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市議団の実績

2001年11月29日市議会本会議での

矢達幸議員の決算反対討論

 私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2000年度大阪市一般会計決算等の認定に反対の討論をおこないます。

 大阪市はこの間、オリンピック招致を市政の中心課題に位置づけ、「国際集客都市」づくり、なかんずく夢洲開発と北港テクノポート線建設などの巨大開発を推進し、招致費だけで48億円もの市税を投入し、全庁をあげて取組んできました。しかしたったの6票しか集まらず、惨敗を喫したのであります。
 国際オリンピック委員会からは、「大阪五輪の遺産として巨大なインフラだけが残るであろう」と指摘され、またそれは「市財政を危うくするのではないか」との懸念も表明されました。
 市長は、こうしてオリンピック招致が失敗したにもかかわらず、「国際的な知名度が上がった」だとか、「無駄にはならなかった」などと、招致活動に多額の税金を使い、また、巨大開発を推進してきたことには反省の弁が一言もありません。私は、このような無責任な市長の姿勢を、まず最初に厳しく批判するものであります。
 同時に、小泉内閣の成立以降、どの指標をとってみても、経済情勢は一層悪化し、とりわけ、近畿、大阪の状況はきわめて深刻です。
 こうしたもとで、260万市民のくらしに直接責任を負う本市の役割は、まことに大きいものがあります。国に悪政の転換を求めるとともに、市民の健康・安全・福祉を保持するという地方自治体本来の仕事をしっかりと行うことであります。
 ところが、本決算にあらわれているのは、市民の願いを冷たく切り捨てる一方、巨大開発には手厚いという逆立ちした姿であります。
 同時に、起債残高がさらに増大し、財政の厳しさも一層進行しているのであります。
 とうてい認めることはできません。以下、具体的に指摘したいと思います。
 
決算認定に反対する第1の理由は、夢洲開発などの巨大開発や、巨費を投じて失敗した第3セクター事業に、市民の税金が湯水のように無駄遣いされているからであります。

 今度の決算委員会を通じて、夢洲の開発が、いかに無謀であるかが明らかになりました。
肝心の埋立分譲地は、バブル経済崩壊後の10年間、舞洲やコスモ2期の新規開発地では、民間へはほとんど売れていないのであります。なかでも、舞洲スポーツアイランド計画では、売却する予定だった16ヘクタールは全く売れずに、民間呼び込み型開発は見事に失敗しています。今でも、未売却地は98ヘクタールもあり、言わば土地が在庫過剰になっているのに、新たに夢洲で105ヘクタールもの売却地をつくることは、無謀としか言いようがないのであります。
 夢洲の150ヘクタールもの住宅地づくりも、全く需要が見込めません。2000年度の国勢調査では、1995度からの5年間に、中央区・北区・西区・天王寺区の都心部4区で1万9千も世帯が増加しています。地価バブルがはじけ、便利な市の中心部や市内にこそ市民が住居を求めているのが、今日の流れであります。
 市長はこうした土地の過剰在庫や住宅地の流れは否定できず、夢洲開発は20年先、30年先、100年先を見て必要なものだと答弁しました。それならなぜ今、無人島に向かって、巨額の赤字を抱え込むことがはっきりしている北港テクノポート線を建設し続けるのか、なぜ土地造成を急ぐのか、まったく説明ができないではありませんか。
 さらに、土地が売れない中で、夢洲の基盤整備に5千から6千億円もかけることは、一般会計に大きな負担を与え、市民生活が犠牲になることは必至であります。
 大阪市は夢洲開発を、小泉内閣の都市再生の一環に位置づけ推進しようとしていますが、こんな無駄で無謀な大型公共事業はただちに中止しなければなりません。
 
 また、ATC・WTC・湊町開発センター・大阪シティドーム・クリスタ長掘への大阪市の支援、公金貸し付けも、市民の税金の無駄遣いという点で異常なものであります。
 ATCは2000年度にはじめて減価償却前で黒字になりましたが、これは経済局等が民間テナントと比べて1.9倍もの家賃等を払って、約2万平方メートルの床を借りて事業をおこない、支えているものであり、WTCでも、港湾局・建設局・水道局など5局とその外郭団体が、1.5倍の高い家賃で、オフィス面積の72%も借りているからであります。まさに、出血サービスまでして大阪市が支援しなければ、会社の経営は回って行かなくなっています。またこの2年間に、大阪市がATCに貸付けた66億円は銀行への借金返済57億円に回され、この3年間のWTCへの120億円の貸付金は、104億円も銀行借金返済に回されているという、ひどい事態になっていることが明らかになりました。
 さらに、大阪市が経営支援のために公金貸付をおこなっている5つの3セク会社の民間銀行等からの実質の長期借入金の2000年度の残額は、合計3000億円にもなり、2000年度の利子払いは69億円、これまでの利子払い合計は543億円にも達しています。銀行等は、5つの会社が経営困難であることを承知で、平均金利2.3%で利子をとり続け、さらに貸付金回収のために、大阪市に無理な会社支援を求め続けているのであります。
 市長は、「第3セクター会社は大きな借入金で事業をしたから経営困難に陥っているが、大阪市として守り続けたい」と答弁しましたが、銀行がその過大貸付責任を負わず、ぬくぬくと利子を受け取り続け、貸付金総額の返済を期待するのも、大阪市が打出の小づちのように1000億円もの貸付をし、支援を続けるからであります。市民の税金が銀行の食い物にされる経営支援はきっぱりとやめるべきであります。
 
 反対理由の第2は、市民の願いには大変冷たいということであります。

 特に、子育てをしている父母の願いに対する冷たさは、度を超しているのであります。
保育所の待機児の数は、1991人と全国一の深刻さではありませんか。にもかかわらず、大阪市は公立保育所の統廃合をすすめ、昨年、大道、矢田第2の2園を廃止したのに続き、今年も西成区・東田保育所を廃止しようとしているのであります。片方では、民間保育所には、国の言いなりに、弾力化だといって、定員の枠を大きくこえて入所させ、過密状態の中での保育を余儀なくさせています。民間保育園経営者の中からも、批判の声があがっているのは当然であります。
 また、1998年にやっと法制化された学童保育は、第2種社会福祉事業とされたにもかかわらず、補助金増額の要求にこたえず、学校の余裕教室を貸してほしいという要求も拒否したままです。住之江区の学童保育所で、子どもたちの命に危険が及んでも、工夫すれば教室を貸すことができるのに、あくまでも貸さないという姿勢は言語道断であります。

 また、児童・生徒の健康の問題について、高学年になるほど健康状態の悪化がすすみ、大人になって、死亡率も全国平均を超えていることをわが党委員が指摘し、子どもの健康を守るプロジェクトチームを作って、真剣な総合的対応を検討すべきではないかと市長の所見をただしたのに対し、「基本は、家庭のしつけ、親の考え方だ。何もかもできない」などと、時代錯誤もはなはだしい答弁をいたしました。

 少人数学級の問題でも、わが党委員が、4月10日の市の教育委員会議で「少人数学級にふみだすべきだ」との積極的発言がなされたことや、他都市の進んだ取り組みも紹介し、大阪市も少人数学級にふみだすべきだと迫ったのに対し、理事者は「国と大阪府の動向を注視していく」との、消極的答弁に終始したのであります。

 さて、いま小泉内閣は、国民や患者には、保険料や窓口負担の大幅増額や高齢者医療の対象年齢の引き上げなどの犠牲を押し付けようとしています。これに対して医師会・老人会や多くの市民から大きな反対運動が広がっています。市長として、市民の健康や医療を守る立場からきっぱり反対すべきなのに、「今後の国の動向を注視する」とまるで他人事のような態度を表明いたしました。
 一方、国民健康保険の未納を理由とした資格証明書の発行や短期保険証の発行など、命の綱の保険証をとりあげ、市民の受診抑制につながる冷たい施策は積極的にすすめています。とうてい承服できません。
 また、介護保険についても同様であります。コンビニの廃棄食品を食べたり、一食分の食事を三度に分けてその日をしのいでいる高齢者の実態を、わが党委員が示して、保険料減免の改善や利用料減免に踏み出すことを提起したのに対して、市長は「制度的には不完全、試行錯誤の最中」と述べるにとどまりました。「制度的には不完全」と認めるならば、国に対して制度の改善を求めるとともに、市独自にも、とりわけ矛盾の集中している低所得者への対策をすすめるべきであります。

 また、雇用や中小企業対策も極めて不充分であることがはっきりしました。
 言うまでもなく、今、完全失業率が5.3%まで激増し、戦後最悪となっております。なかでも、近畿は6.6%と大変深刻であります。職をなくするということは、単なる「痛み」などというものではありません。その家族を含め生きる糧(かて)をうばわれるということであります。
 小泉内閣は「聖域なき構造改革」などと叫び、「産業再生法」や「会社分割法」によって大企業のリストラを応援してきたことに加え、中小企業に大量倒産と失業を激増させる「不良債権の早期最終処理」を強行しています。そして職場では、苛酷な労働や長時間残業、サービス残業が強制されています。この事実は、過剰なのは雇用ではなく労働時間であることを証明するものであります。今日の失業の急増は、まさに小泉内閣の悪政の結果引き起こされたものであります。
市民生活に責任をもつ市長が先頭に立って「雇用対策本部」を設置し、在阪企業に対して「無法なリストラやめよ」「法律違反のサービス残業やめよ」などと申し入れるとともに、国に対しても「『解雇規制法』の制定を求めるべき」と私が提案したのに対して、「雇用ミスマッチが多いのが原因、雇用チャンスはある」とか「不良債権の処理は好況につながる」などと、小泉内閣の悪政を応援する態度に終始したのであります
 その上、雇用を守るべき大阪市が、こともあろうに、「新行財政改革計画」で、2000人以上もの職員削減を計画しているのであります。言語道断と言わねばなりません。雇用情勢が大変厳しい今日、このような人減らし計画は撤回し、国の示す基準を満たしていない消防職員の補充を行うなど、市独自の雇用拡大に努力すべきであります。

 また、中小企業の町大阪で、その対策費が、融資事業を除けば、わずか52億円しか執行されていません。これは、ATC事業への48億円の支出とほとんど変わらないではありませんか。   
 不況で苦しむ23万の市内中小企業事業所1カ所あたりではわずか3430円であり、商店街、小売市場振興費でみても、一商店街・市場あたり280万円という貧弱なものです。湾岸部での巨大開発にジャブジャブ公金投入する反面、このような逆立ちした中小企業対策は許せないのであります。

 さらに、阿倍野再開発事業についてであります。
 当事業は、最終段階をむかえ、その心臓部であるA2地区を残すのみとなっています。ところが、バブルの発想での巨大商業施設の計画は破綻し、事業が行き詰まってしまいました。そして、これまでの事業の分で、1350億円もの巨額の借金が残る見込みであることがあきらかとなり、さらに「ルシアス」とA2地区では、分譲方式では見込みがたたず、賃貸方式に切り替えたため賃料収入と起債償還のバランスがとれず、すべてをつぐなうためには2200億円もつなぎ資金として、公金投入が必要であることも明らかとなったのであります。
 今後の事業の推進方法として、大阪市はA2地区の商業ビルは設計から工事まで一括民間業者に任せる特定建築者制度を導入しようとしています。アメリカの金融バブルで急成長した投資会社サイモン・プロパティ・グループに丸投げし、建物はサイモンが建てる、建設費は大阪市が起債発行でまかなう、その建物はサイモンに賃貸しする、これではまさに、サイモンに至れり尽くせりではありませんか。
 大阪市が事業の収束を焦るあまり「ワラをもつかむ思い」で投資会社のサイモンに全てを任せても、サイモンはもうからなければ撤退することもあり、危険極まりないものであり、第二種再開発事業としての公共性を全て投げ捨てるものです。
 さらに大阪市が、こうして阿倍野に巨大商業施設を誘致することが、地元商店街はもちろんのこと、市内商店街、小売市場に重大な打撃を与えることは明白であります。ところが理事者は、「双方のすみ分けは可能」などと、無責任な答弁をおこなったのであります。

 反対理由の第3は、2000年度決算でも、乱脈、不公正な同和事業費が、自治省報告ベースでも187億円も使われているからであります。

 同和事業は今年度中に終結しなければならないのに、あいかわらず運動団体への助成をはじめ、教育や住宅など、広範にわたる不公正を続けているのであります。
 そればかりか、同和住宅は浪速区・西栄などで、今も、258戸が建設中であり、来年以降も一般募集せず、「新方式」で特別な管理を続ける、同和保育所には人権保育と称して保育士の加配を続ける、一民間病院にすぎない芦原病院への補助金、特別貸付金を来年以降も出し続ける、これらの事業を、市同促・地区協方式と言う現在の事業手法を事実上残して進めようとしているなどの重大な問題が浮かび上がったのであります。
市長は、この乱脈、不公正をあらためるキッパリした意志を表明せず「同和対策推進協議会意見具申を尊重する」として、事実上、同和事業を継続しようとしており、とうてい承服することはできません。

 最後に、公共工事の入札について、ひとこと指摘しておきます。
大阪市の今年4月から10月までの工事請負契約の総件数は782件ですが、予定価格の総額に対する落札額の総額の割合は97.1パーセントであり、談合の疑いが否定できないのであります。
 3億円を超える工事は28件あり、この予定価格総額に対する落札額総額の割合は98.3パーセントであります。同和建設業者の場合は、98.8パーセントとなっており、談合の疑いがさらに高まります。
 日本弁護士連合会の入札についての提言では、落札率が90パーセントを超えるものは「談合」と断定しており、大阪市の入札監視委員会委員からも、「談合の疑いあり」と指摘されており、日弁連の提言では、30社から100社を集めて入札すべきだといわれております。
公正で自由な入札、談合防止のために、一般競争入札を増やし、入札参加業者を増やすなどの当面の対策強化が必要となっていることを指摘して、反対討論を終わります。