私は、日本共産党大阪市会議員団を代表して、2002年度大阪市一般会計等予算案に対する組み替え動議に賛成し、原案に反対の討論を行います。
 今、小泉構造改革の下で、かってない程の厳しい経済状況にあります。市民の間には、生活や雇用の不安、老後や将来への不安が渦まいております。
 こういう中で、本市予算編成がいかにあるべきかは、既に明らかであります。
 すなわち、住民の福祉の増進につとめるという地方自治体本来の役割をしっかりと果たすものにすることであります。
 ところが、本予算原案は、市民の願いにはまともに応えようとしないばかりか、相変わらず、巨大開発やその失敗の穴埋めに巨費を投じようとしているのであります。到底認めることはできません。
 以下、具体に指摘したいと思います。
 反対理由の第1は、緊急切実な市民の願いには、ことごとく背を向けているからであります。

介護の負担の軽減にも冷たい態度

 先ず、何といっても、介護の負担の軽減、とりわけ、低所得者対策の緊急性の問題であります。
 今、高齢者の中で、介護保険料の天引きはやめてほしいなどの悲痛な声があがっております。又、利用料も高すぎてサービスを控えざるをえない、何とかしてほしいとの声も寄せられているのであります。こういう中で、わが党議員が、保険料減免制度の改善と、利用料減免制度の新設を迫ったのは、至極当然でありました。ところが磯村市長は、「利用料負担には、低所得者に配慮した上限が設けられている」とか、「制度新設は本来国がやること。国がやらないことを地方自治体が安易にやることは、慎みたい」などと、理由にならない理由で制度の新設をあくまで拒否したのであります。国がやらなくても、市民に必要なことを独自にするところにこそ、地方自治体の役目があるのではありませんか。全く承服することはできません。
 
負担の限界を超えている国保料を市民に押し付け

 又、国保の問題では、わが党は、3年連続、3%の値上げの撤回を強く求めました。これに対して市長は、「保険制度の抜本的改革を国に求める」と言うだけで、わが党が提起した、国に対して国庫負担の割合を元に戻すことや高すぎる薬価の引き下げを求めることに同意せず、一般会計からの繰り入れをあと25億円増やして緊急的に値上げを回避することも拒否しました。既に負担の限界を超えている保険料を市民に押し付ける冷たい態度と言わざるを得ません。
 
保育所待機児問題は保育の質の低下と安上がりのやり方で解消

 又、3年連続日本一となっている、保育所待機児の問題では、大阪市は、公立保育所の保育士基準の改悪や駅前テナントビルに、子供がはいはいするスペースも、遊びまわる園庭もない民間保育園の分園をつくるなど、保育の質を低下させる安上がりのやり方で解消しようとしています。しかも、こうした民間まかせ、安上がりの安直なやり方で、肝心の待機児の解消もすすまず、新年度で千数百人の待機児が出ていることも委員会審議の中で、明らかになりました。この解決の道として、わが党議員が公立保育所つぶしのいまのやり方を改め、公立、私立含めた保育所建設計画を立てる事を提起したのに対して、「これからの少子化のときに保育所建設に突っ走ると後がどうなるか心配」だと、増設に背を向けました。しかし、市長、民間保育所の経営者が「後がどうなるか心配」と新たな保育園の新設・増設に不安を感じるのは当然です。だからこそ、公立保育園の役割が大事なのです。民間がやるべきレジャーランドや開発は行政が行い、行政が担うべき子供の保育は民間任せ。あなたのやっていることは全く逆さまであります。
 
教育条件整備も全く後ろ向きの答弁

 又、教育条件整備、なかでも少人数学級の実現は、いまや国民的世論になっており、県段階でも、従来の5県から、新年度は16県に実施が広がります。政令市では仙台市が踏み出します。少人数学級は、いじめ、学級崩壊、不登校、校内暴力など、今学校現場で抱えている困難を解決していく条件整備のかぎであり、「大阪市としての方向性をはっきりと提示すべきだ」とわが党議員が提起したのに対し、市教委は、「府が措置した定数を超えて市が独自に教員の配置を行うことは困難」だと、全く後ろ向きの答弁をおこなったのであります。
 その上、中学校給食についても、わが党議員が「設備費用は125億円あればできる。ただちに実施すべきだ」と強調したのに対し、市教委は「家庭での役割が大きい。家庭との絆を深めるよい機会である。基本的に昼食時の弁当持参を指導していきたい」という無責任な答弁に終始しました。それでは逆に、いわゆる「同和推進校」でなぜ中学校給食を継続しようとするのでしょうか。少なくとも、親の愛情はいらないというのでしょうか。家庭の絆は無視するというのでしょうか。全く説明が成り立たないではありませんか。
 
異常な高倍率の市営住宅は建設検討も拒否

 さて、市民の願いに関して、最後に市営住宅問題について、一言指摘しておきます。言うまでもなく、市営住宅の大量建設は、一般住宅の最高倍率495.5倍、高齢者住宅245倍、単身者住宅612倍、母子福祉住宅99倍、障害者住宅120倍と、異常な高倍率になっているように、市民の切実な願いです。市営住宅の増設は、大阪の再生にとってもなくてはならないものです。ところが、本市は広大な未利用地をかかえているにもかかわらず、「地価が高く、土地を取得してまで建設はできない」と、検討することすら拒否したのであります。
 また、今大きな社会問題になっているDV被害者の救済で、大阪府も実施している優先入居を大阪市もおこなうべきだとわが党議員が求めたのに対し、「DV被害者の居住問題は国の通達がない」と冷たく突きはなしたのであります。

巨大開発に莫大な予算を計上、失敗の穴埋めに、更に、公金を投入 

 反対理由の第2は、相変わらず巨大開発に莫大な予算を計上するとともに、その失敗の穴埋めに、更に、公金を投入しようとしているからであります。 
 周知のように、これまで大阪市は、経営破綻をきたしたATCなど第3セクターのために、1997年以来、市民の批判をよそに、公金で赤字の穴埋めを行ってきましたが、それが、今度の委員会審議を通じて、これらの支援策が更にエスカレートするとともに、穴埋めする事業も、いわゆる5K赤字から8K赤字と言わざるをえない程に広がっていることが、明らかになりました。
 WTCやATCなど5K赤字に対しては、97年度から2001年度まで、実に668億円もの支援を行った上に、新年度は190億円と前年度と比べて4億5000万円増額計上しているのであります。
 又、この市本体の支援だけではどうにもならなくて、外郭団体である市開発公社に200億円もの増資を行って、グループファイナンスをつくらせて、2001年度、シティドームには46億5000万円、クリスタ長堀には23億円、WTCに20億円と、この3つの株式会社に返すメドがないにもかかわらず、89億5000万円も貸し付けるのであります。市民の理解が得られるはずはありません。
 
CAT機能喪失、毎年32億円もの赤字穴埋め支援

 又、今回、湊町開発センター・OCATのいわゆるCAT機能が、喪失のやむなきに到ったことが明らかになりました。WTCなどと同様、コンセプトなどどこかにほうり捨てたに等しいもので、雑居ビルと化したものであります。
 周知のように、大阪市は、この湊町開発センター・OCATのために、1.2ヘクタールもの土地を坪当たり2300万円で購入いたしました。そして、これまで支払った起債の利子だけで398億円にもなります。本来、この利子ぐらいは償うべきOCATからの賃料は、わずか4億6000万円しか入っておりません。その上、毎年32億円もの赤字穴埋め支援を行っているのであります。まさに、壮大な浪費と言わなくてはなりません。
 又同時に、これら5K赤字以外でも、阿倍野再開発事業に、毎年、国の支援を含め80億円もの起債償還資金を一般会計から支出せざるをえなくなっていることに加え、道路公社も駐車料収入が当初見込みの45%に落ち込んで、60億円程度の銀行借り入れを余儀なくされております。大阪市がその債務保証を行うのであります。
 又、USJに土地を提供している区画整理事業が、華やかなUSJの陰で、起債償還に事欠く始末となっております。委員会審議を通じて明らかになりました。
 この此花区西部臨海土地区画整理事業は、1000億円近い事業費のうち、750億円をUSJの駐車場用地など、22ヘクタールの保留地処分で充てるべきところ、これまで0.2ヘクタールしか売れなくて、2001年度は、都市整備基金から29億円余りを借り入れると共に、2002年度は、38億円余りの元利金債を発行する、つまり、起債を償還するために、新たな起債を行うのであります。しかも、USJ内の18ヘクタール、500億円相当の保留地は全く売れるみこみはありません。大阪市が長期にわたって、赤字をしょいこむことになるのであります。とんでもない話ではありませんか。
 
国際集客都市づくりは、2兆7000億円起債残高がふえ膨大な借金を

 このように、大阪市の国際集客都市づくりは、大阪の経済、なかでも、中小企業・中小商店の活性化には役立たなかったばかりか、一般会計だけで、90年度8200億円であったものが、来年度2兆7000億円にも起債残高がふえるなど、膨大な借金をかかえこむことになりました。そして、その上、肝心の集客施設そのものも、ことごとく失敗して、にっちもさっちもいかなくなっているのであります。
 今こそ、深刻な反省が必要ではないでしょうか。そうして、少なくとも、採算などの見通しのもてない事業などは、キッパリ中止すべきであります。ところが磯村市長は、性懲りもなく、夢洲開発は続行する、北港テクノポート線や夢洲トンネルなどの工事はドンドン推進すると言うのであります。まことに度し難いと言わなくてはなりません。
 元々、夢洲の4万5000人の街づくりなるものが、何ら見通しもなく、全く合理性も必要性もないものであった上に、オリンピック招致失敗によって、極わずかの大義名分すら失いました。
 しかも、5000億円とも6000億円とも言われる基盤整備の費用は、大半この夢洲の土地を売却して充てるべきものであります。咲洲や舞洲の膨大な土地が売れ残り、USJ周辺の土地すら売れないという状況の下で、夢洲の土地が容易に売れるはずがありません。またぞろ、一般会計に大きなしわ寄せをするだけであります。わが党議員が、委員会で指摘したように、夢洲の土地利用計画を変更し、廃棄物処分場として延命をはかるべきであると申し上げておきます。
 
JR梅田貨物駅北ヤードの開発は市民に知らせず、財界の意のままに

 又、今回、JR梅田貨物駅北ヤードの開発にからんで、東淀川区や淀川区、東住吉区、此花区などの自動車公害が一層悪化する問題が浮上いたしました。小泉内閣が打ち出した都市再生プロジェクトの一つに、梅田北ヤードの開発が入ったことで、この貨物機能を吹田や東住吉・百済駅、此花区・安治川口駅などに強引に移そうとしているからであります。
 吹田への貨物移転計画によれば、一日1000台ものトラックなどが、新大吹橋(しんおおふきばし)を通って、東淀川区内に入ることになります。又、東住吉区・百済駅では、北隣の東部市場出入りのトラックなどとバッティングすることになり、安治川口駅では、ただでさえ環境汚染の著しい此花区北港通り周辺に、一層深刻な影響を与えることになります。
 しかも大阪市は、このような重大問題を市民に知らせようともせず、鉄建公団などに責任を押しつけながら、関西財界の意のままに、北ヤードの開発に血道をあげようとしているのであります。市民不在、先ず北ヤードの開発ありきの姿勢は断じて認めることはできません。 
 なお、港湾局がオリンピックスタジアムに予定されていた用地を大手運送会社に売却しようとしていますが、市民の健康増進とスポーツ振興のために計画されたスポーツ用地を、周辺に自動車公害をまき散らす大手運送会社に売却するなどは、最悪の選択であります。市長は、先の決算委員会で、夢洲については、「ただ土地を売ればいいという粗雑なやり方ではだめだ」と自ら言っておきながら、舞洲でやっていることはその逆ではありませんか。断じて認めることはできません。

終結すべき同和事業、同和行政を一般施策の名で事実上、継続

 反対理由の第3は、終結すべき同和事業、同和行政を一般施策の名で事実上、継続しようとしているからであります。
 市長は、この3月末をもって、特別措置としての同和事業は終えると再三表明してきました。ところがその実、浪速区の芦原病院には、今の規模では経営が成り立たないにもかかわらず、ズルズルと10億円もの貸し付けや運営補助を行う他、共同浴場にも、これまで毎年、多額の補修費を計上しながら、来年度も又、15億円もの改修費を計上する上、今後も運営助成を続けるというのであります。又、「同和住宅」の空家募集についても、一般募集とは名ばかりで、募集範囲を小学校区にするなど、極めて限定的なものにすぎません。 
 又、これまでの各種事業へのおびただしい数の人の配置についても、ほとんど変わりがありません。青少年会館の指導員95名もそのままなら、解放会館改め人権文化センターにも、13館で265名配置されております。これがいかにひどいかは、20万人を対象とする平野区民センターは、コミュニティ協会の職員5名で管理運営されているのに対して、たかが400名を対象とする平野人権文化センターには、なんと13名もの職員が配置されていることからも明らかであります。まさに、これまでの不公正・乱脈な同和事業を一般施策と名をかえて継続するに等しいのであります。
 しかも、一貫して本市同和行政を歪めてきた市同和事業促進協議会・地区協を人権協会と改名して存続させ、17項目もの新規事業を含め、実に、60億円もの特別事業を委託して、同和利権の温存をはかっているのであります。言語道断と言わなくてはなりません。
 なぜ、ここに来ても、このような体たらくなのか。それは、「解同」大阪府連の運動方針の中に示されております。例えば、市営住宅の空家募集については、「無原則な公募入居を許さない方式を徹底させる」などと、強調されているのであります。まさに、この期に及んで、尚、「解同」言いなり、主体性の欠如、そのものであります。
 これでは、真に自由な社会的交流を促進して、部落問題解決に向け前進することなど望むべくもありません。

言論・表現の自由を侵す「屋外広告物条例」は撤回を

 最後に、屋外広告物条例の一部を改正する条例案等について指摘しておきます。
 その内容は、これまで一定の条件付で認められていた、電柱や歩道柵などへの政党や労働組合等の非営利のポスター・ビラ等の掲示を、大幅に禁止するものです。改正案は、言論・表現の自由が民主主義社会で果たす役割を軽視し、大きな制約となる内容となっており、言論・表現の自由を守る観点から賛成することができないのであります。
 市民や労働組合等が、自らの主張を多くの方に知ってもらおうと、ポスターやビラ等を通じて訴えるという行動は、「思想信条の自由、表現の自由」として当然の権利であり、保障すべきものであります。
 また、今でさえ、軽犯罪法違反として、ビラ・ポスター貼りに対する警察の干渉等が、今後は条例違反としてさらに増加する危険があります。条例案の撤回を強く要求するものです。
 また、「大阪市安全な街づくり条例案」についてでありますが、具体的な計画は市長に白紙委任することになっており、拙速をさけ市民の声を聞くべきであります。

 以上、予算組み替え動議に賛成、原案反対の討論とします。
谷下浩一郎議員の反対討論