校と子どもたちの実際の姿から究明しなければなりません。我が党議員が就学援助の通知書を直接手渡された子どもが「冷やかし」に会い、それがもとで「いじめ」に発展した実例を示して、「子どもに卑屈感を与え、心に傷を付けないように」と1978年から予算化された郵送料を減額している事を指摘し、増額するよう求めましたが、市教委はこれを拒否しました。今日の長引く不況のために、5年間で受給者が26パーセントも増加しているのに、郵送料予算を約10パーセントも削減するなどと言うのは、「いじめ」対策とは無縁の教育的配慮に欠けたものと言わねばなりません。

 また弁当を持って来ることができない中学生が22.4パーセントと増加していますが、このことがきっかけで「いじめ」になった事例が現場から報告されています。このような「いじめ」の誘因を解消するためにも、中学校給食の実現は避けられない課題になっています。ところが当局は「本市の中学校では弁当持参が原則だ」と2割を越える生徒を切り捨てる答弁を繰り返したうえに、これらの生徒達の家庭事情も把握していないことが明らかになりました。これも、教育行政機関として誠に恥ずべき姿であります。

  以上の外にも「経済理由による修学旅行の不参加」の問題、全国平均よりも非常に高い「中学生の肥満」についての対策、10年間で7千人を越える「市立高校生の中途退学」などのか課題があります。

  「予算編成権を持つ市長は、これらの問題解決のために教育予算を増やすべきだ」との質疑に対して、市長は「『いじめ』の原因は多様であり、予算の問題よりも原因究明が大切だ」等と答弁しました。このような責任逃れの態度は容認できるものではありません。

 反対理由の第二は、巨大開発の失敗の付けを、銀行や大企業の責任をあいまいにしたまま、市民に負わせようとしているからであります。

大阪市は今議会で一般会計の4つの土地信託事業のうち、オークを除くキッズプラザなどを売却し、その資金をオークにつぎこむ方針を表明しました。これはまさに、市民の財産を切り売りすることによってオークの損失を穴埋めすることであり、巨額の損失をつくった信託銀行の責任を免罪することにつながるものであります。到底、認める事はできません。

そもそも信託銀行は4つの信託事業で、大阪市に計772億円の配当を行うと約束しておきながらろくに配当もせず、自らはちゃっかり218億円もの信託報酬と利息を手にしているのであります。信託銀行団の責任を追及し、この報酬と利息の返上を求めるとともに、債務の大幅な圧縮を求めることこそ大阪市のとるべき方向であり、それを曖昧にするのは許せません。

また、ユニバーサルスタジオジャパンを誘致するためにおこなった此花区の土地区画整理事業であります。今決算議会では、この区画整理事業を来年3月に収束させた場合の欠損見込みが、今年1月に計算した370億円から483億円になることが明らかになりました。なぜ欠損見込みが急に膨れ上がったのかと言えば、今年3月議会ではUSJ敷地内にある保留地はUSJに買ってもらうと答弁していたのに、USJの意向に沿って方針を急転換し、最大20年間の定期借地にすることにしたためであります。大阪市はまったくUSJの言いなりになって、欠損を膨らませたと言わなければなりません。

この土地区画整理は、もともと傾きつつあった重厚長大型の工場を抱えた住友金属などの大企業が、土地利用の転換によって利益を得ようとした計画であります。この区画整理によって大企業の所有地の値打ちは上昇しました。その一方で、大阪市は660億円をこえる公金を投入してなお483億円もの赤字を押付けられようとしているのであります。私が、USJ敷地内の保留地と大企業の土地を交換するなど、大企業にも責任と負担を求めるべきだと質したのにたいして、市長は「USJの誘致が実現し、市の国際化に一定の貢献をした」などと見当違いの答弁をして、事実上、大阪市がすべての負担をかぶる姿勢をあらわにしました。自治体がやるべきでない娯楽施設の建設を推進してきた大阪市と、これを手放しで賛美してきた与党の責任は重大であります。

 反対理由の第三は、長期にわたる歪んだ同和行政への市民の批判がかつてなく大きくなって、「同和行政の見直し」に追い込まれたものの、それでもなお終結することなく、不公正な同和行政を続けようとしているからであります。

それは、暴力・利権集団である部落解放同盟を未だに人権文化センターに居座らせ、特別扱いしていること、同和事業の窓口を長年独占し続けて来た市同促・地区協を人権協会と看板を変えさせて、なお56もの委託事業を継続しようとしていることに、顕著に表れています。

また法が失効した2002年以降も、部落解放同盟が事実上の主催者である「部落解放研究集会」や「部落解放・人権夏期講座」に毎年、100人に及ぶ本市職員と教職員を公費で出張させています。さらに、解放同盟の機関紙「解放新聞」の中央板・大阪版を合わせ、06年度で大阪市各局では1200部以上、市立学校では子供達の日常教育に係わる貴重な学校維持運営費から800部以上を購入しています。これでどうして「同和の特別扱いをなくした」などと言えるでしょうか。

また、今回の「同和見直し」でも隠し続けて来た社会福祉施設への「ヤミ補助金」の問題も重大であります。我が党議員の追及で、大阪市が、解同系社会福祉法人や職員OBを理事等に受入れてきた法人などに対して、施設整備のための借入金返済の利息と元金の全額に、補助金を出してきた事が明らかになりました。これは、一般の法人に対しては利率が2%を上回る利子分にしか、補助金が支給されていない事と比較すると、正に破格の扱いであります。予算化されてもおらず、支給の理屈は後でつけるという点で、旧芦原病院に対するヤミ特別貸付金と同じやり方であります。この制度は30年も前から始められていますが、今年の3月までは補助金の支給要綱さえ存在せず、恣意的に特定の法人にのみ、内密に補助金が出されてきたのであります。しかも3月に作られた要綱は、今後の新たな施設整備についてはいっさい補助金を支給しないとしている、つまり、要綱の存在を知った一般の法人がこの補助金を請求しても支給されないという、まったく不当なものであります。我が党委員が特定の法人を優遇するやり方をやめ、公平を期すよう求めたところ、市長は、今まで支給決定された法人にのみ支給を続けるという、とんでもない態度を表明したのであります。

ご承知のように、1984年と86年にうち出された「地対協意見具申」はこれまでの事業の総括として、「同和事業によって差別は解消に向かっている。しかし運動団体が作り出す否定的な側面が、同和問題の解決を困難にし、複雑にしている。これを克服することが今後の事業進行の基本条件だ」との指摘をしました。しかしその後も、大阪市は解放同盟に屈服して不公正乱脈な行政を続けてきたのであります。関市長にはこの点についての反省がまるでありません。委員会質疑では、市長が今なお、地対協意見具申の立場に立てていないことが、はしなくも露呈しました。

さらに、我が党議員が「解放同盟が差別だと言い掛かりを付け、本市の乱脈同和行政の出発点になった矢田事件の『木下挨拶文』に対して、裁判所が“労働条件の改善要求と教育行政を批判したもので、差別文書とは考えられない”と断じているが、市長もこうした公正な判断をするべきだ」と指摘しましたが、市長は明確な答弁ができませんでした。これでは到底、本市の歪んだ同和行政を根本から見直し終結させることはできないと断ぜざるを得ないのであります。

 反対理由の第四は、市民の福祉を守ることを第一の仕事とする自治体の役割を投げ捨てる、とんでもない「市政改革」が強行されようとしているからであります。

関市長は、本市の財政危機を立て直すためには経費節減が必要だとして、2250億円の予算を削る、5000人の職員を削るとする市長マニフェストを策定し市政改革を進めるとしていますが、市長の市政改革の言わば指南役となっているのが、市政改革本部の民間委員でもあり市政改革推進委員会の委員長もつとめる上山信一慶応義塾大学教授であります。

その上山氏が、市政改革本部主催の「市政改革オープンフォーラム」の場で、とんでもない暴論をはいているのであります。何と言っているのか。上山氏は、市バスの運行に市が補助金を出していることなどを問題視して「市バスや市民病院などの特別会計は、市役所から出て行ってもらいたい」と言い、所得の低い国民健康保険加入者に市が保険料の減免制度を設けていることがまるで悪いことでもあるかのような議論をした上で「国保は保険ビジネスだ」と言い、保険料をもっと厳しく取立てるべきだと言う趣旨の発言をしているのであります。ここには、市バスが市民福祉の増進に大きな役割を果たしていることや、国民健康保険が社会保障の制度であることについての認識がまったくないばかりか、福祉の増進が第一だという自治体の仕事を投げ捨てよと言わんばかりであります。決算質疑で関市長は、この上山氏の発言を「有益な意見だ」と弁護しましたが、理事者の中から「あの人には公の感覚がまるでない」という痛烈な批判の声が出ているではありませんか。そんな人物を重用している市長の責任は重大であります。

 最後に、建設局が局長マニフェストに市政改革だと位置付けて強行しようとしている安治川トンネルのエレベーター無人運転の問題であります。

 安治川の川底をくぐって此花区と西区をむすんでいる安治川トンネルは、一日往復約8500人が通行し、そのエレベーターは今まで職員が運転をしてきました。建設局は来年3月から運転手を廃止しようとしていますが、利用者の90%の方から、トンネル内での防犯が心配だ、ラッシュ時に高校生の自転車や通勤者が殺到するのに運転手がいなくなればトラブルが起きることは必至だと言う声が上がっています。重ねて、運転手の配置を廃止することを見直すよう求めるとともに、市民の安心と安全を損ねることは、市政改革でもなんでもないということを厳しく申し上げておきます。

以上をもって、反対討論といたします。