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市議団の実績

公営・準公営企業会計決算の認定に反対の討論

本会議で石川かんじ議員が

石川かんじ市会議員

2004年10月20日

私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2003年度、公営企業会計決算、ならびに、準公営企業会計決算の認定に反対の討論をおこないます。

小泉内閣は、「三位一体改革」と称して、地方自治体の財政へのしわよせを強行するとともに、国民の暮らし、中小企業の営業を圧迫しており、大阪市は国の悪政から市民を守る防波堤となり、市民の暮らしを応援することが強く求められています。

言うまでもなく、地方公営企業の目的は、地方公営企業法第3条で「常に企業の経済性を発揮するとともに、その本来の目的である公共の福祉を増進する」ことと規定されているとおりであります。ところが、本決算には、経済効率を優先させ、市民の安全やサービスの向上をおろそかにしている姿があらわれています。

しかも、大阪市は、自治体本来の事業とはいえないUSJへの支援や既に公共性を失ったWTCへの公金投入など、大型開発とその破綻処理に力を入れる一方で、市民の切実な要求の多くは棚上げし、切り捨てる動きさえ示しているのであります。そのような実態が明らかになっている本決算を到底認めることはできません。

以下、具体的に指摘いたします。

まず、今回の決算委員会を通じて、「テクノポート大阪計画」にもとづく大型開発の破綻と矛盾がいっそう明らかになったことであります。

それは第1に、2001年の開業初年度から3年連続赤字を出しているUSJの事業にあらわれています。2003年度決算では累積欠損金が265億円となり、このまま推移すれば、あと34年で債務超過になる危険さえ出ているのであります。 

この原因の一つは、営業経費が高いことであります。2002年度と2003年度では経費が売上高を上回り、連続損失を出しています。2003年度までで、出資金や貸付金として公金を300億円も投入したにもかかわらず、このような経営不振におちいっているのは、入場者の実態が計画にはるかに及ばないなかで、アメリカ・ユニバーサル社の要求を受け入れて、高い営業費用を払い、金融機関に高い利子払いと莫大な借金返済をおこなっているからであります。このような事業には、もとより本市がかかわるべきではないのです。すみやかに撤退することを求めておきます。 

2に、OTS、咲洲テクノポート線であります。

この鉄道は財界主導の「テクノポート懇話会」が「南港、北港が一体で機能するための交通サービスを公共が先んじて行う」と提言したことを大阪市がそのまま実行し、料金問題や収益性など将来見通しを十分に行わずに強行した代物でます。はたせるかな、当初の計画では開業7年目の2003年度で単年度赤字をほぼ解消するとしていましたが、現実は膨大な損失を出し、事実上、破綻状態になっています。

港湾局は「オール大阪で問題を解決する」と、交通局に運営を委託することで料金を引き下げようとしています。利用者の立場に立って非常識な高い料金を引き下げるのは当然のことです。問題は、地下鉄事業が「上下分離方式」で高い施設利用料を払って、テクノポート線が抱えている累積損失と起債の処理を引き受けることは許されないということです。港湾事業から生まれた損失は港湾事業の収益から補填するという処理方法を考えるべきです。

例えばテクノポート線を抱えて赤字を出して来たOTS株式会社は鉄道経営を切り離せば、不動産経営だけで毎年10億円を越える利益を出しているのですから、鉄道部門が出した損失を長期計画で解消していくことは可能です。財界の無責任な要求によって生まれた損失を市民にかぶせることは絶対に避けるべきです。

3は、スーパー中枢港湾指定を利用して、不必要な夢洲C12バースを建設しようとしていることであります。

港湾局は口をひらけば船の大型化をいい、航路やバースをさらに大深度のものにするあらたな港湾整備の必要性を強調しますが、過去5年間の平均でみると元々大型船舶の多いコンテナ船などは小型化の傾向にあり、大阪港をいますぐ整備しなければならないものでないことは当然です。また5万トン以上のフルコンテナ船の入港も年間で300隻前後、全体の1%程度で、この間横ばいで推移しており、これらヨーロッパ航路などでは日本寄港の際には積み荷を満載で入港することはあり得ず、ましてや16メートルのコンテナ埠頭、及び航路が今、必要でないことはあきらかであります。

また、大阪港のここ5年間の港勢の特徴は、取扱貨物が9000万トン前後の横ばいで推移し、入港船舶は199847,410隻から200334,246隻へ減少。外貿貨物取扱総量でみると20033200万トンにとどまり、2004年度若干増えているものの港湾局が計画している2005年度4240万トンには遠くおよばない状況であります。こうした港勢の推移からみても、今大阪港に莫大な資金を投入し整備する必要はまったくないのであります。わが党委員がこうした実態を指摘し、スーパー中枢港湾指定による大阪港の開発計画は見直すべきだと求めたところ、市長はこれを拒否したのであります。

さて、今回の決算委員会を通じ、交通、水道、下水道、市民病院など、市民生活に直結した事業の問題点がうきぼりになりました。

1に、交通事業でありますが、交通事業の使命は、安全輸送に徹するとともに、市民サービスの向上をはかることであります。ところが、交通局はこの使命に背を向けているとしか言いようがありません。

交通局は、ことあるごとに「コストの削減」「経営の効率化」「民間の経営手法の導入」といい、人員の削減を強行してきました。その結果、地下鉄駅ではホーム要員がいなくなり、安全の確保が切実で重要な課題になっています。ホームからの転落事故はこの5年間で208件も発生し、3名が命を落としており、地下鉄のホームは、まさに「欄干のない橋」となっているであります。

この対策の決め手が可動式ホーム柵の設置にあることは明らかであります。ところが、理事者はホーム柵の有効性は認めながら、「既設駅での設置はむずかしい」との答弁に終始したのであります。東京などがやっているように技術的にも可能であり、財政的にもけっして困難なことではありません。

財政問題で言えば、これまで地下鉄財政の実態と経理上の数字との乖離が問題になってきましたが、このたび、わが党の長年の主張をいれて、大きく改善されました。それは、特例債元金償還補助金を資本的収入から収益的収入に正しく計上替えしたことで、単年度黒字になったということであります。また、資本剰余金に計上された同補助金の過去の積み立て分について公営企業法施行令に基づいて欠損金の処理がされましたので、未処理欠損金が前年度2932億円から一挙に1137億円へと大幅に減額になったのであります。

また、委員会質疑の中で「公営地下鉄事業の経営健全化に関する研究報告書」に基づいて同報告書の提言どおり、分割交付された建設補助金841億円についても未処理欠損金の処理をおこない、大阪市営地下鉄の会計を見直した上で、さらにトンネル等の減価償却費を査定しなおせば、高速鉄道事業会計は2003年度末で約160億円の繰り越し剰余金、つまり大幅黒字になることが明らかになったのであります。すみやかにこうした処理をおこなうよう求めておきます。

次に、フェスティバルゲートの破綻とその処理についてでありますが、自治体の本務を忘れた、いかに無謀な事業であったかがいっそう明らかになりました。

交通局が行ったフェスティバルゲートへの霞町土地信託は、大阪市が自らの土地を200億円もの公金を使って買い戻す。しかも使い勝手の悪い建物付きでという前代未聞の惨めな結果となりました。交通局はこの土地利用の再生策として、オリックスとアスクプランニングセンターがつくる新法人に一棟貸しを計画し、場当たり的に約4億円を投じてつくろうとしている交通記念館の管理運営を同法人に委託するとしています。ところが年間の委託料・共益費を約3億円法人に払う一方で、交通局が受け取る賃貸料は年間4000万円程度、多くても1億円にしかならないというものです。それは市民に再生策だと説明できるようなものとは到底言えないものであります。

このような事業の陰で大きな痛手をおっているのがテナントであります。受託銀行とフェスティバルゲートの無責任な運営のためにテナントは高いテナント料に苦しみ、裁判にまでなっています。「経営が成り立つ料金と、賑わいのある場所を斡旋してもらって経営を続けたい」というのがテナントの声ですが、交通局は「以前の受託者との契約を新法人に引き継ぐ」というだけで、テナントを切り捨てる態度です。これらの零細業者は交通局の無謀な信託の巻き添えを食った人達でありますから、切実な願いには真摯な態度で対応すべきであります。

2に、水道事業でありますが、分譲マンション水道メーターの公費による取り替えの問題です。本市住宅審議会答申でも分譲マンションの重要性がいっそう高まることが指摘されており、無料で取り替えられている戸建て住宅との矛盾がますます拡大することは明らかです。ところが理事者は、あいもかわらず、私有財産だから維持管理は居住者がおこなうべきものであり、引き続き研究するとの答弁をおこなったのであります。いったい、いつまで研究するつもりですか。このような差別的行政はただちに改めるべきであります。

また、水道および下水道料金の福祉減免は、市民生活が悪化しているなかで必要な事業であり、ぜひ継続するよう求めておきます。

この際、水道事業において、過大な投資がおこなわれていることにもふれておかなければなりません。

わが党は琵琶湖総合開発に着手する以前から、この開発が琵琶湖の自然環境に重大な影響をあたえると同時に、計画そのものが巨大であり元利合計で1000億円という費用が本市水道事業と市民にとって大きな負担となることを指摘し続けてきました。本決算においてもその事が裏づけられ、平均給水量が133万トン、1日最大給水量155万トンにとどまり、大阪市が保有する水利権267万トンにはるかおよばない事があきらかとなりました。水道局はここにきて2005年に向けての需要水量予測が過大であった事をようやく認めましたが、まさに遅きに失したといわなければなりません。

わが党委員がこうした結果から工業用水、上水道、双方ともの水利権の譲渡、転用を求めたのに対し、工業用水はその方向で進めるとしたものの、上水については100万トン以上もの乖離があるにもかかわらず、これを拒否したのであります。

3に、下水道事業についてでありますが、今大阪に接近しつつある台風23号のもとで、大阪管区気象台は1時間最大雨量を40ミリと予想しています。また、昨今の異常気象のもとで、降り始めからの1時間で100ミリを突破するような集中豪雨が日本列島を襲っていることから、大阪市も現在の浸水対策5カ年計画の見直しが求められていることは論を待ちません。来年度が計画の最終年度になりますから、事業の早期達成のために計画の見直しをわが党が求めたのは当然であります。

ところが、都市環境局は、いまだに一時間あたり60ミリの浸水対策事業を21世紀の中葉に達成するという従来の立場に固執し、一日も早く、雨に強い、安心して暮らせる大阪市にして欲しいという市民の願いにまともに答えようとしなかったのであります。

ご承知の通り、大雨警報がでるのは時間当たり30ミリ程度といわれています。この数年間に12回の大雨がありましたが、すべて30ミリを超えており、200097日には88ミリを記録し4777戸が浸水被害を受けました。

京都大学防災研究所の井上所長は、大阪市の場合、臨海部が複雑な地形になっているために、大雨台風と満潮時が重なった時には、きわめて危険な事態になることを指摘し、地震による津波対策も含めて防災計画、浸水対策を持つべきだと説いておられます。事態を一日も早く解決するために、計画を見直し、浸水対策事業を強力に進めることを求めておきます。

4は、市民病院事業についてであります。

今回の決算委員会で、わたしどもは歯科の夜間救急診療の問題を取り上げましたが、ご承知の通りこの事業は、大阪府歯科医師会の英断と献身的な努力によって支えられています。

6月に始まって以来、十分なPRがされているとは言えない状況にもかかわらず、すでに1600人を超す患者さんが受診されています。土曜、日曜は40人から50人の来診があり、お盆の4日間で141人の方が受診されています。歯科の夜間一次救急のニーズがいかに高いものであったかをはっきり示しております。

私は,この事業が本来、大阪市の責任で行われるべきものだと考えますが、市民や関係者が歯科夜間救急体制の確立を再三要求してきたにもかかわらず、当局は耳を貸さず、見通しが立たないことから、歯科医師会が全国的にも初めての試みへ踏み込んだのが事の経過だと思います。したがって、充分な財政的支援は当然だと考え、補助金の増額を主張しましたが、理事者はこれを拒否したのであります。

私が委員会で、北、十三、住吉の3つの市民病院が救急医療もやっていないのは、公的医療機関として問題ではないのかと質したのに対し、大阪市域全体の医療の将来構想も示せず、3つの市民病院の救急医療についても、ひとことも触れることが出来ませんでした。全市的な立場に立ち、市民の健康をまもり、予防に力を入れ、不採算であっても公的医療機関が担うべき部分は責任を持つという本来の使命を果すことを強く求めておくものです。

最後に、敬老優待乗車証と職員の同和研修について指摘をしておきます。

敬老優待乗車証、いわゆる敬老パスは、大阪市を築いてきた高齢者への敬老と市民への敬愛の念を込め、全国にさきがけてつくられた制度です。高齢者の生き甲斐にも役立っており、市民から大変喜ばれ、今後も継続・充実させることが期待されています。ところが市長は、「この制度のあり方について、総合的に検討していく」などと見直しの姿勢を露骨に示したのであります。市民の強い願いであると同時に、バス事業にとっても大事な制度です。是非、現行どおり存続させるべきです。

また、水道局などの同和研修についてであります。周知のように、2002年に国の同和事業は廃止されています。ところが、本市ではいまだに同和研修がおこなわれているのです。

水道局では、研修のテーマや手法を決める機関として三者会議なるものを設置し、水道局、労働組合に加えて職場の一民間団体である「部落解放研究会」が参加しているという、相変わらずの特別扱いを続けています。そうした結果、研修のテーマは「部落差別はなぜ残されたか。同和問題の解決はなぜ行政の責任かつ国民的課題なのか。ねたみ意識と逆差別について」などと「部落解放同盟」の認識と一体のものとなっています。このことこそが、市民の納得も理解も得られない不公正・乱脈な同和行政を永年にわたり継続してきた根本問題であります。

こうした問題は水道局だけの責任ではありません。毎年行われる部落解放同盟大阪府連との交渉には、市長はじめ助役・教育長、各局長が参加し、「解放新聞」大阪版によれば、市長は「これまでの同和行政の成果を人権行政の中に積極的に生かす」と決意をのべているのであります。直ちにこうした特定運動団体への迎合姿勢を改め、人権行政の名で行われている特別優遇施策を廃止するべきです。

以上、市民に開かれた市政への転換が切実に求められていることを申し上げ、討論といたします。