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市議団の実績

障害者自立支援法の施行に伴う関係条例の整備に関する条例改正案の反対討論

長谷正子市会議員

2006年9月20日

 

 私は日本共産党大阪市会議員団を代表して議案第287号から議案第291号までの障害者自立支援法の施行にともなう大阪市立の障害者・児関連施設条例の一部を改正する5件の条例案について、一括して反対討論をおこないます。

議案第287号から議案第291号は、根拠法を障害者自立支援法に改め、設置目的や入所資格、利用料、使用料を原則1割定率負担と食費等の実費負担を定めたものです。議案第289号、議案第290号は敷津浦学園、議案第291号は姫島こども園、都島こども園および淡路こども園の障害児に関して、現行の措置制度から通所施設における食費の負担を低所得世帯一食70円、市民税所得割額2万円未満世帯については一食230円とする負担増を求めるなど、利用料および使用料の「応益負担」導入で原則1割負担、食費の実費負担を求める規定に変更するものです。

以下、反対の理由を述べます。

 条例改正のもととなった障害者自立支援法は、障害者とその家族や関係者の反対運動が空前の規模で広がり一度廃案に追い込まれました。大阪でも、「自立支援法案に反対する御堂筋パレード」をはじめかつてない規模の反対運動が繰り広げられました。しかし、憲法や福祉の理念に真っ向から挑戦する悪法というべきものを再び2005年10月31日の特別国会において、与党の自民党・公明党が日本共産党、民主党などの反対を押し切って可決・成立させました。

 同法は、あまりにも障害者の実態を無視した悪法といわざるを得ません。この法律のもっとも酷い点は、トイレに行く、食事をする、風呂に入るなどの日常生活の支援にも「利益を受けたのだから利用料を払え」という「応益負担」制度です。新たに障害児にも払わせる。これまでは「応能負担」制度で、ほとんどの人が無料または低額であったものが大幅負担増となります。障害が重い人ほど負担が重くなるこの制度は、自己責任と競争原理を徹底して、国の財政負担を削減する小泉「構造改革」の「格差社会」推進の典型であります。

法施行の4月から7月までの4ヶ月間の「きょうされん」全国調査では、施設退所者と検討中をあわせると265人。施設利用を抑制している人は159人。給食を抑制している人は230人。利用料や給食費が払えず滞納している人は4月時点161人が、月を追って増加し7月には2倍近くになりのべで700人を超えており、いずれの件数も増加傾向であります。法改正によって障害者の未来

が閉ざされようとしています。

今年、養護学校卒業をされた阿倍野区の知的障害の18歳の女性の場合、通所授産施設で工賃は1ヶ月1万5千円。法施行後、無料であった施設利用料や食費等に2万6千円を支払い、それでも、通所を断念したら、本当に引きこもりになると意欲をもって、働くことで社会参加をしたいと赤字を障害年金で埋め合わせ通所しています。

障害者自立支援法案審議で政府は「サービスの低下はさせない」と答弁を繰り返してきました。ところが、施行後の実態は、サービスの後退などというレベルではなく、憲法に保障された障害者の生きる権利、働く権利を奪い取るという、ひどい制度改悪になっています。

障害者の深刻な生活実態に真正面から向き合うならば、自立を阻み、社会参加を奪う障害者自立支援法に追従し、障害者とその家族に負担を押しつけるだけの条例改正など、到底できるものではありません。 

障害者自立支援法にもとづく利用料負担増を軽減し、障害福祉サービスの利用をできる限り減らさないために、全国的には多くの自治体で様々な軽減策を実施しており、日を追って増加しています。たとえば、京都市は国基準の負担上限額を半分にする軽減策、福祉サービスや自立支援医療、補装具を重複して利用する場合の総合上限額を設定して軽減をおこなっています。吹田市でも3年間に限り、負担上限額の激変緩和措置を独自に導入、福祉サービスと補装具給付の重複利用を可能とする軽減策をとっています。横浜市では、在宅サービスの利用に対して「低所得1」および「2」の人の負担を全額、市が負担する制度をつくりました。東京の荒川区では、在宅サービスの利用者負担を3lに軽減し、通所施設の食事を50l軽減しています。

本市が、国の負担上限額を2分の1にする軽減措置をとるためには、最大約10億円あれば可能といわれています。ところが、本市ではなんの独自軽減策も行わず、ただ、国基準に横並びすると言うだけです。これでは、障害者の自立・社会参加の道を妨げるものと言わざるを得ません。きびしく指摘しておきます。

 本市は、湯水のように公金を遣ったムダな大型開発や同和行政など、無駄遣いの悪名を全国にとどろかせてきました。しかし、本市のこれまでの障害者施策には、他都市に比べて進んだ部分もあります。

今、本市に緊急に求められるものは、国の制度によって障害者の生きる権利が奪われようとする事態を傍観するのではなく、これまでの障害者施策を維持し、「住民の健康と福祉の増進をはかる」という自治体本来の役割にもとづき、独自の負担軽減策の創設で障害者の真の自立への支援を行うことです。

 以上をもって反対討論といたします。