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市議団の実績

国民健康保険料の賦課方式変更に反対する討論

3月29日の大阪市会閉会本会議で北山良三議員

北山良三市会議員

2006年3月29日

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、「大阪市国民健康保険条例の一部を改正する条例案」に反対する討論を行います。 

今回の「国保条例の改定案」は、国民健康保険の所得割保険料について、住民税額に一定料率を掛けて算出する従来の「住民税方式」から、年金控除や必要経費と基礎控除だけを控除した所得額に一定料率を掛けて算出する「所得比例方式」に変更するという提案が、おもな内容になっています。これは、これまで所得割保険料がかかっていなかった「住民税非課税世帯」にも、幅広く所得割保険料の負担を求めようというものです。

変更に向けて市当局がかかげた理由は三つです。

ひとつは、課税世帯であるいわゆる「中間所得層」の保険料負担が過重となっており、この所得層の保険料負担を軽減するために、これまでの非課税世帯などにも所得割保険料の負担を求めるということ。ふたつめに、今の保険料計算方式でも、国の税制改定によって高齢者の負担が大幅に増額されることになるということ。みっつめに、国保については「都道府県単位を軸とする制度への再編」の方向を、政府が打ち出しており、大阪府下では多くの自治体が「所得比例方式」となっているからというものです。

しかし、この変更提案を実施すれば、重大な問題が生まれます。

第一に、低所得者、特に高齢者の保険料が非常に高くなり、中には、市当局の試算でもこれまでの4.3倍にもなる高齢者がでてくるということです。これまで所得割保険料がかかっていなかった「住民税非課税の高齢者」の中で、所得割保険料が新たに賦課される世帯が大きく増加することになります。一方で、年金から天引きされる介護保険料の大幅な引き上げが今年から実施されようとしており、高齢者にとっては同時期の大幅負担増のダブルパンチとなります。「中間所得層」の保険料の軽減に大阪市が責任を持たずに、「高齢者の低所得層」を犠牲にする、そんなやり方はまったく間違っています。

第二に、扶養控除や障害者控除・寡婦控除、社会保険料控除や医療費控除など、各種の所得控除が保険料算定基準に反映されなくなるため、複数多人数世帯や障害者世帯、重病人がおられる世帯やひとり親世帯などで保険料が非常に高くなるということです。これは、「応能負担」の原則に則った「所得割保険料」の位置付けからみて、同じ収入でも、家族構成や障害者・病人の有無やその程度で負担能力が変わってくるという、すなわち、生活実態に見合った負担の公平性の確保という点からも、極めて重大です。

第三に、これらの結果、ますます保険料滞納世帯が増え、保険料収納率が下がり、そのことによって、ペナルティとして国からの調整交付金が減額され、国保財政がいっそう苦しくなる可能性があるということです。この間の悪循環をいっそうひどくすることにつながります。

市当局は、これに関連して二つの「緩和措置」を提案しています。一つは、保険料が大幅に引き上がる世帯への「激変緩和措置」。もう一つは、複数多人数世帯への負担軽減のために「一人あたりの保険料単価である均等割保険料の引き下げ措置」です。

しかし、これも問題の本質的解決にはまったくならないものです。

一つ目の「激変緩和措置」は、2005年度末までに国保に加入していた世帯で、引き上げ後の保険料が1.5倍以上になる場合、2006年度は1.5倍を超える額を免除し、2007年度は1.5倍を越える額の半額を免除し、2008年度からはこれらの免除措置をなくし、最大4.3倍までの負担にしてしまうというものです。

これは、1.5倍までは引き上げることを前提にしていること、2年後には緩和措置がなくなり4.3倍に引き上がる高齢者が多数生まれることなど、今後年金受給レベルが引き上がる見通しのない高齢者にとっては、まさに「焼け石に水」の措置と言わざるを得ません。しかも、その減額措置の財源は、保険料を引き下げる対象となっている「中間所得層」の、その下げ幅を小さくして生み出すというものであります。

また、二つ目の「均等割保険料の引き下げ措置」も、「平等割保険料の引き上げ措置」で生み出すというもので、複数多人数世帯の引き下げの為に単身世帯を犠牲にするというやり方です。

結局、「緩和措置」と言いながら、これらを、大阪市は1円も投入せずに実施しようというもので、大変あつかましい内容でしかありません。しかも、来年度予算案では、一般会計からの国保会計への繰り入れを、今年度比で9億円も減額しているのであります。まったく冷たい仕打ちではありませんか。

私は、「所得比例方式」への変更をやめ、生活実態が反映し、より公平性が確保される現在の「住民税方式」を存続させた上で、これまで保険料負担が過重となっていたいわゆる「中間所得層」と、今年からの税制改悪の影響で保険料負担が重くなる「高齢者」を対象に、所得割保険料の減免措置を大きく拡充すべきだと考えます。

国の責任をしっかり求めるとともに、大阪市としては、この方向こそ、市民に喜ばれ、誰もが払える保険料となり、滞納者を減らしていくことにつながります。そしてそれが、保険料収納率を上げ、国からの交付金を増やし、国保財政の改善に寄与する道です。そのためにも、一般会計からの国保会計への繰入金を、それに見合って増額することがどうしても必要だと言わなければなりません。

この間、市当局は、「国保加入者一人あたりの一般会計繰入額は政令指定都市で第一位だ」とか、「500億円近い一般会計からの繰入金をすでに出しており、市の財政からすればもう限界だ」などと述べて、一般会計からの繰入金の増額要求を拒否してきました。

しかし、これは、市当局の都合のいい数字だけを示してゴマカソウとするもので、一般会計からの繰入金の真の実態をみてみれば、決して「限界」といえる状況ではないということは明らかであります。

具体的には、一般会計からの繰入金といっても、その中には、法定減免措置への補填分など、国や府から投入された金額も含まれているのであります。したがって、この部分を除いた、実質の繰入額の一般会計総額に占める割合の数値で見れば、真の実態がはっきりいたします。その数値でいえば、大阪市がこれまでの最高額を一般会計から繰り入れた、2004年度でも、わずか1.86%であります。他の政令指定都市と比べても、その水準は第5位と、決してトップレベルとは言えません。ましてや、今回の予算案では、その2004年度に比べれば、20億円も一般会計からの繰入金を減額しているのであります。

 もちろん、もっと前提的な話として、夢洲などの大型開発やWTCなどの破綻した三セク株式会社への支援、また芦原病院への320億円もの補助金・貸付金問題などのゆがんだ同和関連支出等々、税金・公金のムダ使いをきっちり正していけば、莫大な財源を生み出すことができます。そうすれば、国民健康保険への一般会計からの繰り入れの増額のみならず、市民への福祉施策をいっそう充実できるのであります。

以上の点から、改めて今回の「大阪市国民健康保険条例の一部を改正する条例案」に強く反対することを表明し、討論を終わります。