私は日本共産党大阪市会議員団を代表して、ただ今上程されました議員提出議案第5号「大阪市中高層建築物日影規制条例案」について説明させていただきます。
まず条例案の内容ですが、大阪市独自の条例を定め市民の日照権を守ることを目的とするもので、特に大阪府条例で規制の行われていない準工業地域にも日影規制を行うよう区域を定めると同時に、住居系の高度利用地域についても日影規制を強化するというものであります。
次に提案の理由でありますが、
 
行政指導に限界


提案理由の第1はこの間、計画消防委員会において数度にわたって陳情が出され、議論のあったように市内あちこちで日照権侵害についての紛争が起こっています。

現在大阪市では日影を規制する独自の条例が制定されておらず大阪府の条例に準拠しています。そのため、大阪府の条例で日影規制の行われていない準工業地域、あるいは住居系の容積率300%地域において住宅や教育施設などで深刻な日照侵害が生じても法的規制が無いため、行政指導に限界があり市民の最低限の日照権すら保護されない事態が生じているであります。

人権侵害とも言える事態が起こっている

 これは地域の特性に応じ、一定の範囲ごとに用途地域が制定されているわけですが、大阪市域においては集約的な土地利用や産業構造の変化により同一の用途地域内において様々な建築物が混在し、日照が確保されなければならない住宅が多数存在していても現行制度ではそれが斟酌されず、用途地域ごとに一律的に日影規制がかからなかったりすることがこのような事態を引き起こしているのであります。
 たとえば最近の事例では、平野区長吉出戸3丁目の14階建てマンション建設の場合ですが、ここは準工業地域でありますが現状は工場が次々と撤退し、すでにこの地域は住宅地域の様相を呈しています。ところが準工業地域だから日影規制なしということで、住宅地域では日影規制に抵触し建設できないような高層マンションが計画され、隣接する学校施設や北側に居住する多数の住民に対し深刻な日照権の侵害が行われようとしているのであります。また大正区3軒家東の容積率300%が適用される第2種住居地域における15階建てマンション建設においても、高度利用すべき地域であると言うことで日影規制がはずされていますが、実際は建設予定地のすぐ北側に40戸以上の一戸建て住宅群があり、マンション建設のために冬至日には一日中まったく日が差さないような深刻な日照侵害が生じる事が明らかであるにもかかわらず、何ら保護されないと言うまさに人権侵害とも言える事態が起こっているのであります。
 平野区のマンション建設については「準工業地域であった場所が住宅主体に変わったゾーンについては日影規制に準じた扱いをやるべきだろう。これが常識であると思う」と計画消防委員会において陳情に対する磯村市長の見解表明があり、現在、住民による民事訴訟、工事差し止め請求が行われており、裁判所も受認限度を越えるとして、日影規制を行う方向で建築主に対して指示していると聞いています。本来適切な日影規制が条例で定められておればこのような事態は未然に防げたはずであります。

政令指定都市の中でも大阪市は立ち遅れている 

提案理由の第2は、日影規制と言う点で多くの政令指定都市の中でも大阪市は立ち遅れていると言うことであります。

 全国数多くある政令指定都市においては今日、環境保全が重要視される流れの中で、日照権について今回わが党が提案している準工業地域、あるいは住居系地域の容積率300%地域でも東京、名古屋、神戸をはじめ大阪市同様市街地化しているほとんどの都市で独自の条例による日影規制が図られています。大阪市に規制がないため今度の平野区のケースのように名古屋の名鉄不動産や東京の藤和不動産が地元では建てられないようなマンションを規制のない大阪で建てるというような事態を招いているのであります。先に述べた紛争の頻発などを未然に防ぐため大阪市も他の政令指定都市並みの規制が必要であるという観点から本条例案を提案するものであります。

町づくりの方向からも規制を

 理由の第3は、大阪市の町づくりの方向からも規制が求められていると言うことであります。
大阪市の街づくり計画のメインスローガン「人間主体の町」というテーマから言っても日影規制が求められているのではないでしょうか。
太陽の光を享受すると言うのは生存の原点であります。
町の活性化、人口回復、のためという名目で規制緩和により土地を高度利用することにより、肝心の市民の居住環境が悪化したのでは本末転倒であります。町の発展と、そこに従来から住んでいる市民の住環境を守るという2つの面が統一されてこそ、住みやすい町と言えるのではないでしょうか。一部の人たちの不幸を前提とした幸せや利益の追求はエゴと言わなければなりません。
 「エゴが通って道理が引っ込む」ようなことが常習化すれば、大阪の町の荒廃のみならず市民の心もすさんでしまいます。事実、マンション建設により、この50年間、7000名の卒園児を送り出してきた幼稚園の園庭が、朝9時から2時間以上も日影になるとして改善を求める請願が採択されず、民間と民間の権利問題と見放された城東区の幼稚園の責任者の方は、委員会の模様を傍聴され「人間が信じられなくなりそうだ」嘆いておられました。
 教育者としてこのような言葉を語らせるような大阪市には明るい未来はないと私は思います。今後このような事態は避けなければなりません。
 今回提案の日影規制条例は他の政令指定都市と比べまだ緩やかな規制となっています。
 規制条例だけでなく紛争の事前防止のための条例も将来求められると思いますが、今回は最低限の市民の日照権を守る内容とさせていただきました。議員各位の賛同を期待し提案説明といたします。
稲森豊議員の日影規制条例提案文