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介護保険条例改正案 提案理由の説明 山中智子議員

 2002年12月3日本会議

私は、日本共産党大阪市会議員団を代表いたしまして、ただ今上程されました議員提出議案第16号、「大阪市介護保険条例改正案」について、内容と提案理由の内容について説明いたします。議員の皆さんにご賛同いただけるようお願いいたします。

 まず、提案内容の第一は、利用用の減額です。居宅介護サービス費の額、居宅介護福祉用具購入費の額、及び居宅介護住宅改修費の額等を現行の100分の90から100分の97に引き上げ、在宅サービスの利用者負担を10%から3%に引き下げようとするものです。

 第二は、保険料率の軽減です。所得階層第1段階、第2段階、つまり、住民税非課税世帯までは、保険料を無料とし、所得階層第3、第4、第5階層の方については、それぞれ保険料を基本額の4分の1ずつ、減額しようとするものです。

 第三に、その財源は、被保険者の保険料をあてるのではなく、一般会計からの繰り入れでおこない、国にもその財源の一部を求めようというものであります。

 次に提案理由を申し上げます。

第一は、長びく深刻な不況にくわえ、老人医療の相次ぐ改悪や年金の削減によって、いま多くの高齢者がとことんおいつめられ、せめて介護保険料や利用料の負担を軽減することなしに、高齢者の生活を守れないからです。きりつめてきりつめるところなど、どこにもない方たちがたくさんおられます。ガンにおかされ、やせ衰えた体で、それでも生計の足しにと新聞配達をしている方がおられました。それもできなくなった時、家族に気兼ねしながら、まるで、火が静かに消えていくように息を引き取りました。

この10月から、高齢者の医療費が1割または2割負担となりました。「次から次へと、こんなことをして。年寄りは死ねということか」と怒りの声が広がっています。「通院回数を減らします」「発作につながるのはわかっているけれど、薬を減らしてほしい」など、生きていくうえでどうしても必要な治療さえ、自ら拒む方もおられます。医療費引き上げの影響が一番大きいものの一つに在宅酸素があります。患者さんから「在宅酸素をやめてほしい」と言われた医療従事者は、「在宅酸素をやめたら、酸素を使わないよう、一歩も動かずじっと寝ているしかない。人生の終わりに、何もかもあきらめて天井だけを見て、寝ている時間を選ばなければならないなんて」と声をつまらせていました。長い間、ご苦労を重ねて生きてこられた方たちが、なぜこんな思いをしなければならないのでしょうか。介護保険料を引き上げることは、そんな思いに追い討ちをかけることです。あらゆる努力をして、値上げをストップするとともに、いまでも大きな負担となっている介護保険料を引き下げることがどうしても必要です。とりわけ条例案では、住民税非課税の保険料を無料としていますが、住民税非課税世帯とは税金を負担する能力がないと認められている階層です。この層から保険料をとらないことは、当然です。

第二は、政令指定都市のなかで、第1段階、第2段階の低所得層の比率が最も高いのが大阪市で、利用者負担がサービスの利用を阻んでいることは明らかだからです。13年度の介護保険のサービス利用状況は、限度額の40%程度で、その結果お金が余り、13年度末で75億円もの巨額の剰余金を積み立てる結果となりました。「どんなにその人にとって必要な、ふさわしいサービスを組もうとしても、5千円以内でやってほしい。8千円までしか出せないと言われることが多い。この人のくらしや体がどうなるか胸が痛むけれど、どうすることもできない」。ケアマネージャーさんたちの共通の言葉です。経済的な理由で訪問介護を減らした方のことが気になって、通りがかりに寄らずにはいられないというヘルパーさんもおられます。こんな悲しい現実が巨額の基金の裏にあるのです。本市介護保険事業は、その基本理念で「高齢者自身の意思が尊重され、また介護が必要な状態であることについて一切の差別を受けることなく、人としての尊厳を保って、その人らしい生活を継続できることが必要です」とうたっています。この理念にてらしても、利用料が重たくて必要なサービスを受けられないなどということが許されるはずがありません。

大阪市自身も国に対しては「低所得者の保険料や利用者負担の減免については、高齢者の所得状況等の実態をふまえ、介護サービスの利用が制限されることのないよう特段の措置を講じること」と、低所得層への手だてを繰り返し要望しておられます。私たちも全く同感です。

しかし、国が「特段の措置を講じる」までの間、当面、直接市民に接し、その痛みを肌で感じる地方自治体が、保険料・利用料を軽減するために、できる限りの努力をするべきです。現に、400を超える市町村が、さまざまな困難をのりこえて、利用料の独自減免に足を踏み出しています。

今回の提案の、保険料の減額に必要な財源は約100億円、在宅サービス利用料の3%への引き下げに必要な財源は23億円、合計l23億円あればできるのです。市民にとって縁の薄い大型開発には、毎年毎年一千億円近くの税金を投入しているのです。こうした税金の逆立ちした使い方をあらためるならば、この提案は財源的にも十分可能なのです。

最後に、言うまでもなく、介護保険が抱えるさまざまな矛盾は、サービス量を増やせば保険料引き上げにはねかえるという仕組みを、国と自治体の負担割合を大幅に引き上げる方向で見直すなど、介護保険制度の抜本的改革なしには解決できません。3年に一度の介護保険見直しの時期にあたり、国にこのことを強く求めるべき時です。そして、そのためにも、この大阪市が一般会計からの思い切った繰り入れを行い、安心できる介護保険制度実現への先駆けとなることこそ、国の姿勢に大きな影響を与え、制度の抜本的改革を促す大きな力になると確信するものです。

 議員の皆さんのご賛同を重ねてお願いいたしまして、提案説明といたします。